第102章
一方、その頃フランク伯爵は海賊ゾンビモンスター達と共に大型帆船で再びの航海に挑んでいたのだった。
彼の目的はそう、勿論皆と同じく8つ目の魔石を手に入れるため……
すると同行する傍らの元自衛隊員ソルジャーが海図を見ながら王家へのルートについての謎解きを始めている。
「なぁフランク、僕の考えなんだが、この海図には何かしらの暗号が描かれているような気がしてならないんだよ。
ほら見てよ、今までに辿った島々の軌跡を線で繋いでみると……
ちょうどこの中心にアンタの居城、「ノイシュバンシュタイン城」があるんだ。
でも、それっておかしいだろ?
だって色んな島のある諸島を巡ってきた挙げ句に、振り出しに戻るなんて、ヘンテコだろう。
それならば、皆をこんなに長い旅路に連れ出すことの全てが無駄なこととなってしまうだろ?」
ソルジャーのその謎解きの話を聞いた途端、どうしたことかフランク伯爵の様子がおかしい。
直ぐ様ソルジャーがそれに気づく。
「フランク、一体どうしたんだい?顔色が真っ青だよ……」
フランクは上目遣いに椅子にもたれかかるや、テーブルのスコッチをグラスに注ぐと一気に喉に流し込む。
そして何やらおぞましい声で呟いた。
「あ、あ奴、よくもワシを騙しおって……
そうさ、最初からオカシイと思っていたのさ……
私がこちらの世界へMRIから召喚されてからというもの、私はあの仙人フォーの指図によってモンスター退治の計画を勧めてきたのだ。
始めは国民の反感を得ないように、と様々な慈善事業を開始するや、たちまち我が手腕によって軌道に乗った。
経営の効果が発揮されると、何やら欲をかいた仙人フォーが、どういうわけか、今度は王家への反逆を企て始めたのさ。
私はその計画に精一杯反対したのだが、彼の魔力により従わざるおえない状況となってしまったのだよ。
そう、あの「ノイシュバンシュタイン城」に幽閉されていたのは、フォーではなくて、私のほうなのだから!」
フランク伯爵はそういい終えると、再びグラスにスコッチを注いで飲み込んだ。
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フランク伯爵のあまりにも唐突な告白に驚きを隠せないソルジャー。
フランクの口から仙人フォーの真の意図を理解すると、今回のツアーの本当の目的が何であるかを考え始める。
彼は思わず仙人フォーへの怒りを込めた様子でフランクに向かって口走る。
「つまり、我々は今までの航海で、フォーの駒として使われてきたということですね。
それでは、我々が発見した8つ目の魔石がフォーの手に渡ることで、彼の野望が果たされるシナリオであり、僕らとのツアーもそのための一環だったということですね?」
尋ねられると、フランクは深くうなずきながら腹を割って話し始める。
「そうだよ、ソルジャー。その魔石をフォーに渡すことは、彼が世界を支配するための手段として利用されることに他ならないのさ。
しかしだ、私は断固として彼の計画を阻止しなければならない!
私たちは彼の思惑に乗るのではなく、自らの意思で行動するべきだ。
その為にこちらの世界に召喚された筈だろ、ソルジャー?」
彼の言葉に、ソルジャーは決意を込めて頷く。
「そうですね、フランク。僕らはフォーの思惑に流されることなく、自らの運命を切り開くのです。
そして、8つ目の魔石を手に入れることで、世界を守る戦いに挑むのです!」
彼らは固い握手を交わし、共に新たな冒険に身を投じる決意を固めたのであった。
ーーー☆☆ー
暫くするとソルジャーが不意に思い出したように他の7つの魔石の場所についてフランクに質問する。
しかしその問いかけに、フランクは深いため息をつきながら語り始めた。
「これまで集めた7つの魔石については、実はクレソン女史から私自身が手に入れ、これまでの友情の印ということもあって、つい先日仙人フォーに預けたばかりだったんだよーーーー
当初の彼の計画に協力するつもりであったが、その真の意図に大きなズレが生じてからは、彼の手に渡るのを阻止するために魔石を隠そうと画策したんだが、その矢先に逃げられるとは……
何とも気づくのが遅かったようだ。」
フランクは小さな苦い笑みを浮かべながら続ける。
「そのうちの一つは、古代の遺跡の奥深くに隠されていた。
もう一つは、大陸の彼方にある忘れ去られた森の中にある古代の神殿に保管されていた。
残りの5つは、海の底に沈んだ古代の都市の遺跡の中に封印されていたと海賊モンスター達から聞き出したんだ。」
彼の言葉に、ソルジャーは驚きを隠せない表情を浮かべながらも、フランクの計画に興味津々で耳を傾けた。
しかし今ではその7つの魔石を仙人フォーが持っていて、あと一つの魔石が彼の手に渡れば、その8つの魔石に呪文をかけると王家への道が開かれて、きっとこの世界はその主である仙人フォーの支配下に置かれてしまうだろうことは推測できる。
ーー☆☆ーー☆
ソルジャーはフランクの話を聞きながら、不穏な気配が漂っていることを感じ取った。
彼は深く考え込んだ末に、重要な事実を指摘する。
「つまり……すると、今ではその7つの魔石はすべて仙人フォーの手に渡っているということですよね?
だとすると、あと一つの魔石が彼の手に渡れば、その8つの魔石に呪文をかけることで王家への道が開かれ、仙人フォーの支配下にこの世界が置かれてしまう……ということでお間違え有りませんかっ?」
フランクは重い表情で頷き、深いため息をつく。
「そうだ、ソルジャー君。このままでは彼の野望が遂に実現してしまうのだ。
しかし、私たちは彼を止めなければならない。
何故ならば、我々は王家のためにも彼の強大で邪悪な魔力に屈することなく、我々の力で立ち上がらねばならないのだから!」
二人の目にはこれから巻き起こる決意と闘志が宿り、今こそまさに彼らは世界を救うための戦いに身を投じる覚悟を決めたのであったーーーー
ーーー☆☆☆☆ー
するとソルジャーが不意に、この話が余りにもフランク伯爵にとって都合のよい話なのではないか、と思いつく。
彼はかつては我々ドアーフ一行にとっての敵であり、いわば詐欺師的なフランク伯爵が、もしかしたら巧みな話術によって8つ目の魔石の在り処を知っておりながらも、ソレを独り占めするつもりで今までこの話を隠していたのではないだろうか、と勘ぐるのでしたーーーー
彼はもう一度深く考え込んだ末に、フランクに向かって思い切って疑問をぶつけることにしました。
「しかしフランク、もしかして君は8つ目の魔石の、ホントの在り処を知っているのではないかい?
そして、あわよくばそれを独り占めしようとして今まで黙っていたのではないか?」
フランクはギクッと目を大きく見開くや、驚いたような表情を浮かべ、何だか急に口ごもるように言葉を探したものの、最終的には頭を下げて深くため息をつく。
「ソルジャー、正直に言おう。
君の疑いは当たっている。
実は私は8つ目の魔石の在り処を知っている。
しかし、それを独り占めしようとしていたわけではない。
事実、私はその魔石がフォーの手に渡ることを阻止しようとしていたのだからね。」
彼の言葉に、ソルジャーは驚きと納得が入り混じった表情を浮かべ、その理由を尋ねた。
「なぜ、誰にも言わずにその魔石を隠して続けていたのですか?」
フランクは幾度となく深いため息をつきながら、重い表情で答えた。
「その魔石にはね、世界を滅ぼすに十分な力が秘められていると言われているからだ。
私はその力を誰かが誤用することを恐れている。
だからこそ、私は魔石を守り続けてきたのだ。」
ソルジャーは彼の言葉への疑義と恐怖に圧倒されつつ、仙人フォーとの戦いが迫る予感がしてならなかったーーーー
///to be continued!!!☆☆☆




