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夏の夜の目眩

作者: 曽我二十六

いないごっこ。いや、いないのか。

7人目? さあおいで。私のために。

いつ頃だったか。

そう言う声が、どこからか聞こえた気がしたのは。

小さすぎてよく覚えていない。

「お前はもういらない!」

そうすざまじい剣幕で、言われた。

些細なことで怒ることの、決してないような人に言われた。

その帰り道のこと。

日が陰り、夜になった。

「日食か?でも太陽が見えないぞ」

そう騒ぐ声が聞こえる。

時計を見てみるとまだ5時。

夏なのに早すぎる。確かにこれはおかしい。

そう考えていると、ひどく目眩がした。

なんで要らないと言われたんだったっけ。

次の瞬間、目の前が真っ暗になり、意識が途切れた。


***


世の中には、その人が最も恐れているものを具現する、

グレートテラーなる化け物があるらしい。

その化け物に食われると最後、

永遠に化かされつづけるという。

この話、誰から聞いたんだったっけ。


***


気付くとそこは、通っていた中学校。

昔の友達が、昔の服装でいる。

今はもう結婚したり、亡くなったりしている奴もいる。

ん?こいつ死んでたっけ。

よく分からないが、何もかにもが昔のまま。

タイムリープしたのだ。

久しぶりに話すのも良い。

そう思って話しかけたが、誰も返事してくれない。

タイムリープだから仕方ないのか。

でも物には触れる。扉や壁、黒板だって触れる。

自分の座席が分からない。

席替えなんて何度もあったし、取り敢えず座席表を。

もうすぐ休み時間が終わる。

早く自分の座席を見つけなくては。

いつまで経っても見つからない。

早く。早く。そう焦っても見つからない。

次の授業の先生の名はさっき聞いた。

学校でも一番怖いと噂されていた先生。

怖いといっても、怒る姿が怖いのではない。

日頃から、何か怖いのだ。

しかし。

間に合わなかった。先生がやって来た。

そうだ。空いている座席を捜せば。

そう思ったが。

どこにもない。座席どころか、名簿に私の名前がない。

このままでは誰か訊かれ、

次の瞬間にはどこかへ連れて行かれる。

これが非現実ならば、マズイ。

連れて行かれる。永遠の恐怖の世界へと。

逃げなくては。

これこそがグレートテラーだ。

そう思って逃げようとしたが、体が動かない。


先生がやって来たが、こちらには気付いていない。

いや、見えないのか?

そう思っていると、先生がこちらを見た。

次の瞬間、視界がゆがみ、目眩がした。


***


すると次は、玄関にいる。

カバンを持って、玄関に立ちつくしている。

ここは私の家?

すると中から人がやって来て、

何故扉が開いているのかしら?

そう言って扉を閉めようとする。

慌てて中に入ろうとするも、カバンを持ち替えた左手が挟まった。

そうか、ここでも見えないのか。

カバンが挟まって扉が閉められない。

仕方なく、私はカバンから手を離した。

中ではパーティでもやっているのか。

しかし、誰一人見覚えが無い。

もしかすると、義父母?

そしてこの人は、私の夫婦となる人だろうか。

私、結婚したのか。

じゃあここにいる子供は私の?

眺めていると義母が一言。

「どうして子供が生まれたんだろうねぇ」

義父が更に付け加える。

「不思議だねぇ」

見えないだけじゃなくて、存在が消えているのか。

急いで玄関から出ようとすると、靴が無い。

せめて財布くらいは。

そう思って玄関から出てみると、カバンも無い。

すると金属バットを持ったチンピラが、近付いてきた。

ここは私有地の筈なのに、何故。

気付いた時には既に遅かった。

紅い闇が視界を包む。

打たれたのが原因か、目眩がする。


***


どうやら今度は家の中。

でも隣に座っている人はさっきの人だ。

どうやら結婚の挨拶だろう。

今度の私は存在するらしい。

そんなことを思っていると、

話し声が荒くなる。

親から猛反対を受けているらしい。

それでも結婚したのか。

暫く経っても戻ってこない。

叫んだ後に出て行った筈だが、

戻ってこない。

そこでまだ結婚していないから婚約者と言うべきか、

その人が出て行った。


暫く待ったが、帰ってこない。

2人共、どこに居るの?早く出てきてー

そう言いながら、遂に私1人を置いていく。

突然その声が途切れ、引きずるような音と共に、

ウィーンという音が聞こえた。

印刷音か、何かの音だ。

そして何かを落としたかのような物音がして、

こちらへ歩いてくる。

どこへ隠れればよいか。

咄嗟に隠れた先は机の下。

部屋の中に入ってくる。足の数を数えると、

どんどん増えている。

取り囲まれたのか。

足の向きは全てこちら向きだ。

振り向けないため何ともいえないが、

首が動く限り見渡すと、一面足ばかりだ。

もし机の下を覗かれでもしたら、

その時は一巻の終わりだ。

また物音がした。

すると今度は一斉に喋り始めた。

最初は何を言っているか分からなかった。

しかし何回も、

何十回も呪文のような棒読みを聞くにつれ、

分かってきた。

「お前はもういらない」

あの時の台詞が、何故。

勝手に口が動いて、声に出る。

止めようとしたが止まらなかった。

すると声は止み、机が動いた。

持ち上げられる。

その瞬間、また目眩がした。


***


どうやってここから逃げ出せば。

すべてすべて、グレートテラーの所為に違いない。

せめて、私に話した人に会えれば、

会うことができれば。

この恐怖からの脱出方法が分かるかもしれない。

そう思っていると、

言われた事を思い出した。

「代償」

「既定」

「過去」

何故か、詳しく思い出せない。

何度か恐怖を経験するうちに、段々と聞き取れるようになる。

「代償として…」

「既定された…」

「過去から…」

更に全部が聞こえるようになるまで、何度も恐怖を体験した。

「代償として□□にされた」

「既定されたので□□ミサキに引き込まれた」

「過去から□□せよ」

もう嫌だ。もう嫌だ。

消えたっていい。

そう思った時、全てが初めて聞き取れた。

「代償として生贄にされた」

「既定されたので七人ミサキに引き込まれた」

「過去から選択せよ」

どうやらここでは、誰か1人を引き込むと、

1人が解放されるという仕組みらしい。

末尾にあたる私は、

あと7人引き込まれた後に解放されるらしい。

誰か1人を犠牲にすると、

誰かが解放される。

しかしどうすれば生贄にできるのか。

答えは自ずから分かった。

グレートテラーの存在を伝える。

そうすると、過去でその人物は生贄に既定される。

8人目に引き込まれたその人は、1人目の代償となる。

9人目に引き込まれた人は、2人目の代償となる。

10人目に引き込まれた人は、3人目の代償となる。

11人目に引き込まれた人は、4人目の代償となる。

12人目に引き込まれた人は、5人目の代償となる。

13人目に引き込まれた人は、6人目の代償となる。

そうして14人目に引き込まれた人が、

やっと私の代償となる。

でも。

そんなの埒が明かない。

ではどうすべきか。

その事実をより広く伝えればよいだけ。

どう知らしめようか。

そうだ。過去の行動を変えられるのなら。

投稿しよう。

こうして、私は過去から選択した。

あとは、既定された読者が、

引き込まれるのを待つだけだ。

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 ☆☆基本毎日投稿の3作品☆☆

 ①異世界革命戦記~もしも異世界が、私の作ったものならば~

 ②亡国日本再生記~田舎から始める解放戦線~

 ③世界時空恋愛記~彼女を捜して三千年~(18日20:00より投稿予定)

尚、作者は今年度多忙につき

9月中旬から3月頃は投稿しませんが、

その後は復帰しますので、

ブックマークやユーザー登録は

残して下さると嬉しいです。


この話はあらすじにもある通り、

実際に地元に怪談としてある話を、

少し現代的に翻案したものです。

元々は7人ミサキという話は (私の地域では)、

「長宗我部家の内部対立によって

 不遇の死を遂げた7人の家臣が

 成仏できずに地縛霊となり、

 成仏のために身代わりとして他の人を引き寄せたが、

 身代わりにされた7人は、

 また別の7人を引き寄せないと成仏できないので、

 そこは以後『そういう』場所になった」

と聞きます。


今回の話はその「7人ミサキ」の内側を描き、

その中の主人公が7人も待てないといって、

まとめて読者を

引き寄せてしまうという設定で描いてみました。


また本作では「成仏」を

現代的に「存在消失」と置き換えました。

なので主人公を引き寄せた人は存在しない。

そして主人公も存在しない。

いや、しなくなる、と言った方が正しいか。


だから、グレートテラーというのは

「存在しなくなった」人々の集合体。

当初はこの題名を、

存在しなくなった人"Fake"と

その集合体"Great Terrar"を足して、

 "Fake - Great Terrar -"

としようとしましたが、

繋げてみるとFGOみたいで、

三流パクリ感があまりにも酷いので、

この題に致しました。


勿論の事、本作はフィクションです・

7人ミサキの方は知りませんが。

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