解禁
読んで戴けると嬉しいです。
ボクはこの高校に通う為、親元を離れてアパートで一人暮らしをしていた。
学校から真っ直ぐ帰ったボクはなんだか疲れ切ってしまい机の椅子に座り込んでしまった。
このまま避け続ける訳には行かない。
避け続けていたら、どっちにしろ嫌われてしまうに決まってる。
想い出は綺麗な想い出のままの方が良かったって事なんだろうか..........。
ボクは頭を抱えて、机に伏した。
チャイムがなった。
シカトしようかと思ったけど光熱関係の業者さんだったら困るなと思って、思い切るように勢いを付けて立ち上がった。
ドアを開けるとそこには悠君が満面の笑みを湛えて立っていた。
「奏朶は悪い子だよね
オレに探偵みたいな事させてさ」
驚いてるボクに悠君は言った。
「あれ、気付かなかった?
ずっと付けて来たの
オレ、探偵の素質あるかも」
悠君は笑った。
「悠君、どうして.........」
「奏朶が連れないからだよ
昔の恋人を玄関払いしないでよ」
ボクは悠君の雰囲気に押されて、身体を横にして悠君を部屋に入れた。
「かつての恋人にお茶くらいご馳走してよね」
「恋人って...........」
戸惑い捲ってるボクに構わず悠君は靴を脱ぎながら部屋を見回して言った。
「へえ、いい部屋だね
一人暮らしかあ.............
オレ、ずっとじいちゃんばあちゃんと一緒だから、ちょっと羨ましいかも」
ボクは取り敢えずキッチンでケトルに水を入れ始めた。
ボクの背中に悠君は言った。
「お茶はいいから、聞かせてよ
昨日突然逃げ出したのはどうして? 」
直球過ぎるよ、悠君。
ボクは背を向けたまま項垂れた。
どう答えたら悠君に嫌われないで済むんだろう。
なんて答えていいのか言葉が見付からない。
「成長したオレは嫌いになった? 」
「そんな......! 」
ボクはその言葉に驚いて、反射的に振り返った。
「そんな事ある訳無いよ! 」
悠君は辛そうな顔をしていた。
ボクが漠迦だから悠君を傷付けてしまったんだ。
どうしたらいいんだろう.........。
大好きな気持ちは変わらないのに。
何を言えばいいのか解らなくて、ボクの頭は完全にキャパオーバーしていた。
「そんな事............」
やっぱり悠君を真っ直ぐ見れなくてボクは顔を背けた。
「派手に男と寝てるの聞いたの?
白状するよ、噂は本当だって
だから、オレのこと嫌いになったの? 」
ボクは咄嗟に否定した。
「嫌いになんてなってない! 」
「じゃあ、どうして? 」
悠君は髪を掻き上げて、一呼吸おいて気持ちを落ち着けてから言った。
「ずっと何の連絡もしなかったから?
ずっと奏朶に逢いたかった
だけど母さんに強く言われてた
奏朶が好きなら奏朶の為に逢うなって、連絡もしちゃダメだって、奏朶の為にならないから忘れろって......
どうしてなのか解らなかったけど、あんまり母さんが真剣に言うから、何か大人にしか解らない事情があるんだって思った」
悠君はボクから顔を背けた。
ボクも辛くなって、何か言わなきゃって思うのに言葉が出て来ない。
「悠君が悪い訳じゃなくて.......」
そう言うのがやっとだった。
悠君が必死なのが痛いほど伝わって、ボクも必死で言葉を探した。
でも、どうしてもあの事が頭をもたげて、言葉が見付からない。
悠君はすがるような目をしてボクを見詰め言った。
「奏朶と離れてから淋しくて苦しくて、それを何かで埋めないではいられなかった
だから、いつの間にか男タラシなんて言われるようになって、昨日奏朶に逢うまで忘れてしまってた
どうして男タラシになったのかさえ」
悠君は哀しそうに笑った。
「でも、ずっと奏朶の身代わりを求めてたんだ
寝てきた男たちは、思い返したらみんな何処か奏朶に似てた
面影とか、仕草とか、話し方とか.........
いつも、奏朶を知らず知らずに求めてた.....」
悠君の目から涙が溢れた。
「悠君...............」
悠君はこんなにも必死に告白してくれてるのに、ボクは何をしているんだろう?
答えなきゃ...........。
嫌われたくないからって、黙っているボクはずるい。
そんな価値なんてボクには無いよ、だって......。
ボクも泣きそうになりながら言葉を必死に紡いだ。
「違うんだ、悠君.........
悠君が悪いんじゃない..........」
悠君は真剣な顔をして、ボクの言葉を待ってくれた。
「悪いのはボクなんだ.......
昨日逃げ出して、悠君を避けたのは.........」
ボクは一呼吸おいて、思い切って言った。
「ボク、欲情しちゃったんだ!! 」
「は? 」
悠君にはよほど想定外の事だったみたいで、ポカンとしていた。
「昨日、キスした時に.........」
ボクは悠君の次の表情を見るのが怖くて顔を背けて言った。
「謝って済む事じゃないけど、ごめんなさい.......
ボクは、綺麗な想い出を穢しちゃったんだ.......」
ボクは俯いて動く事ができないまま、目を閉じて悠君の罵声が飛んで来るのを待った。
でも、悠君は静かに言った。
「欲情したから、逃げ出したの? 」
ボクは閉じた目を一層硬くして頷いた。
だけど悠君は近付いて来て、優しくボクの頬に手を当て言った。
「有り難うな
オレとの想い出をそんなに大事にしてくれて」
悠君の声が顔のすぐ傍で聞こえた。
「嬉しいよ、欲情してくれて........」
「え? 」
ボクは思わず目を開け、悠君を見た。
悠君は優しい目で少し微笑んでいた。
「色んな奴と寝てきたけど、あのキスほど満たされた事はなかった
思い出したんだ、子供の頃奏朶とキスしてると、凄く満たされてたこと」
悠君はボクの顔を覗き込んだ。
「良かった.........
男タラシなの知って嫌ったんじゃなくて.........」
ボクは恐る恐る訊いた。
「欲情したボクを嫌ったり.........」
言い終わる前に悠君は突っ込んだ。
「する訳ないじゃん、オレもしっかりしてたんだから」
「そ・そうなんだ..........」
ボクは呆気にとられて何だか脱力してしまった。
なんだか凄く重い気持ちが一気に空中に舞い上がるくらい軽くなった気がした。
真剣に悩んでたボク、ただの漠迦じゃん。
悠君はボクの首に腕を巻き付けて来た。
「男タラシの汚名返上だね
目の前に本当に欲しい人が現れたんだから」
「悠君..........」
「オレ達、きっとあの頃からずっと......」
「愛し合ってたんだ」
悠君とボクは、とても自然に口唇を重ね合った。
熱く舌を絡ませ合って身体が火照ってくるくらい、互いの身体を撫で合った。
口唇を離すと悠君は言った。
「さあ、正直に白状しろよ
この後、オレをどうしたい? 」
ボクは素直に言った。
「あの時みたいに、裸になって抱き合いたい
そして全身にキスしたい」
ボクたちは時々口付けしたり互いの身体に愛撫したりしながら服を脱がせ合った。
ベッドに二人して横たわると、せきを切ったように触れられる総てに口付けし合った。
悠君の胸が呼吸のたびに波打って、少し汗ばんだ肌が色付いて、そんな悠君が昔観たDVDの女優さんよりも綺麗で、ボクは悠君に触れながら、凄く満ち足りて、とても倖せな気持ちが溢れそうだった。
「次はどうしたい? 」
悠君が凄く甘えた声で言った。
「口でいかせたい
それから、一つになりたい...........」
新しい想い出を作ろう。
新しい倖せを作ろう。
満ち足りた時を大切に求め合って。
そう、だってもう禁じる者は誰も居ない...........。
fin
読んで戴き有り難うございました。
昨日は沢山の方々にアクセス戴きまして、なんと通常の二倍。
嬉しい限りでございます。( ̄▽ ̄)ゞ
全くひねりの無いストーリーですが、お気軽に楽しんで戴けたら倖せです。
新作、今考え中です。
ワクチン摂取が始まりましたね。
皆様、お気をつけてまたお逢いできたら倖せです。




