第25話 ラスボス戦! ドン・ゲリラの恐るべき精神攻撃!!!
「よく頑張った、と褒めてやるべきだろうな」
シャーク・テロリスト達の指導者、ドン・ゲリラは言う。
「単身で我々とここまで渡り合い、マンティスをも倒し、私のもとに辿り着くとは」
「あとはあんたさえ倒せば……残りはザコだけだ」
手裏剣は手元にない。サブマシンガンを携えた10体のサメ人間とドン・ゲリラを同時に相手取って、果たして勝てるだろうか。甲賀忍之介に打つ手はあるのか?
「私を倒す、か。そこのところがよく分からないのだがね。何故、君は我々シャーク・テロリストを目の敵にするのかな? 誰かに始末するよう、頼まれでもしたのかな?」
「何を言ってるんだ! お前たちがこの学院をいきなり襲って生徒を殺し始めたんだろう! 僕は正当防衛として戦っているだけだ!」
「我々シャーク・テロリストはこの世界に新たに生まれた種族。人間と同等以上の知性を持つ、掛け替えのない同じ地球上で暮らす仲間だよ。だが人間が我々の存在を知れば必ずや根絶やしにしようとするだろう。殺られる前に殺る。生存権を主張しようとしているだけだよ私はね」
「こんな、問答無用の残酷なやり方でか!?」
「かつて“新大陸”を発見した人間達も同じようにして植民を行ってきたはずだが? 自分達だけ特別扱いしてはいけない。人間とシャーク・テロリスト、相容れぬならどちらかが滅び去るしか道はないのだ」
「くっ……」
それはあまりにも一方的な理屈。しかし真理でもある。弱肉強食。自然界の掟についてドン・ゲリラは語っているに過ぎない。忍之介にも、それくらいはわかる。
「ゆえに、人間達には我々の脅威を知り早急に絶望してもらわなければ困るのだ。どちらが上かをはっきりさせることで、共存の道も模索できるようになる」
「それまでに一体どれだけの人々を殺すつもりだ!?」
「まず、この国の政府が我々に屈するまで国民を殺し続ける。何人死ぬかは政府の人間の裁量次第だ。上が無能であればたくさんの死体が積み上がることだろう」
なんという責任転嫁! 悪魔的狡猾さで政府に責任をなすりつけるドン・ゲリラ! 邪悪な知性!
「それに、だ。我々シャーク・テロリストは人間とは違う。人間の持つ道徳規範も倫理観も我々には適用されない。法律ももちろんだ。誰が、我々を裁くことが出来ようか!?」
「誰が、だと!?」
「そうだ。我々を一方的に断罪しようとする人間達は“正義”なのか? その正義とは単なるエゴではないのか? 地上で最も優れた生物は自分達であるという思い上がりに起因する、実に利己的かつ排他的な“正義”! であれば我々の行動も間違いなくもう一方の“正義”だ! 我々は生きるのだ、この星で! 誰にもその存在を否定させはしない!!!」
仰々しく腕を振るい、渋みのある声で演説するドン・ゲリラ。その背後に控える一般兵達は感動に打ち震え、涙を流し拍手していた!
聴衆を虜にする圧倒的カリスマを、この指導者は持ち合わせているのだ!
「お前もだ、忍者よ! これまで散々、我が同志達を虐殺してくれたな? 貴様の行為は所詮、我々と同じではないか? 貴様が殺したシャーク・テロリスト達にも愛する家族や友人、そして輝かしい未来があったのだ! それを踏みにじって……酷い事をしたとは思わんのか!?」
「そうだ!」
「そうだ!」
「謝罪しろ!」
「土下座!」
ドン・ゲリラの言葉に合わせ一般兵もお気持ちを表明する!
忍之介がいつの間にか極悪人扱いされている!?
恐るべき、ドン・ゲリラの話術! 何となくこのままでは忍者の方が断罪されそうな流れ!
だがっ!
「いや、全然……」
忍之介は、困ったような顔をしながら平然と言った!
「貴様っ! 人間の心が無いのか!?」
ドン・ゲリラが怒る!
「どうやらあんたは勘違いしているようだね」
「……勘違い、だとっ?」
「正義だ悪だなんていう議論に、忍者は参加しない。忍者は虚像。実在しない者。歴史の陰に蠢く者達だ。そこに思想は無く、あるのは結果だけ。じいちゃんがいつも言ってたよ、あんたみたいな面倒くさい問答を仕掛けてくる奴など無視していいってね。善悪なんていうのは後の人々が決めればいいこと。今は……忍者としてやるべきことをやるだけだ!」
そう、わかりきったこと! 甲賀忍之介は忍者なのだ! 為政者ではない!
「禅問答は終了だ」
忍之介はゆらりと歩き出す。その殺気に反応してサメ人間達がサブマシンガンを構えようとする。それを、ドン・ゲリラは腕で制した。
「待て、撃つんじゃあない同胞達よ。まだ“話し合い”は終わっていない」
「いや、これ以上の議論は無意味だよ」
「そう言わず、落ち着きたまえ忍者の少年」
「……?」
「君のことはよくわかった。その考えを尊重しよう。善悪は後の人間が決める、ということだね? ではここで、君が私の側に寝返ったとしても何ら問題は無いわけだろう?」
「興味がないね」
「絶対的な権力と、無尽蔵の富が手に入るぞ? 新世界の王として私と共に君臨したくはないか?」
「僕は、質素な暮らしで十分満足だよ」
「ついでに女も抱き放題だぞ?」
「……くっ!」
「女も抱き放題、だぞ?」
「……ぐうっ!」
「女も抱き放題ッ! だぞ!?」
「そ、それ以上言うな!!!」
恐るべきドン・ゲリラの交渉術! 忍之介は苦痛に顔を歪め、今にも敗北しそうになっている!
やはりシャーク・テロリストの王は只者ではなかった!!!
(じいちゃん……こんな時、どうしたらいいんだ……!)
心の中で、忍之介は祖父である龍仁斎に問いかける!
もわもわもわ~ん!
すると脳内に白い煙と共に龍仁斎のビジョンが登場し、忍之介を優しく見つめてきたではないか!
(忍之介よ、嫌がる女を無理やり抱くのは犯罪じゃ。愛をもって抱きなさい)
ありがたいお言葉!
「っ! そうか! ここでサメと手を組んだとしても、無理やり抱き放題じゃダメなんだ! 危うく犯罪者になるところだった! じいちゃん、僕は目が覚めたよ! おのれドン・ゲリラ! 許さんぞ!!!」
「まさか本気でこの私に敵対するつもりなのか、忍者!」
「クドいぞ! 僕は忍者! ただ眼前の敵を叩くのみ!!!」
「ふっ……だったらもう死ぬしかないなぁ!? クソガキがあっ!!!」
忍之介とドン・ゲリラはほぼ同時に駆け出した!
一般兵達は銃口を忍之介に向けようとするも、王の背中に被弾する可能性を恐れて撃てない!
あっという間に距離が詰まり、二人は打撃の間合いへ!
忍者の鋭い拳の連打がドン・ゲリラに襲い掛かる! しかしドン・ゲリラはその全てを回避、そして捌き、反撃を繰り出してくる!
忍之介とて尋常の存在ではない! ドン・ゲリラの反撃を寸前で避け、高速の攻撃を畳みかける!
めまぐるしい攻防は一般兵達には目で追えない速度となり、まるで約束組手でもしているかのように軽快な打撃音と擦過音のシンフォニーを奏でた!
忍者の右ストレート! ドン・ゲリラは容易に回避!
忍之介の技のキレが落ちている! 腕の引きが遅い!
素早く距離を詰め、左足で強く地を踏むドン・ゲリラ!
震脚! からの八極拳必殺の肘打ち、裡門頂肘が忍者のボディに突き刺さり衝撃でその肉体を10メートル後方へ吹っ飛ばした!
「ぐわーっ!!!」
ヒットする直前で自ら後方へ飛び衝撃を分散させたものの、それでも超ヘビー級のダメージが忍者の全身を襲う!
吹っ飛んで地面を滑り、ふらつきながら起き上がる。視界が揺れていた。
「甘いな。こんなものか忍者の体術というのは」
ドン・ゲリラは余裕の表情。突き出した肘を戻し、服の埃を払う。そして胸ポケットのシガーケースに手を伸ばそうとした時、
「火気厳禁、だよ」
忍之介はそう言ってニヤリと笑った。
「ドン・ゲリラ様! 背中にっ!」
悲痛な部下の叫びと、ドン・ゲリラが“それ”に気付くのとがほぼ同時だった!
彼の背中に、茶色い粘土のようなものに埋め込まれた長方形の物体あり!
「プラスチック爆弾だとっ!?」
それは忍之介が学院内で倒した一般兵から奪取していた小型爆弾だった!
裡門頂肘で吹っ飛ばされる間際、忍之介はドン・ゲリラの背中にこっそりC-4を設置していたのである!
手裏剣が無ければサブマシンガンを構えた兵士達10人を相手取るのは厳しい。爆弾によって一網打尽にするタイミングを、忍者は虎視眈々と狙っていたのだった!
「おのれ……忍者あぁ!!!」
ドッゴオオオオオォォンンンン!!!
ドン・ゲリラの絶叫を打ち消すほどの大音声!
「「「うぎゃーーーーっ!!!!」」」
そして爆発に巻き込まれて骨身も残さず四散するテロリスト達!
校庭に土煙が舞い上がり、バラバラになった肉体の一部が散らばった!
「やったか!?」
これはどう考えても忍者の勝利に違いない!
勝ちほぼ確の次回へ続く!




