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第20話 シャーク・マンティスの脅威! カマキリは二度死ぬ!!!

 シャーク・テロリスト四天王。

 サイの能力のライノ・シャーク。

 カメレオンの能力のカメレオン・シャーク。

 イタコの能力のイタコ・シャーク。

 そしてカマキリの能力のシャーク・マンティス。


 読者諸氏、このネーミングに違和感を覚えないだろうか。

 何故、マンティスだけ命名法則が異なるのか。

 何故、“マンティス・シャーク”と呼称されていないのか。


 実はこれには深い理由があるのだ。


 オゾンホールを抜けてサメクラス諸島海域へ降り注いだ宇宙線はサメ達の遺伝子を変容させ、急速な深化を促した。と同時に遺伝子を不安定にさせ他の種の遺伝子を無理矢理組み込むことを可能とした。


 マンティスはカマキリの遺伝子を組み込んだサメ人間。が、どうしたことか彼だけは他の四天王よりも遥かに“カマキリの形質”の方が“サメの形質”よりも色濃く反映されることになった。


 ハイブリッド化した際の肉体の変化には未知数の部分が多い。マンティスは四天王で唯一、後天的に組み込んだ遺伝子の方が優位だったパターンなのである。

 つまり感覚的には、カマキリの遺伝子を組み込んだサメというより、サメの遺伝子を組み込んだカマキリというニュアンスになる。


 これこそ、彼がシャーク・マンティスと呼ばれる所以(ゆえん)なのだ!



 静寂が、その場を包み込んでいた。


 甲賀忍之介の必殺の踵落としは完璧に決まり、シャーク・マンティスのサメの頭部は押し潰され首にめり込んでいた。あの様子では頭蓋骨はもとより頸椎すら酷く損傷しているであろう。


 ピクリ、とマンティスの鎌が持ち上がる。


「最後の悪あがき、か」


 忍者はこの期に及んでも油断しない。残心。心を途切れさせないこと。戦いの場に身を置く者は、たとえ相手を倒したと思っても気を緩めないことが肝要。その心意気を全身で表す動作こそが残心。

 低い位置で右の拳を溜め、左手を開いて浅く腰を落とす。典型的な空手の残心。


 ピクリ。

 ピクリ。


 マンティスが、鎌の側面で自身の頭部を押さえ、グググと引っ張り上げる。


「……何っ!?」


「忍者の……小僧よ」


 潰された声帯から発せられる声は酷く聞き取りづらかった。しかし確かにその声には忍之介に対する敵意と殺意と、煮え滾るマグマの如き闘志が滲んでいた。


 首を無理やり伸ばし、グラつく頭部を元の位置へ戻したシャーク・マンティスはグロテスクに笑う。


「あの一撃を喰らって、生きているのか!?」


 いくらシャーク・テロリストとはいえ、普通は助からない。四天王最初の相手であるライノ・シャーク戦の時もそうだったが、サメは頸椎を損傷させれば人間同様に倒すことが出来たのだ。出来たはず、だったのだ。


「俺はシャーク・マンティス……カマキリはたとえ頭部を失っても死なん!」


 そう、ここで読者諸氏に恐ろしい事実を突き付けなくてはならない!

 カマキリは全身の節に個々の神経が存在している為、頭部を失った場合でも動くことが可能なのだ!


 カマキリの交尾では、オスがメスに食べられてしまうことが多々ある。この際、オスはメスと交わりながら頭部から食べられてしまうわけだが、そうなったとしても性行為は維持できるようになっている。

 興味深いことに、一部のカマキリではメスに頭部を食べられた刺激で射精するものまで存在する。更にオスを捕食した場合の方がそうでない場合と比べ、より多くの子供が生まれるということが研究によってわかっている。


 かようにカマキリのオスというのは我々人間からすれば不憫な存在に思われるかもしれない。しかしこれも自然界の生存戦略の一環である。


 ちなみに頭部を失うと個々の神経の制御や調節を担う脳が無くなるので衝動行為が高まるということらしい。衝動行為、すなわち普通のカマキリであれば性行為ということになろうがこのシャーク・マンティスにおいては、脳を損傷したことで全身の神経は極度の興奮状態へと陥り、その闘争心が暴走を始める! 殺戮衝動の、オーバーフローである!


「必ず殺す! 絶対に貴様を殺す!」


 敵の纏う気配が変化したことを鋭く察知した忍之介の全身に緊張が走る!

 マンティスの危険度の増大を肌で感じる!


「眠っている虎を起こしたって感じかな……」


 瞬間、斬撃が放たれる!

 素早い踏み込みからフェイントも何もない左右の鎌の死神めいた振り下ろし! 殺気の塊が忍之介の命を狩るべくして迫る!


 回避。間を置かずローキックでマンティスの膝を狙う!


 ガッ!


「っ!」


 思わず、忍者はその痛みに呻く!


 マンティスも右膝が持ち上がり、きっちりとローキックを受ける体勢になっていたのである!

 このサメ、蹴り技を知っている!


「シャアッ!」


 マンティスの左脚が跳ね上がった!

 その膝の軌道からしてミドルキックか! 忍之介の脇腹に突き刺し肋骨を蹴り折るつもりだろう!


 右腕を立ててピタリと脇に添え、ミドルを受けようとする忍之介!


 寸前で、折りたたまれた左脚は扇のように広がりより高いポジションを、忍之介の側頭部を狙うハイキックへと変貌した!


 ドガアッ!


 反応はわずかに遅れる!

 忍者の頭部をマンティスの蹴りが叩く!


「ぐわーっ!」


 吹っ飛んで机や椅子を巻き込んで転がる忍之介!

 ヒットの直前に上体をズラしてダメージを分散させたが、それでもなおこの威力!


「死ね、忍者!!!」


 跳躍、そして鎌の振り下ろし!

 転がって避ける忍之介の今し方までいた位置に巨大なクレーターが生じる!


「くうっ! 強い!」


 忍之介は窓ガラスに飛び込んで全身でガラスを砕きながら廊下へと逃れる!

 マンティスは壁を切り裂いて粉々にし、忍者を追跡! 絶対に逃がさぬという意志を込めて肩をいからせて歩いてくる!


「斬撃だけじゃないな……あの蹴りは」


 忍之介には見当がついていた。高いレベルの打撃屋(ストライカー)。しかもミドルとハイを、あるいはローすらも自在にスイッチできる独特の蹴りの軌跡。立ち技最強と名高い、あの格闘技術に違いない。


 両手の鎌と足技。二足歩行の生物共通の弱点である頭部や頸部への攻撃が効かないとなると、その対処は極めて厄介だ。一体、マンティスが今の状態でどれだけ動けてどれだけ思考能力を維持しているのか、未知数。

 強烈な殺気の暴風を受けながら、忍之介は考える。より効果的で、安全な倒し方を。肉を切らせて骨を断つような方法ならいくらかある。が、この敵を倒して全てが済むわけではない今の状況でそのような手段は講じれない。


 そうこうしているうちに、距離は詰まる。互いのリーチが重なる。やや、腕の長さの分だけマンティスが上。鎌が、動く!


 忍之介は上体を沈め、頭上にてやり過ごす! そのまま前方へ倒れ込むように低い位置で駆け寄ろうとした時、目の前に出現したのはマンティスの足! 前蹴り!


 前蹴りは基本的には相手との距離を突き放す為の蹴りだ。場合によっては鳩尾(みぞおち)深く入れて悶絶させることも可能だがこちらはレアケース。

 今回、マンティスの蹴りは低い位置にあった忍者の頭部を迎え撃つような形になった。真っ直ぐに、体の正面に飛んでくるがゆえにかわすのは困難な蹴り。


 両腕をクロスさせてガード! 衝撃はその上から襲い来る!

 前進を阻まれ、後退を余儀なくされる忍之介!


「……やはり、“それ”か」


 そして彼は見た。シャーク・マンティスの“構え”を!


 砕かれへし曲がった頭部を笑みの形に歪め、マンティスは脇を開いて顔と同じ高さで両の鎌を構える。そして脚! 左脚はリズミカルに爪先を地面に付けたり浮かせたりして「いつでも蹴れるぞ」という圧力をかけ、右脚はしっかりと地に付け重心を取る。


 見紛うことなき、打撃の構え!

 そして間違いなくそれは、立ち技最強のあの武術!


「ムエタイ、か……」


「これを見せるつもりは無かったが、お前の実力に敬意を表し……使わせてもらおう」


 シャーク・マンティスは言った。


 堂に入った構え方。素人が聞き齧った程度では決して無い。“らしい”構え。


「人間の世界には、蟷螂拳(とうろうけん)なる拳法が存在するらしいな。カマキリの動きを模したという。だが、所詮は不完全な模造品よ。真なるカマキリの戦い方を……いわば“真の蟷螂拳”を、今ここで見せてやろう!」


 高らかに宣言するシャーク・マンティス!

 真の蟷螂拳とは一体何か!?

 まだ誰も見たことのない、カマキリ拳法の凄絶さが明かされる!

 次回へ続く!

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― 新着の感想 ―
[一言] カマキリの交尾って、そうだったんですか。 ヘェ〜。勉強になります。 本当ですよね?ね?
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