第15話 象形拳の進化は止まらない! 天才軍師の策をも超える輝き!!!
シャーク・テロリスト四天王第三の刺客、イタコ・シャークの恐るべき“口寄せ術”によって現世に降臨した古代中国の天才軍師、その名は諸葛亮孔明!
その羽扇より放たれたレーザー光線が甲賀忍之介の胴体を貫き風穴を開けた!
「計算通りですよ。あなたがそこで躓くことはお見通しでした」
体育館のフローリングのささくれを注意深い洞察力で発見し、その場所へ忍者を誘導した諸葛亮。あまりにも深謀! まさしく万物を見通す神通力の如き観察眼!
「そしてさようなら、忍者よ」
羽扇で口元を隠し優雅に笑う天才軍師! 勝ち誇ったその表情が綻ぶ!
「……と、ここまでは僕の計算通りだね」
突如! 諸葛亮の頭上より聞こえてきたのは忍之介の声!
「何ぃ!?」
驚愕し見上げる諸葛亮!
そこに、高い跳躍から真っ直ぐ降下を決める忍者の姿あり!
「何故お前が生きている!?」
「変わり身の術だ!」
急降下キックを見舞うも、寸前で諸葛亮は後方へステップバックして回避! しかしあまりに突然の急襲に対応が間に合わない!
着地から素早く距離を潰して前蹴りを放つ忍之介! これが諸葛亮の腹にヒット!
「ゴボーッ!!!」
叫び声をあげて吹っ飛ぶ天才軍師! 壁でバウンドして無様に膝をつく!
「ぬうう! 変わり身だと!?」
見れば、先ほどレーザーが胴体を貫通し倒れ伏したはずの忍者の死体はいつの間にか、単なる丸太にすり替わっていた!
いかにも伝統的、古色然とした忍術! いや、ここは“忍法”と呼ぶべきか!
「予知された未来なんか、何度だって塗り替えてやるさ!」
手裏剣乱舞! 全方位から65535発の手裏剣が諸葛亮に迫る! プログラマー泣かせ! これぞ飽和攻撃!
「この天才軍師を舐めるなよ、チンカス野郎ぉぉぉ!!!!」
窮地に追い込まれて口調がめちゃくちゃ粗野になる軍師!
お前、そんなキャラだったのか!?
「死にさらせ!!!」
羽扇を振るい、無数のレーザーを照射! 手裏剣が全て蒸発して消滅!
「“点”での攻撃が効かないのなら“面”で制圧!」
無数のレーザーが忍之介に向かって飛ぶ!
到底かわせない! 変わり身をしたところで、避けきれない!
が、忍者は避けない!
「冷静さを欠いた時点で勝敗は決した! 見せてやるよ、忍者の秘術! 象形拳……!」
忍之介は踵を返し、諸葛亮に背を向けた! 敵前逃亡か!? いや、違う!
こ、これは……!?
忍者の尻が……ケツが光っている!?
「我流象形拳のひとつ、名付けて蛍拳!」
説明しよう!
ホタルといえば誰もが良く知る夏の風物詩、清流の流れる田舎に行くと見られる、尾部に発光器官を持つ虫である。
夜、多くのホタルが集まり淡く美しい光の明滅をさせながら舞う光景はたいへんに風情があり、“蛍狩り”は恰好のデートプランの一つであると言えよう。
しかしながらホタルの成虫の寿命は極めて短く一週間から二週間程度。セミ並みである。この短期間のうちに交尾するパートナーを見つけ、次世代に望みを託し散ってゆくのだ。
ホタルの光とはまさに一瞬の命の輝き。尊く、儚く、だからこそ見る者の胸を打つのである! この文章は感動的!
さて、そんなホタルであるが、彼らの持つ発光のメカニズム“ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応”は非常に効率が高く、その発光量子効率は約0.88! 詳しい解説は挫折するとして(!?)とにかく凄いメカニズムなのである! この迫力ある書き方から感じ取ってほしい。
忍之介は象形拳ホタルの型によって自らのケツを自然界最強の効率の良さで発光させ、その光を放出させることで諸葛亮のレーザー光線を相殺!
「何だとぉ!?」
これにはかの天才軍師の驚愕!
レーザー光線は忍者のケツに当たって消滅! あるいは拡散してゆく!
忍者は光るケツを振りながら少しずつ諸葛亮へ接近!
さながらホタルのセックスアピール!
「有り得ん! この天才軍師が汚い忍者ごときに!!!」
あまりの異常事態、予測不可能な展開に精彩を欠いた諸葛亮は効かないと知りながらもレーザーを照射し続ける!
しかし無駄! 忍者のケツが光る!
「常識も運命も、いかなる困難をも超えてゆくのが忍者!」
「う、う、うわあぁぁ!!!」
たまらず諸葛亮は羽扇を投げ捨てて敵前逃亡しようとする!
が、既に射程圏内!
「セイヤァ!」
気合いと共に忍者は、ケツを相手に向けた状態から右脚を跳ね上げる! その動作、まるで馬が駆け出す前に後肢を跳ね上げるかの如し! 馬蹄脚だ!
過たず水月に吸い込まれる蹴り足!
「ゴボーッ!」
内臓まで通ったダメージが諸葛亮の呼吸を止める! その重い痛みに苦悶の声!
くの字に折れ曲がった諸葛亮の頭部、及び右腕を肩口に担ぎ、忍者は上半身をぐいと丸めた!
一本背負い!
しかもより危険な、頭部から地面に叩きつけてゆくパターン!
諸葛亮は受け身の取り方を知らない!
グッチャアァッ!!!
生々しい音がして諸葛亮は顔面からフローリングの床面に熱烈なキス!
鼻がへし折れ続いて歯が、顎も、頭蓋骨、それによって守られた脳にまで! 連鎖的破壊エネルギーが駆け巡る!
それはまさに一撃必殺! ここは畳の上ではない! 落下の衝撃は、反発は、桁違いに増大するのだ!!!
顔面を粉砕された天才軍師は、仰向けに倒れ伏す!
が!
「ンフフッ、ホタル拳、ですか。興味深い!」
“御霊”を解除してイタコ・シャークはダメージをクリアし、跳ね起きた!
どれ程の攻撃を加えても“御霊”にそれを肩代わりさせることで本体はノーダメージになるというチート感満載の能力!
「まだまだ行きますよ、お次は……」
その時! イタコ・シャークはある違和感を覚えた!
忍者の姿が、無い!
「え?」
そして何故か、視界がぐるぐると回転している! 不規則な螺旋起動で!
「あれ?」
そして乱れる視界がチラリと、その手に手裏剣を握り込んだ忍者の背中を捉えた!
「あ」
手裏剣からは血が滴っていた。そしてようやく、イタコ・シャークは気づく。自分の首が、切断されたという事実に!
ベチャッ!
床面に当たった頭部がバスケットボールのようにバウンドして転がっていく。
忍者の神速の手裏剣斬撃によって首をすっ飛ばされたイタコ・シャークは次の“口寄せ術”を使うことも出来ず、混乱したまま死んだ。術に溺れ、その弱点すら忍者に伝えてしまったが故の結末。
彼は確かに強かった。しかし忍者は更にその上を行ったのだった。
「忍者の秘術を見た者は生きては帰さない。じいちゃんに、叱られるからね」
残心を解き、忍之介は息を吐いた。
「……とはいえ体力の消耗が激しいな。少し休みたくなってきた。あんまり疲れることはしないようにしよう」
その時、体育館の用具置き場の重厚な扉がガラガラと引き開けられる!
「……っ!?」
すわ、潜んでいたシャーク・テロリストが姿を現したのか!?
だが、どうやら普通の人間のようだ。おどおどとしながらジャージ姿の女性が顔を覗かせる。
「あ、あなたは……甲賀くん!」
恐々、といった感じで忍之介に声をかけてきたのは教育実習生の道成寺ゆりね、21歳である!
赤色のジャージ越しにもわかる巨乳! ぽっちゃりとまではいかないものの十分に肉感的な肢体は学生達には非常に毒である!
典型的なタヌキ顔で、目尻のすぐ下にある泣きホクロがいやらしい! そそる!
「物凄い音が聞こえていたけれど……大丈夫?」
恐らく、ずっと今まで用具置き場に隠れていたのだろう。体育館の惨状を見渡し驚いているゆりね!
「あ、はい、僕は大丈夫です」
「あなたがサメの怪物達を倒してくれたの? 単なる忍者のコスプレをした問題児かと思っていたのに、実は本当に忍者だったの、ね?」
ゆりねは上気した顔で忍之介を見上げてくる! 身長が149センチしかない! ミニマムなのに体はそそる! ミスマッチ! 逆に正解! 逆に興奮!
「うーん、セックス!」
パンパンパーン!
怒涛の勢いで一発ヤラせてもらい、忍之介はシャーク・テロリストの野望を打ち砕く為、次なる戦場へと向かうのであった! あんまり疲れることはしないほうがいいと思うのだが!
次回へ続く!




