第11話 イタコ・シャークの口寄せ術! 悪魔医師の策謀!!!
ここは体育館。柱のないだだっ広いフローリングの空間。平時であれば夕方のこの時間はクラブ活動に精を出す生徒達の活発な声が響いていたであろう。
今、ここにいるのは二人のみ。
我らが忍者、甲賀忍之介。
対するはシャーク・テロリスト四天王第三の刺客、イタコ・シャーク。
「もう逃げられないぞ、サメ」
「逃げる? バカなことを仰らないでください。私はあくまで戦いやすいフィールドへとあなたを誘っていたに過ぎないのですよ、忍者のお子様」
障害物は何もないこの体育館で、イタコ・シャークは何をしようというのか。
「この私の真骨頂……“口寄せ術”。これからたっぷりと味わって頂きますよ。ンフフフッ……」
突然、周囲の気温が急激に下がった気がした!
忍者は身震いした!
夕暮れ時の燃えるような西日を浴びながら、イタコ・シャークは印を結び謎の呪文を唱える。
「イワコデジマイワコデジマ……」
すると!
「クックック……」
いきなり、それまでオカマ風のやや上ずった声音だったイタコ・シャークがバリトンボイスでほくそ笑み始めた!
解離性同一性障害!
俗に言う多重人格である!
極度のストレス下に置かれると人はその心のダメージを回避する為に自分とは違う人格を形成し、その人格にダメージを“肩代わり”させようとする。このプロレスを繰り返すことで一人の人間の中にいくつもの人格が生まれてゆくのだ!
しかもこの時、肉体的特徴すらが本人とは別のものに変化するという報告も、世界中で枚挙に暇がない! 摩訶不思議である!
が!
イタコ・シャークが用いるのはこれよりも更に恐るべきオカルティック・ムーブである!
彼は古今東西、ありとあらゆる“御霊”を恐山で修行した最強の降霊術によって自身の体へ降ろし、その人物へと成り変わることが出来るのである!
「これより“執刀”を始めよう……」
おお……この正統アーリア人的ハンサムな顔つき! 白衣! 両手に装備した銀色に光るメス! 身に纏う悪魔的気配! 瞳に宿す狂気!
間違いない。この男は! 第二次世界大戦中、アウシュビッツ収容所にて“死の天使”と恐れられたドイツ人医師、親衛隊大尉……ヨーゼフ・メンゲレ!!!
「な、何だ……?」
「我が名はヨーゼフ・メンゲレ。全アーリア人の誇りと尊厳の為、下等民族をこの手で粛清する!」
何やら物騒なことを言うメンゲレの足元から、薄青色の気体が大気中に湧き出した!
「ドライアイス?」
では、当然無い!
それは毒ガス!
かの悪名高きガス室において、大量の人間を殺傷した忌まわしき毒物!
シアン化水素に他ならない!!!
なおメンゲレ自身は不織布マスクでしっかり鼻まで覆っている為、毒ガスを完全シャットアウト!
「うっ! 臭い! 毒ガスか!?」
「クックック、黄色い猿め! 時間はかけぬ! 一瞬にして貴様を殺してやろう!」
「クソッ、窓を開けて換気を……ッッッ!?」
忍之介はショックを受ける! 何と、体育館の窓が全部、板を打ちつけられて開けられないようになっているのではないか! 明らかにこれはイタコ・シャークの手によるもの! 予めこの場所で毒ガスを放つことを想定し、準備をしておいたのであろう!
忍者たるもの周囲の環境をも味方につけよ、とは幼少期より忍之介がじいちゃんから口酸っぱく言われていたことである。迂闊だった。忍之介の中に、一点の油断あり!
「換気が……出来ない!」
「この閉塞空間の中で毒ガスが充満すればどうなるか、脳みその容積の少ないアジアの猿にも分かるであろう!」
「ど、どうなるんだ!?」
「中毒死する!」
「なるほど」
忍之介は頷いた。リアクションが、薄い!
「フハハハッ! もう諦めたのか、猿め!!!」
「いや、まぁ何とかなるかなと思っただけさ」
そう言うと忍之介は忍装束の胸の内側から、首掛けストラップにぶら下がった薄いカード様の物を取り出した!
こ、これはwwwwwwww携帯式空間除菌カードではないのかwwwwwwwww
首からぶら下げているだけで空間のウィルスを除去! 更にはマイナスイオンで気分もリフレッシュ! 消臭効果も! 現在各社から発売されている、大人気商品ではないかwwwwwwwwwwww
忍之介よ、その空間除菌カードには毒ガスをシャットアウトする効果もあるというのかwwwwwwwwww草しか生えないwwwwwwwwwwww
「フハハハッ! 情報弱者の猿め! そんなカードには何の効果もないわ! お前、水素水とか有り難がって飲むタイプか!? クーックック! 消費者庁も注意喚起していただろう? もっと注意深く生きたまえよ!」
全力で煽り倒すメンゲレ!
しかし! 忍者はあくまで真顔!
この期に及んで空間除菌(笑)で何とかしようとでも考えているのか!?
読者諸氏も怪しげな商品には充分に気を付けて頂きたい!
次回へ続く!




