第10話 ホラー展開! 無念を抱えた幽霊達が忍者を誘う!!!
甲賀忍之介は順調にシャーク・テロリストを始末しながら進んでいた。
外で爆発音がし、窓ガラスがビリビリと震える。人々の騒ぐ声もする。大変なことになっているようだ。だが彼は慌てていない。どうせ人間一人に出来ることなど限られている。忍者として自分に出来ること、それはまず学院敷地内の敵の駆逐だ。何もかもを一人で抱え込もうとするのは愚か者だ。
「四天王……恐らくあと5人くらいか」
独り言を呟きながら廊下を進んでいると、薄ぼんやりした明かりが廊下の先に見えた。
時刻は夕暮れ。逢魔時である。怪しいものに出会いそうな時間。燃えるような夕日がしんとした廊下に降り注いでいる。まるで血のような赤。不吉な予感。
「敵、かな」
シャーク・テロリストの中には特殊な能力を持った上位種がいる。サイ、カメレオン……いずれも強敵であった。紙一重の決着だったと思う。あのような強力な相手がまだ何体かいるのだ。
やがて、青白い人魂が廊下の角を折れて姿を見せた。
幽霊!?
「お化けかな?」
人魂は姿を変え、忍之介に語りかけてきた。
「苦しいよぉ……。死にたくなかったよぉ……取れ、責任、お前の命で」
おお、何ということか! 現れたのは剛力腕太郎の幽霊ではないか!?
無念のあまり化けて出てきたとでも言うのであろうか!?
恨めしそうに忍之介を睨みながら、幽霊の剛力がすーっと滑るように廊下を移動してくる。
いや、剛力だけではなかった。人魂は次々と現れ、シャーク・テロリストによって若い命を散らした生徒達の姿となって、忍之介の前に出現した!
「背中が痛いよぉ……」
「た、助けて……」
「肩パンの刑、お前……」
「苦しいンゴーッ!」
そんな……。生徒達の無念が実体化し、未だに死んでいない忍之介を死者の世界へと無理やり誘おうとでもしているのか!?
青白き幽霊の顔はみな、苦痛に歪んでいる!
「苦しい」「苦しい」「苦しいよぉ」
いつの間にか幽霊達は忍之介を取り囲み、大合唱。忍者の脳内に直接、その無念を叩きつけてくる!
「助けて……」
「一緒に死にましょう……」
「友達、俺達は……」
「死んだンゴー!」
一体、どうすればいいのか。夢や希望に溢れ学生生活を満喫していたはずが突如、何の前触れも無しに命を奪われたその憤りに対し、我々には何が出来るというのか。この幽霊達に対し何をしてあげられるというのであろうか!
忍之介よ、どうするのだ!?
「うーん、苦しいとか僕に言われてもちょっと……」
ポリポリと頭を掻いて苦笑する忍者!
精神攻撃が全く効いていない!
「可哀そうだとは思うけどクレームならサメ頭の方に言ってね」
冷静過ぎるぞ忍者!
この異常事態に対し、肝が据わり過ぎている!
忍者があまりにもあっけらかんと言うので、幽霊達は諦めたのか、すーっと姿を消した。
そしてその代わりに、廊下の向こうに現れた存在、あり!
「やっぱりね。そういうことか」
忍者が言う。そう、勘付いていたのだ。今のは敵の精神攻撃。忍之介の心に揺さぶりをかけてきたのだ。富士の樹海で精神統一の修行を行った忍之介には、幽霊の恨み節など効かぬ!!!
「ンフフフッ……この私の“魂降ろし”を跳ね返すとは大した精神力の持ち主ですねぇ……」
「四天王か?」
「ご明察ですよ、忍者のお子様。お初にお目にかかります。私の名はイタコ・シャーク。霊峰・恐山で修行をした最強の口寄せ師です」
「シャーマン、ね。だったら今のゴリラの幽霊もあんたの仕業か」
「ええ、もちろんですとも。地縛霊と化した生徒達の嘆きの声であなたの心を破壊しようと思ったのですが、ンフフッ……図太いメンタルですこと。こうも容易く破られるとは」
「こんな小細工で僕は倒せないよ」
「そのようですね。ではこちらも次の一手を打つことと致しましょう……」
すすーっと廊下を後退し、イタコ・シャークが逃げようとする。
「待て!」
それを追う忍之介!
新たな強敵との戦いの予感!
次回へ続く!