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第9話 ラスボス登場! 終わりなき悪夢の序章!!!

 シャーク・テロリストが突如、聖・権多呉学院を襲撃してから4時間が経過しようとしていた。

 正門前には多くの人だかりが出来ている。門扉の前にずらりと並んだ警官隊。マスコミや野次馬も続々と集まってきていた。

 もちろん、彼らの興味は学院を占拠した謎のテロリスト達のことである。既にマスコミにはシャーク・テロリストの存在が秘密裡にリークされていて、カメラマン達は何とかサメ人間の貴重な映像を撮影しようと躍起になっていた。近くの木によじ上って学院の敷地内へ侵入しようとしたマスコミの人間が警察官に引きずり降ろされて棒で叩かれている!


 またこの人だかりの中、プラカードを掲げて何かしら叫んでいる集団もあった!


“シャーク・テロリストの権利を守ろう!”

“シャーク・テロリストは同じ地球の仲間!”

“シャーク・テロリスト虐待絶対反対!”

“シャーク・テロリスト差別を止めよう!”

“シャーク・テロリストの肉を食べるのは残酷!”


 動物愛護団体である!

 そして人権保護団体の姿もあった!


 彼らは昨今の色んな事情を鑑みてしっかり鼻まで覆う正しい着用法で不織布マスクをし、シャーク・テロリスト達が海辺で楽しげにバカンスしている写真や、シャーク・テロリスト達が肩を組んでサムズアップしながら笑いあっている平和な写真を掲げながら、非暴力による解決、及びシャーク・テロリストの保護を声高に訴えかけていた!


「下がってー! 下がってくださいよー! 撃ちますよー!」


 ピストルで威嚇しながら野次馬を下がらせる警察官。

 と、そこへ黒光りしたリムジンが到着。中から快適市警察署長が降りてきた。


「署長! ご苦労様です!」


 下っ端警察官達が駆け寄って挨拶する。


「うむ、苦しゅうないぞ」


 鷹揚な口調の署長!


「まさか署長自ら現場へ参られるとは何事でありますか?」


「あぁ、視察だよ。何せこんなに本格的なテロ行為は我が国では非常に珍しいからね。ちょっと様子でも見てみようかなとね」


「は! 左様でございましたか!」


 署長はおもむろにポケットからタバコの箱を取り出す。それを見た下っ端、即座にライターを構え着火! その動作、タバコが抜き取られてからわずか0.03秒! 訓練されている! さすがは我が国の警察である!


「ふぅ~」


 煙を吐きだし、署長はのんきな態度で校舎を見詰める。


「人質を無視して、もう突撃しちゃったらどうかね? 犠牲者は全員テロリストによって事前に殺されていたことにして」


「署長! 周りをよく見てください! マスコミだらけですよ! 失言注意報!」


「おっと、こりゃ失敬! わっはっは!」


 署長はタバコの灰を落とそうとした。それを見た下っ端、即座に両手の差し出して皮膚で直に灰を受ける! 熱くても全く表情に出さない! 訓練されている!


「っと、誰か出てきたようだなぁ」


 署長が言った。


 正門へ向かい校舎の方からやってくる者の姿あり!


 数名のシャーク・テロリストがサブマシンガンを携行し、近づいてくる。

 警官隊に緊張走る! 興奮したカメラマンが近くの木によじ登ろうとしてケツに警棒を突き刺される!


 一般シャーク・テロリストを背後に従えてやってくる、モスグリーンのベレー帽を被った圧倒的存在感を放つ、上級シャーク・テロリスト。

 はたと立ち止まり、リーダー格のサメ人間はキューバ産の高級葉巻を抜き取り、己のサメ肌にこすって着火、余裕のある動作で鋭利な歯が並ぶ口元に咥えた。上等な葉巻特有の香ばしい芳香が辺りに漂う。その優雅な態度に、それまでの喧騒が嘘のように静まり返る。誰もがそのサメ人間の持つ“個”の威圧感によって気圧されていたのである!


「誰だね? 君は」


 署長が訊く。


 葉巻の紫煙を顔に纏わせ、リーダーサメはいかにも『LE○N』でも読んでいそうな渋みのある上質なオトナ風ジロー○モ的笑みを見せた。チョイ悪オヤジならぬチョイ悪サメ!


「私はシャーク・テロリスト達の指導者……ドン・ゲリラ」


 声もシブい! 銀河○丈氏で再生して頂きたい!


「ドン・ゲリラ? フザけた名前だなぁ」


「フッ……“名”などに特別な意味は無い。便宜上、そう名乗っているだけのこと。何を成すか、大事なのはそこだ」


「んで、目的は? 金か? 恵んでやろうか、100円くらいなら……ぶわっはっは! どうだね、今のユーモラスな受け答えは!」


「最高です! 署長! 今すぐ芸人になれますよ!」


 下っ端が素早く太鼓持ち! 訓練されている!


 が、署長のノリに一切付き合わず、シブみのあるドン・ゲリラは人差し指を立て、天へ向かって伸ばした。


「自然淘汰。より強い種が弱い種を駆逐して生存権を得ること。私の目的はそれのみ。この天より(たまわ)った“ギフト”により我々シャーク・テロリストは生態系の頂点となり、あらゆる下等動物達の生殺与奪の権を得た。よってゆくゆくはサメの世界帝国を建造するその前段階として、まずは地上に蔓延る虫けらどもを駆除することとした」


「はぁ~? 頭大丈夫か? おい、君ぃ!」


 署長は太鼓持ちの下っ端に呼びかける。素早く警察車両へ駆け込む下っ端! そして彼は肩に“武器”を担いで戻ってきた!


「人間を舐めるなよ、サメ! 改正暴対法によって我が署にも配備された対戦車擲弾発射器(ロケットランチャー)の威力をとくと見よ! 撃ちなさい、君ぃ!」


「署長! ロケランを撃つためにはまずこちらの書類に直属の上司のハンコを押して頂かなくてはなりません! それから直属の上司の直属の上司に、そして直属の上司の直属の上司の直属の上司のハンコも! それから直属の……」


 なんと! 発砲するまでに必要な上司のハンコ、5つ!!!


「ええい、うるさい! そんな回りくどいことをせんでええわ! 貸しなさい」


 書類を下っ端から引っ手繰(たく)って署長はポケットから複数個のハンコを取りだした!


「ふふふ、本人がいなくても押せるのがハンコ文化のいいところだよ。アナログならではのスマートな解決方法だろう」


 何と! 代わりにハンコを次々と押してゆく署長! クレバー!


「これでよし、と。さぁ、改正暴対法により我が署にも配備されたロケットランチャーの威力をとくと見よ、サメども!」


「署長! 人質のことを忘れていませんか?」


「とくと、見よ!」


「……発射!」


 空気を読んで下っ端は肩に担いだロケランを発射! 煙を吐いて弾頭が飛ぶ!!!


「フッ……面白い。そのオモチャでこの私をどうにか出来るとでも?」


 両手を広げ、逃げる素振りすらせず、ドン・ゲリラは着弾を待ち構える!

 死ぬ気か!? 戦車の装甲すら破壊する程の威力だぞ!?


 そして!


 ドオオオオォォォン!!!!


 ドン・ゲリラへ命中したロケット弾が大爆発を起こし、サメのボディを粉々にして肉片へと変えた!!!


「はっはっはーっ! 見たかね? 我が国の警察組織の恐ろしさを!」


 ガッツポーズする署長!


「さぁ、敵の頭は死んだ! 一気に突撃を敢行せよー!」


 爆炎と煙の向こうを指差し、署長が警官隊に発破を掛ける!

 マスコミもカメラやマイクを構え臨戦態勢!


「これで私の出世も間違いなしだ! なぁ、君ぃ!」


 ロケランを撃ち終えた下っ端の肩をパンパンと景気よく叩く署長。すると下っ端の首がポロリと落ちて地面に転がった。途端に大量の血液が噴き出す!


「……は?」


 背後に、鼻まですっぽりと覆う正しい着用方法で不織布マスクをし“顔を隠した”動物愛護団体の者達がいた。

 その手にはアーミーナイフ、そしてサブマシンガン。まさか、コイツらは!?


「な、何なんだよ貴様らは!?」


 署長の目の前で、次々とマスクを剥ぎ取ってゆく動物愛護団体! その顔は……サメだった!!!


 読者諸氏、おかしいと思わなかっただろうか!?

 常識的に考えて、たった数時間前に姿を現したばかりのシャーク・テロリスト達であるはずなのに!

 どうやってそんな彼らの“海辺で楽しげにバカンスしている写真や、肩を組んでサムズアップしながら笑いあっている平和な写真”など撮影することが出来ようか!?

 いや、出来はしまい! 彼ら動物愛護団体の正体が、シャーク・テロリストでない限りは!!!


 野次馬達は全く彼らの正体に気付いていなかったのである! マスクをしていたからバレなかったというのもあるが、それだけではない。読者諸氏も経験があるだろうが、駅前でよく分からない愛護団体が熱い視線をあなたに投げ掛けていたら、目を合わせず足早に立ち去るであろう! そう! 人間は面倒事からは無意識に目を逸らすのである! だから多少顔立ちがサメっぽくても、バレなかったのだ! 心理的トリック!


「ぎゃー!」

「カメラがっ!」

「ぐわーっ!」

「許してください!」


 あちこちで悲鳴! 鮮血!

 人ごみに紛れていたシャーク・テロリスト達が殺戮を開始! 背後を取られた形になった警官隊の足並みが乱れ、フレンドリファイア連発! 途端にそこは阿鼻叫喚の地獄絵図と化した!


「な、な、な……」


 恐怖のあまり失禁しながら尻餅をつく署長!

 その彼の目の前に、いつの間にか! モスグリーンのベレー帽を被ったチョイ悪シャーク、ドン・ゲリラが“無傷で”立っていた!


「き、貴様は死んだはずでは!?」


「通常兵器で私は殺せぬ」


 まさか……ドン・ゲリラはその肉体を再生させたのか!?

 ロケット弾の直撃を喰らって爆発四散したにも関わらず、この短時間で完全に肉体を!?

 一体……どんな生物の遺伝子を組み込んだらこのような芸当が可能になるのであろうか!?

 作者にも全くわからない!


「死ぬにはいい日だ」


 その言葉を聞き終えた直後、署長はドン・ゲリラの強烈なサッカーボール・キックに顎を跳ね上げられ、頸椎をへし折られて死んだ。

 痛みを感じる暇すらなく、署長の意識は突然にプツリと途切れたのであった。


「そして、革命の狼煙は上がった! 我が同胞達よ、今こそ、その力を満天下に示すのだ!!!」


 ドン・ゲリラの号令と共に一斉にシャーク・テロリストが街へ散らばってゆく!

 学校の敷地内に留まっていたテロは遂に、快適市全体へとこれから波及を始めることになるのである!!!

 恐怖と絶望が加速してゆく!!!


 悪夢なら早く醒めてくれ!!!

 次回へ続く!


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[良い点] 太鼓持ちー!(。´Д⊂) いやー署長の寒いボケに対しての太鼓持ちの返しがあってこそ、より寒さが生きる笑いというか、高等テクニックすぎてマネできましぇんw そしてハンコのネタとか時事ネタ…
[良い点] 実に訓練の行き届いた下っ端と、クレバーな署長でした。 安らかに眠れ。 (-人-)
[一言] 署長……めっちゃいいキャラしてる。 下っ端もいいキャラしてる。 あぁ、署長……。潔いまでの一発キャラでしたね。
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