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【1】

執筆とは無縁のド素人による個人趣味のものになります。

稚拙で目に余る部分や矛盾など、多々あると思います。

生温かい目で、ちょっとした暇つぶし程度に見ていただけたら個人的には嬉しいです。



今の私の名はシェリスティーナ・カルラフォード。

セブンフォード王国、大公家の令嬢にして王族に最も近しい血をもつ姫だ。



私には日本で生まれ育った記憶があった。

十五歳の高校受験を控えた冬、車道に飛び出した女の子を庇って死ぬまでの。

それなのに何故か、気がついたら二歳児。

ファンタジーの世界に生まれ変わっていた。

弱くとも魔法があり、精霊や魔物がいる世界に。


家柄の割りに何とも言えない家族関係に、前世の記憶があるなど口が裂けても言えなかった。

悟られないようにひた隠し、無垢な子供を演じた。



それがまさか、あんな事態を招くなんて――

ごめんなさい、お兄様。

卑怯な私は自分のため、お兄様の人生を九年も、犠牲にした…。






デュークハルト・カルラフォード。

白銀の髪と蒼い瞳を持つ私の美しいお兄様。

私、シェリスティーナ・カルラフォードの最愛の家族。

十八歳で成人となるこの世界で、十三歳にして大公家当主業務の全てを熟してきた天才。



ファビス前国王は出来の良くない上の息子であった父を持て余していた。

父ルーカスが問題を起こさぬよう、ある意味で優秀すぎた公爵令嬢のセレンティーナお母様を宛がい、王家の血を護るためという理由の下に大公家を興させた。


お兄様が産まれ、その十年後に私は産まれた。

白銀の髪と碧色の瞳というお母様とそっくりの色を持って。


医療が日本のように発達していないこの世界、出産は命がけだ。

そして私が産まれて三日、お母様は亡くなった。

もともと出来の良くない父をお母様が補っていたからこそ形になっていた大公家。

そこからは緩やかな衰退、崩壊を迎えるのは時間の問題だった。

お兄様がその優秀さを遺憾なく発揮するまでは。



幼い頃から天才的だったお兄様。

僅か十歳で当主業務に携わり始めると、業務に関わる能力を瞬く間に伸ばしていった。

そんなお兄様を見て、当主の仕事に手を抜き始めた父。

日を追うごとに能力を伸ばすお兄様に嫉妬し、父は酒に逃げ腐っていった。


二年もすれば酒に溺れ、時に暴力を振るう、どうしようもない屑に成り果てた。

努力に努力を重ね、ついに母が亡くなる前の状態まで大公家を立て直したお兄様。


お兄様が十三歳の時には、父は既に当主業務すら放棄していた。

そんな父が死んだのがお兄様が十五歳の時。

きっと王家としては血を護るための大公家なのだから、当主不在の不安定な状態にしておきたくなかったのだろう。

異例ではあったが特例扱いで、お兄様は十五歳で大公家当主となった。




お母様を亡くし、最低な父から私を護りながら育ててくれた、優しく素敵で誰より大切なお兄様。


王家から同い年のカイン第一王子との婚約の打診にも、家より私の幸せを願ってくれた。

それから三年、頑張ったし我慢もした。

恋でなくとも、カイン第一王子と家族の情を持てるように努力もした。


でも八歳の私に現実は非常だった。



稀に現れる精霊に好かれる愛し子。

彼女が王宮に呼ばれ、偶然にも私とカイン第一王子の語らいに鉢合わせた。

八歳ながら金の髪と蒼い瞳の整った顔立ちの王子様を目にした彼女は駄々を捏ねた。

結婚するのは自分だと泣き喚いて。

カイン第一王子はわがままをを通そうとする彼女に対し、婚約者のシェリスティーナがいるから無理だと断った。

それに怒り魔力を暴走させた彼女と、戯れに顕現し力を貸した火の下位精霊。


結果、怒りの矛先である私に向けて火球が放たれた。

突然の出来事に逃げられなかった私は、顔から右肩にかけて火傷を負った。


痛みと消えない火傷痕にカイン第一王子との婚約解消話が持ち上がった。

お兄様は猛抗議したが、彼女の罪もカイン第一王子との婚約も王家の力でなかったことにされた。

そんな王家の対応に「家にいればいい。私が一生面倒みよう」と優しいお兄様は言ってくれた。



人目に触れたくなくて、視線が怖くて、王都の邸から一歩も出なくなった。

お兄様に大切にされ、閉じ籠って過ごしていても、どこからか噂は聞こえてくる。

邸に引き籠り一年が経ち、九歳になった私はカイン第一王子が彼女と婚約したことを知った。

そして噂はさらに悪意を増した。


「王家に捨てられた火傷の岩肌姫」

「王子の心を留め置けなかった醜い化け物姫」

「大公家の融けて醜い、融醜姫ゆうしゅうひめ

「優秀な兄にお荷物の融醜姫ゆうしゅうひめ

「大公家の不良債権」


嫌味なくらい的を射ていた。

優秀なお兄様に、肌が融けて醜い私。

引き籠っていても噂は消えず、お兄様の足を引っ張るしか出来ない私。

まるで乙女ゲームの主人公を虐めて断罪される悪役令嬢みたいだ。

精霊の愛し子に睨まれ、王家に捨てられ、生産性も明るい未来もない。

どちらかと言えば、私は被害者のはずなのに…。


噂を耳にした私を心配した優しいお兄様は、王都の邸では心が休まらないだろうと大公領に移り住むことを提案してくれた。



馬車での移動中、酔った私のために街道から少し離れた森で休憩を取ってくれたお兄様。

人目を気にする私のために護衛を離してくれた。

お兄様が馬車に薬を取りに戻り、私は一人、久しぶりに周りを気にせずに済む、そんな状況に少し浮かれていたのだろう。

気づいた時にはかなり奥まで入り込んでいた。



そして、事は起こった。





最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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