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第66話 白草平野機甲戦 後編


 トオル達はセーズの鹵獲したゲネシス主力戦車ドラウグルの陰に隠れる。


 ラナリの息が整い次第、ドラウグルを包むようにフォースフィールドを展開し一方的に敵車両を撃破していく算段である。

 

「ラナリ、息切れは治ったか? あともう少しだけ頑張ってくれ」


 トオルの励ましにラナリが「……もう大丈夫。いつでも行けるよ」と返す。


「セーズは引き続き鹵獲をしながら、掌握出来た物で敵戦車をやっちゃって。キューには悪いけどセーズを手伝ってもらうわよ」


「……貴女に言われなくても、トオル様の命令通りに動きますから安心してください」


 数分の間にセーズとキューによりゲネシス主力戦車が一両、二両、三両と鹵獲されていく。


 しかし、七両ほど鹵獲した所でゲネシス主力戦車の二個小隊の十両が友軍の異変に気が付き、九〇度反転した。セーズが敵の動きに即座に感知し、ゲネシス主力戦車同士の砲撃戦が始まる。


 紫のプラズマは超高温である。鹵獲したドラウグルの後ろにいるトオル達が発射時の熱で汗を流すほどであった。蒸発しないだけましではあるが、瞬間的に五六度ほどをトオルとナカジマのHUDが記録した。


「ねえ、トオル。あいつらがなんで戦車の影にカバーしないのかわたし分かっちゃった」


「どうしたナカジマ。藪から棒に」


 トオルとナカジマはお互い、ヘルメット越しに大汗を流していた。汗がお互いの強化戦闘服の中を滑り落ちている。非常に不快であった。


「この戦車に密着してたら、ものすごっく熱いって事よ」


 トオルは、ふと必死にフォースフィールドでドラウグルを覆っているラナリを見ると汗でうっすらと下着が浮かんで見えているの気が付き、直ぐに目を逸らした。


「トオル、あんたロリコン?」


 ナカジマが半笑いでトオルをからかう。


「ちげぇよ! そんで状況はどうなんだよ。良いのか悪いのか」


 ナカジマがセーズからの情報を得て言うには、帝国の歩行戦車師団は戦力を三割強失っているとの事だ。対するゲネシスの機甲部隊はまだ二割損耗したかと言ったところであった。


 ――敵対するゲネシス主力戦車を六両撃破。ドラウグル三両撃破されました――


 突然、トオルとナカジマのヘルメットにセーズの声が響く。


「いつの間に俺の無線の周波数を手に入れてたんだ……」


 トオルは、気づかぬうちにトオルのヘルメットに備えてある無線の周波数を手に入れていたセーズの高性能さに驚きを隠せないでいると、ラナリとアルバが空を指さして大声を上げた。


「トオル! 上!」


「おい! 空を自由に飛んでいる奴がいるんだが、ありゃあなんだ!」


 ラナリとアルバの指さす方を向き、空を見上げるとエンジン音が鳴り響いているのに気が付いた。


 空を飛んでいるのは逆ガル、単葉プロペラ機の編隊である。あの金の多角形浮遊体シリュクの話では、超大規模かつ想像を絶する高性能なハッキングにより空は封鎖されたはずであった。


「……ああ、なるほどね。確かにそうなるわよね。ヴェル博士の作戦は全て加味した上で、あの遺跡の防衛機構を作動させたんだわ」


 ナカジマが一人合点し、感心したように空を自由に飛ぶ、帝国爆撃機隊の大編隊を見上げていた。


「これが古めかしい兵器を使ってた理由か」


 ゲネシスの機甲部隊の真後ろから侵入した帝国の爆撃機隊が、急降下爆撃を敢行する。爆撃機隊の二〇〇キロによって、ゲネシス主力戦車が爆散した。


 ゲネシスの主力戦車を確実に仕留めていく爆撃機隊の姿は、劣勢だった帝国の機甲師団を鼓舞した事だろう。


 さらに、単葉のレトロな戦闘機を伴った一二機の三発輸送機が、下部から輸送グライダーを切り離した。


 輸送グライダーが滑空しドラッグシュートを展開、緩やかに着陸する。


 その輸送グライダーの乗降口から、スプリンターパターンの迷彩スモックを着た帝国兵が迅速な展開を見せた。


 一二機の輸送グライダーから展開した帝国兵は、勇猛果敢にそれぞれが発現した特殊な力によってゲネシス機甲部隊の背後を強襲する。


「トオル、私みたいな人ってこんなに沢山いたんだ。私だけかと思ってた」


 狩る側だったゲネシス機甲部隊が狩られる側に変わる様相も加味され、ラナリが自分だけが特別なのでは無いのだと思ったようであった。


「帝国のPSI(サイ)兵士は凄まじいな」


 帝国のPSI兵士の戦力的価値は、凄まじいの一言で結論付けられるほど圧倒的であった。


 トオルは、もしも人類がこの力を知ったらと思考する。確実に人類の革新、人類の新たな進化の道として是が非でも欲しがるだろう。例え入手方法が、人道的に反することであってもだ。


 トオルの思考を連続した雷鳴が破る。空は雲一つ無い晴天に雷鳴のような銃声が轟いていた。


 トオルには、これが誰による物かさほど時間が掛からずに思い至った。


 トオルは、緑髪のショートカットと煌めく銀色の蛇眼を持った美少女を思い出す。


「マイヤーもいるのか、こりゃあ一〇分もしない内に決着が付いちまうな」


 トオルは、あの娘もいるのなら楽勝だと思えるほどに共闘したマイヤーの力を評価していた。


 高度二二〇〇メートルから戦場を旋回している一機のヘリコプターから、雷のような弾丸が放たれゲネシス主力戦車を完膚無きまで破壊する。


 交差反転式ローターを、円筒形の胴体の左右に張り出す鋼鉄の梁に取り付けており、人類の現用ヘリコプターとは違った趣があった。


 数本の雷のような弾丸が上空から煌めきながら、ゲネシス主力戦車を破壊していく光景を見ていたトオルは、突然焦った顔をした。


「……待てよ、おいおいおいやべえぞ! セーズ、今すぐに俺達の前にあるドラウグルをどっか遠い場所に移動させろってセーズいねえ!」


「トオル何いきなりこの状況で焦ってる訳? わたし達の勝ちは――」


「あほかナカジマ! 俺達の前にある奴はゲネシスの主力戦車だぞ! マイヤーに狙われたら仲良くあの世行きだ!」


 ナカジマが「はあ? 誤射なんて起こるはずがないじゃない。IFFだって……って帝国にそんな高度な物ある訳ないじゃない! ラナリ今すぐ全力で力を――」


 ――トオル達の頭上を目掛けて、電磁加速された弾丸が稲妻の如く落ちた。



今日は寒いので更新しました。

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