表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/154

第63話 見知らぬ惑星に降下した共産主義のアンドロイド達

 

 場面は第一次エレミタの戦いまで遡る。


 人類とゲネシスがエレミタを巡って熾烈な艦隊戦を行っている最中、Югсталь(ユークスターリ)いう小惑星採掘企業のロゴで偽装している六〇〇メートル級星間輸送艦アランドが、戦闘状態にない裏側にひっそりと停泊していた。


 この輸送艦は、全長六二三メートルに及ぶ中型の輸送艦である。その実態は、第六世代型軍用アンドロイドを四〇〇体以上を搭載した特務艦であった。


 そのアランドの艦長であるヴラジーミル・カザロフが、刻々と太陽系連合政府の艦艇の反応が消えていくモニターを眺めながら、無精ひげを一撫でした。


 その風体は屈強な宇宙の男と言った風体で、飾緒のついた黒の将校服に身を包んでいる。


「ヴァジム君。アメリカが指揮している政府軍艦隊は、あの数のエイリアン艦隊に無様に押されているようだよ」


「たったの二七隻にですか? 信じられない。奴らがそれほど圧倒的なテクノロジーを持っているのなら、何としてもアメリカより先に手に入れねばなりませんな」


 副官ヴァジムの言葉にヴラジーミルが何度も頷いた。


「まさに、今回の作戦はそれだよ。第六世代型アンドロイド四〇〇体を惑星軌道上から降下ポッドで降下させ、アメリカより先にテクノロジーを手に入れる。そして、そのテクノロジーを我が国が誇る科学者達が解析し、未知の技術を我が物にすれば連合政府内での主導権は祖国ロシアの物になる」


 ヴラジーミルは興奮した様子で話すと、今度は溜息をついた。

 

 予想よりも早く決着が付きそうだったからである。


「……アメリカもエイリアン相手は分が悪かったようだな。ヴァジム君、ユーリヤ達を呼んでくれ。我々の聖女(スヴェトラーナ隊)に最後の挨拶をしたい」


 ヴァジムは、アンドロイド達のいるカーゴスペースを改造した居住区へ呼び出しの放送を行った。


 一分後、艦橋に現れたのは四体の第六世代型軍用アンドロイドである。いずれも赤と白のツートーンのボディスーツを着た女性型であった。


 四体の女性型軍用アンドロイドが、ヴラジーミルの前で気を付けの姿勢を取る。


 一体目は、識別名ユーリヤと呼ばれる長い金髪と碧眼を持った、軍用アンドロイドである。


 彼女は、第六世代型のプロトタイプとしてカディア族の母星カルセムに送られていた。


 ステーション・タウの宇宙港で起きた核自爆テロへの報復戦争の際に、カディア族テロリスト幹部の一人であるアカフの護衛を務めていた。


 カディア族とは頭の両側頭部に羊のような巻角を持った、ヒューマノイド型異星人である。彼らの母星カルセムは、サバンナと砂漠が多い惑星で宇宙の中東と呼ばれている。


 そこで、トオルに破壊されたはずであった。


 だが、トオルの救出と捕虜の確保を行った第五二小隊ブラボー分隊が、顔面を破壊されたユーリヤを司令部に移送中、ロシアの息が掛かったカディア族に襲われ奪還された経緯を辿っていた。


 彼女は修理され戦闘データを元に強化されてこの星間輸送艦アランドに乗っていた。


 二体目は、識別名ゾーヤと呼ばれる金髪を一つ結びにした軍用アンドロイドである。彼女はグレーの眼を責任感の宿る眼を真っ直ぐと見据えている。

 

 三体目は、識別名フェオドラ。金髪のツインテで緑眼を悪戯ぽっく細め、不敵に笑いヴラジーミルを見つめていた。彼女は捕虜の宙賊を生きたままゆっくりと解体した事がある。


「ユーリヤ、ゾーヤ、フェオドラ……それとメチェーリ。よく来てくれた」


 最後に呼ばれたメチェーリが、白に近い金髪のセミショートを揺らし敬礼した。


 彼女は第六世代型を改良した特別なアンドロイドであった。

 

「さて、予定よりも早いが直ぐに降下してもらう。ゲネシスの目がこちらに向かない内に、お前達を乗せた降下ポッドを投下する。使用装備は12.7mm口径のブルパップ自動小銃を持って行くように。その他の装備は各自の好きにしていい。お前達と一緒に陸上拠点車両も投下する。その後は課せられた任務に従い行動しろ」


 最後にヴラジーミルがフェオドラを一瞥すると「……最後にフェオドラ」


 ヴラジーミルに呼ばれたフェオドラが満面の笑みで「なぁに?」と返事をする。


「……アートと称して、むやみやたらに人間を解体しないように。ロシアと共に歩む国があるかもしれないことを頭の中に入れておけ」


 フェオドラが露骨に不服そうに頬を膨らませると「……人間を解体するのはぁ控えまぁす」と答える。


 だが、ヴラジーミルが聞こえないような小声で「異星人はぁ人間じゃぁないけどねぇ」と呟いた。


 こうして、惑星エレミタにユーリヤ指揮下のアンドロイド部隊が一〇〇を超える降下ポットで射出される。その数、四〇〇強の第六世代型アンドロイドであった。


 無事に大気圏を突破し降下が成功した事を見届けたヴラジーミルは、航宙長に指示を出す。

 

 星間輸送艦アランドは目的を達しゲネシス艦隊に見つかる事もなく、母港のステーションにひっそりとワープするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ