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第57話 遺跡を巡る戦い-前哨戦- 前編

 

 朝日が昇る前の薄暗い時間帯に、黒い制服とズーニッツ帝国の紋章の入った腕章を身に付けた三人組が、ドーム状の遺跡を目指して前進していた。その三人組は、金の短髪に緑の蛇眼をした大男と、銀髪に褐色肌で赤い蛇眼をした二枚目風な男性、最後にヴァイツ族には珍しい、緑髪で銀色に輝く蛇眼の豊満で小柄な女性である。


 彼女は、他のヴァイツ族にある手に少しだけ生えている鱗のような組織も無い。ヴァイツ族の中で珍しい純血のヴァイツ族であった。


 金の短髪で緑の蛇眼の大男が、前進する途中で登った崩れた高い建物の上から双眼鏡で敵陣を覗き込む。彼の目には、白いアーマーを着た細身のゲネシス兵達が、指向性プラズマライフルを携え、首都ベルリナの大通りを封鎖していた。大通りの先には、ドーム状の遺跡がある。


「あの野獣のような異星人は……いないようだな。総統閣下の命令で威力偵察を引き受けたのはいいんだが、些か雑魚ばかりだな」


 ラボールの言葉に、褐色肌の二枚目風の男が朝日に輝く銀髪を掻き上げて笑い出した。


「ははは! ラボールの巨体じゃヤルなら野獣で丁度いいってか?」


 彼の下品な言葉に、16.5×99mmの徹甲榴弾を使用する対物ライフルを分解して整備をしていた緑髪で銀色に輝く蛇眼を持った女性が、無言で顔をしかめる。

 

 彼女は、対物ライフルを素早く整備を済まし、あっという間に組み立てていった。そして、その対物ライフルのライフルスリングを肩にかけると、ゆっくりと立ち上がった。


 彼女は小柄とは言え、対物ライフルは彼女の身の丈ほどもあり、不格好に見えてしまう。しかも、分厚い革製のライフルスリングが、彼女の豊満な胸をどうしても強調してしまう。


「おお! マイヤーいいねえ! そのでかい双丘! 是非この俺が最初の登頂者になりたいもんだ!」


 マイヤーと呼ばれたその女性が、心底嫌そうな軽蔑の目を彼に向けるとぼそっと呟いた。


「……ベッケル……いつか殺す」


 マイヤーの美しい銀の蛇眼が、殺気を伴うとラボールが後ろを向いた。


「まあ、待てマイヤー。そこのお馬鹿を殺すのは、偵察結果を総統閣下に報告してからだ。……よし、そろそろ仕掛けるぞ。どれほどあの遺跡に戦力を裂いているのかを知る必要がある。あわよくば、その戦力も崩しておきたい」


 ラボールの言葉に二人は「了解」と小さく発するとベッケルは、ラボールと共に高い崩れた建物を降りて行く。


 マイヤーは、壊れた自動車や、建物の瓦礫で半ば埋まっている大通りを、崩壊していない窓から、対物ライフルのスコープ越しに覗く。ドーム状の遺跡のあるこの中心地区は、遺跡以外の建物がほぼ瓦礫と化しており、瓦礫まみれの平地と化していた。彼女のいる建物のような、まだ建物として認識できる物を探す方が早いほどである。


「……皆が幸せそうに歩いてた綺麗な街だったのに」


 ラボールとベッケルが、白いアーマーを着たゲネシス兵一二名と接敵する。ベッケルが、おもむろに水筒の水を空中に撒くと、その水が鋭利な刃となり、白いアーマーを着たゲネシス兵に殺到し撫でるように次々と切り裂いた。


 生き残ったゲネシス兵が指向性プラズマライフルで応射する。だが、その緑の光弾は、ラボールが投げつけた壊れた自動車によって阻まれてしまう。


 彼の怪力は、それだけでは無い。ゲネシス兵に向けて投げつけた拳大の瓦礫を徹甲弾へと変貌させるほどだった。ただの瓦礫がゲネシス兵の頭部を粉砕していく。一二名のゲネシス兵がたったの数秒で無に帰した。


「はは! マイヤーの出る幕は無いみたいだな!」


「待て、ベッケル。……敵が続々とやって来てるぞ。これで終わりという訳ではないようだ」


 地上では、ドーム状の遺跡へ続く橋の向こうから、兵員輸送用の流線型の青い車両が白いアーマーを着たゲネシス兵を乗せて八両ほど向かって来ている。このゲネシスの兵員輸送車は、反重力技術により走行している。陸だけで無く空には流線型のドロップシップが、一二機ほどの編隊を組んで向かって来ていた。


「おっと、こいつはやべえな。奴らは遺跡をガチで守りに来てるのか?」


「だが、打ち破れんほどではない」


 ラボールが、空に向けてフレアガンを撃った。フレアが青い煙を吐きながら宙に舞う。その三秒後、一二機のドロップシップの内の一機が、一つの光を放つ弾丸に撃ち抜かれ爆散した。マイヤーの能力により電磁加速された16.5×99mmの対物ライフルの弾丸である。


 彼女は、電気と磁気を意のままに操る事のできる覚醒者であった。ただの対物ライフルが、彼女の能力によって強力なレールガンに変貌する。だが、欠点として無理やりレールガンとして使っているため、銃身が著しく摩耗し銃身の寿命が本来のスペックより大幅に短くなるという欠点があった。


 大体、一〇発撃つと銃身が駄目になる。そのため彼女は、替えの銃身を八本携帯していた。


 マイヤーが一瞬息を止めスコープを覗き、約四キロ先にいる回避行動を取ったゲネシスのドロップシップを偏差射撃で的確に落としていく。


 ゲネシスのドロップシップが一機、二機、三機と爆散し、破片と中に乗っていた者の焦げた肉片を撒き散らしていく。


「……これで十機目。……そろそろ銃身交換しないと。……残り二機は……ラボール達が何とかするか」


 落ちるドロップを見たベッケルがワザとらしく歓声を上げていたが、残る二機のドロップシップからの指向性プラズマ攻撃を見るや否や、逆方向に走り出した。紫の光弾が降り注ぐ中、ラボールとベッケルが敵に背を向け逆方向に駆ける。


「やっべえ! ラボール! 後は頼んだ!」


「いや、流石に飛んでるのは俺でも無理だ。……マイヤーに任せるしかない。一先ず、崩れていない建物の陰に隠れるぞ」


 ラボールの指示を聞かず、一目散に逃げるベッケルの後を、ラボールが走って追う。直後、二筋の軌跡がゲネシスのドロップシップを撃ち抜き破壊した。


 それを見たベッケルが、マイヤーのいる崩れた建物の方向を向き下品に叫ぶ。


「マイヤー! 良くやってくれた! 帰ったらその大きな二つを按摩(マッサージ )してやるよ!」


 すると、その方角にある建物の窓からスコープが反射し、ベッケルの足元に弾丸が撃ち込まれた。

 マイヤーからの「ふざけるな、殺すぞ」との返答である。


マイヤーの対物ライフルはPzB40Kモチーフの架空銃

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