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第48話 合流 後編

 

 ラナリの体が貫かれようとしたその時――乾いた銃声が六発連続して響いた。陽炎の様な影は黒いアーマー着た灰色のゴリラのような醜い姿に変わり、赤い血を顔から吹き出し斃れた。


「……トオルから貰ったこれが役に立ったよ」


 地面にへたり込んでいるラナリの手には、マテバオートリボルバーのレプリカが握られていた。先ほどの六発の銃声は、ラナリが貫かれる直前に腰のホルスターから素早く抜き、そして撃った物だった。


「ああ、良かった……無事か」


 トオルは、ラナリの手を掴み立ち上がらせる。

二人が前進を再開する頃には、侵略者達の独特のガシュンと擬音が付きそうな銃声が止んでいた。


 目の前に人影が三人ほど向かって来る。一人はキューで、残り二人が重巡航級のクルーだろう。全身を覆う濃いブルーのフルボディアーマーを着た女性と、黒い長髪で緑眼、青生地に黒と赤のラインが両脇に入ったボディスーツを着たアンドロイドであった。


「あんたがトオル?」


 目の前の女性は、何故かトオルの名前を知っていた。


「トオル、この人と知り合い?」


 ラナリは、トオルの名前が出てきた事で彼女と知り合いだと思ったのだろう。


「いや、知り合いではないが……」


「トオル様、この方達はトオル様の宗谷丸を発見したようですよ。そこから情報を得たのでしょう」


 トオルはなるほどと唸った。同時に宗谷丸が無事であった事を喜んだ。


「あー……それなんだけどね……」女性が気まずそうに口ごもり、横に控えていたアンドロイドが代弁する。


「あなた様の宗谷丸はセーズ達を逃がす為に犠牲になりました。とても勇敢な最後でしたよ」


 トオルは「は?」といった顔をする。犠牲になった訳が分からないし、勇敢な最後だったという意味も分からない。


「わたし達が宗谷丸を見つけて曳航したんだけど……そのまま接収して、わたし達の物にしちゃったの」


 女性が「てへっ」とワザとらしくポーズを取る。トオルは、無性に殴りたくなる衝動に駆られた。


「……そのあと俺の船はどうなったんだ」


「先ほどの艦隊戦でナカジマが敵艦から逃げる為に盾にしました。でもご安心を。オート運転ですから」


 黒い長髪のアンドロイドから無慈悲な事実が告げられる。トオルの手元には宗谷丸を購入した時の莫大なローンだけが残った。やり切れない思いに駆られトオルは崩れ落ちる。


「トオル様、元気を出してください。後で彼女に請求すればいいのです」


「トオル、何が何だか分からないけど元気出して」


 キューとラナリの励ましの言葉がトオルの心を打つ。そんな姿を見かねたのか、ナカジマと呼ばれた女性が、ある提案をする。


「お詫びっていっちゃ何だけどさ。あんたの改竄された記憶を元に戻すってのはどうよ?」


「ナカジマ……それは要らぬ火種を撒くような物では?」


 トオルには、改竄された記憶とやらが理解できない。それが事実なのか、何が改竄されているのか、いつ改竄されたのかも分からず、「はぁ?」となるしか無かった。


「言ってる意味が分からないんだが」


「トオル様、この人達の言っている事に耳を貸さないでください」


 キューが、トオルの前に出てブレードをナカジマ達に向ける。そんな一触即発な状況に、ラナリがおろおろとし始めた。


「ナカジマ、目の前のアンドロイドが敵対行為を示していますが……」


「ありゃ、セーズの言った通り要らぬ火種だったか」


「キュー、武器を降ろせ」


 キューがトオルの命令に従い、ブレードを尺骨に格納する。


「俺の改竄された記憶がってのが良く分からんが、悪いと思ってるなら残ってる宗谷丸のローンを肩代わりで許してやる」


 トオルの対案にナカジマが苦笑いで答える。


「ナカジマ、敵のドロップシップが一機、向かってきているようですよ」


 トオル達は、セーズの見ている方向を向く。流線型のドロップシップが向かって来ているのが木々の間から見えた。そして、下部に備え付けられた砲塔をこちらに向けている。


「おい……不味いぞ。ラナリ! 頼む!」


 トオルが後ずさり叫んだ直後、紫の光弾が連続して降り注いだ。その光弾は、木を蒸発させ大地を焼いた。トオル達の周りが火の海になるのに、そう時間は掛からなかった。


 ラナリのフォースフィールドによってトオル達は守られるが酸素が薄くなっているのが分かる。これでは、そのうちラナリが酸欠で倒れるだろう。それは、トオル達が敵からの攻撃に無防備になる事を意味していた。


「トオル様、このままでは……」


「ラナリ、ちょっとすまん……!」


 トオルは、ラナリを肩の上に担ぎ上げて一気に駆け抜ける。ラナリがトオルに対して少しだけ批難をしたが、煙に咽こみ口をハンカチで覆い黙った。


「トオル様! 敵が八体、二時の方向から来ます!」


 キューが敵を発見し白いアーマーを着た敵の方向へ走る。だが、キューよりも速く突風のように駆ける者がいた。黒い長髪を靡かせ敵に向け疾駆するセーズであった。


「ここはセーズにお任せを。あなた様方はナカジマと共に森を抜けてください」


 セーズが、敵の前に躍り出て両手の指の間に挟んでいた、大口径ライフル弾のような物を放り投げる。すると、放り投げられたその弾丸の雷管が自動で点火され、あらぬ方向に弾頭が発射されたかと思うと直角に方向転換し、それぞれの敵を追尾した後、その頭部を貫いていった。ほんの一、二秒で八つの頭から血を噴き出して地面に転がり死体になった。


 まるで仕事人のようなセーズの働きにトオルが感嘆の声を上げる。そして、トオル達は燃えさかる森を抜け道路へと出た。敵のドロップシップは、追撃を諦めたのか反転し飛び去って行く。


「これからどうすんだ?」


「わたし達のエイトフラッグ号に、ビークルを要請したからもう来るはずよ」


「……トオル、そろそろ降ろして」


 トオルは、ラナリの事をまだ担いでいる事に気が付くと「あ、すまん」と小さく謝罪し彼女を降ろした。ラナリが、少しふてくされてそっぽを向いた。


 そんなやり取りをしていたトオル達の耳に、大きなローター音が聞こえ上を向くとティルトローターのガンシップがホバリングしていた。


「さて、これで足は出来たわね」


「待ってくれ。これからどこへ行くんだ?」


「さあ? 一度、戦闘が起きていない場所まで退避したいけど……」


「それでしたらナカジマ様。第一帝国技術研究所へ行ってください。そこでスレクト様の救援をしなければなりません」


 ナカジマが道案内をしてくれるならと頷き、トオル達はガンシップに乗り込んだ。


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