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第33話 トオルの過去 中編その3


「ベネット伍長! 止まれ! 一〇時の方向、屋根の上! 敵のアンドロイドだ!」


 その敵アンドロイドは、長い金髪と碧眼だった。女性型特有の艶かしさがあり、金髪が光に反射し妖しく光を帯びていた。

 

 その敵は、たったの一体だけだがトオルの背筋に悪寒が走るほどの嫌な予感がした。


 ……こいつはヤバい。


 エリックが叫び、エコーチームとアルファ分隊が敵アンドロイドに対し集中砲火を浴びせ、アンドロイド四体が接近戦を仕掛ける。


 しかし敵アンドロイドは、その全ての弾丸を避けながら、アルファ分隊のアンドロイド二体を瞬く間に両腕のブレードで両断した。疾風の如き速さだった。HUDが無ければ既に見失っていただろう。


「トオル! このままじゃ……!」弾丸が当たらない事にセイが焦り始める。


 他のエコーチームの面々にも焦りの色が見え始めていた。


 さらに敵アンドロイドは、すれ違いざまにアルファ分隊のアンドロイド二体に対して、円形の機械を取り付けた。

 その円形の機械を取り付けられたアンドロイド達は、動きが止まり、棒立ちになる。


 それを見届けると、敵アンドロイドは屋上から外へ飛び降り、この場から撤退した。


「二〇号機! 大丈夫か!?」


 二〇号機は彼のお気に入りなのだろう、ベネット伍長が大声で呼びかける。

 だが、二〇号機ともう一体のアンドロイド、二二号機の様子が変だ。


「おい、トオル。敵が逃げちまったみたいだけど……助かったって事か?」


 ギルは、敵アンドロイドが撤退した事に対して安堵していた。アルファ分隊にも安堵の空気が流れているが……トオルには、敵が何故撤退したのか疑問が残る。


「いや、まだ安心するのは早いぞ。エコーチーム、二〇号機と二二号機から距離を取れ」

 

 エコーチームは、二〇号機と二二号機から距離を取り様子を伺う。


「二〇号機! 大丈夫か!? 早く降りて来い!」


 ベネット伍長がアンドロイドに命令する。二〇号機と二二号機は、屋上から二階広間へ降り立ち、こちらを向くが、ずっと俯いたままだ。ひどく不気味な様子であった。


 ベネット伍長が、損傷の程度を確認しようと二〇号機に接近する。


「二〇号機どうした? 今、直してや――」


 ベネット伍長が二〇号機に触れた瞬間、彼の首が飛んだ。

 彼は愛する二〇号機のブレードによって、首を飛ばされたのだ。


 その場にいた者達は、ベネット伍長の首が地に落ちるまで、時間が止まる感覚を覚えた。朱に染まった首が転がった瞬間、二〇号機と二二号機は左右に散開した。


「……ハッキングしやがった! エコーチーム撃て!」


 トオルは射撃指示を飛ばし、エコーチームがハッキングされたアンドロイドを撃つ。

 

 アンドロイド達が銃弾を躱し、ブレードで弾き、分隊員の首を飛ばしていく。

 アルファ分隊は、一人、また一人と血飛沫を上げながら斃れる。


 ……このままでは、アルファ分隊は全滅する。


 トオルとギルはアルファ分隊の二班を襲う二二号機に狙いを定める。セイとブライは二〇号機を狙うために移動した。


 二二号機が二班を全滅させた直後、赤毛の女性分隊員に襲い掛かった。


「ギル! 二二号機に突っ込め!」


「ちくしょうめ! やってやらぁ!」


 トオルはギルに突撃指示を出すと、二二号機に自動小銃で銃弾の雨を浴びせる。

 弾倉が空になるまで撃ち切っても、案の定、銃弾は全てブレードで弾かれるか、避けられてしまった。


 だが女性分隊員が殺される前に、こちらに気を引く事が出来た。

 

 すかさず、ギルが自動小銃を半自動式散弾銃セミオートショットガンに素早く持ち替え、吠えながら突撃する。


「どぁりゃああぁ!」


 ギルが敵アンドロイドの至近に達し、散弾銃を撃ちまくる。二二号機の右腕が関節からごっそりと飛び、左足首が飛び、地に叩きつけられた。そして、転倒した二二号機の頭部に数発撃ち込んで完全に破壊した。


 トオルは、二〇号機と戦っているセイ達を援護するため、ポジションを変える。


「……っ! このアンドロイド!」


 セイが二〇号機相手に苦戦している。セイは、二〇号機の両腕のブレードを紙一重で避け続けているが、反撃に転じる事が出来ないでいた。


「セイ! 援護する!」


 トオルは二〇号機に対して射撃する。空になった弾倉を交換し、射撃を再開する。


「おい、ブライしっかりしろ! 今止血してやるからな!」ギルが怒鳴るようにブライに声を掛ける。


 右腕を負傷したブライが、壁にもたれ掛かっている。

 ギルがブライの応急処置をする。ブライの傷は深い。

 トオル達が、二二号機に気を取られている間に、ブライは、二〇号機によって右腕に深手を負わされていた。壁にもたれ掛かっている、ブライの真下が血で染まっている。


 ……ブライが負傷した? 不味いことになった。


 二〇号機は他のより性能が高いのか……? だとしたらセイも危ない。


「こっちだ! 二〇号機! こっちに来い!」


 二〇号機がセイに対する攻撃を中断し、トオルの方へ向かって来た。

 注意を逸らす事は出来たが……アンドロイドとタイマンなんてどうすりゃいいんだ……!


 トオルの銃撃を横へ、いなしながら二〇号機は間合いを詰め鉄拳を繰り出す。

 トオルは避けるも二〇号機の鉄拳により床が穿かれた。

 

 よく見ると、二〇号機の右腕のブレードが折れている。

 射撃に優れたブライが負傷する前に一矢報いたのだろう。


 ……ブライよくやってくれた。


 トオルはブライに感謝した。


 片方のブレードだけなら、何とかなる。勝機はある。

  

 トオルは距離を取るが、二〇号機が近接格闘の距離を保持したまま切り込んでくる。これでは援護を貰えない。


 だが、二〇号機がこのような戦い方をするならば――


 自動小銃を放り投げたトオルは二〇号機の斬撃を、右手で相手の左腕を掴む事により止める。そして、一時の間も置かず、足払して二〇号機横転させた。

 そして機会を逃さず、仰向けに転倒した二〇号機の顔面を右拳で殴り追撃する。

 強化戦闘服のパワーアシストがあれば単純な打撃でも破壊力は高い。


 顔面を破壊された二〇号機が動きを止めた。


「トオル……倒せた?」セイがマテバオートリボルバーを手に駆け寄る。


「ああ、なんとかな……」


 トオルは自動小銃を拾いセイに近づく。ブライの傷も心配だ。


「セイ、ブライの傷は――」トオルが言いかけた所でセイに「伏せて!」と命令される。


 トオルは思わず伏せる、直後にセイが発砲した。


 トオルが振り返ると、顔面が吹き飛んだ二〇号機がブレードを振りかぶった状態で、仁王立ちしていた。


「トオル、大丈夫?」セイがトオルを助け起こす。


 二〇号機がまだ生きていたとは、危なかった。


「やっぱり幸運の銃だな、それは」


「そうでしょ? でも、今はブライのところへ行かないと」


 トオルとセイはブライへ駆け寄ると、傷の程度を確認した。

 ギルのジェル状止血剤を使用した、適切な処置で止血は出来ている。

 それでも、この傷の深さでは……恐らくは腕の神経まで損傷している。

 

「ブライ、腕は動くか?」


「ごめん、トオル。右腕は指も動かせそうにないや……」


「ちくしょう!」とギルが血に濡れた床を殴る。


 ブライとギルは幼馴染で昔から一緒にいる。だからこそ、ギルの無念も分かる。

 

 トオルは、アルファ分隊達の血で真っ赤に濡れた広間を見渡す。

 切断された生首と胴体が転がっている広間は吐き気がした。


「アルファ分隊の生き残りは? エリックは生きているのか!?」


 トオルが、エリックを大声で呼ぶ。

 すると陰から足を負傷したエリックが、赤毛の女性分隊員の肩を借り、物陰から姿を現した。


「生き残っているのは、オレと上等兵のケイトだけだ」


 一三名いたアルファ分隊が、今ではたったの二人だけだ。

 たった一体の敵アンドロイドが、アルファ分隊のアンドロイドをハッキングし、トオル達を追い詰めた。これで作戦続行など出来るはずもない。


「エコーチームは、アルファ分隊と共にザフタ地区から撤退する。セイ、司令部に連絡をしてくれ」


 この時のトオルの判断は適切だっただろう。


 けれども、この戦場は、いやアカフという男は易々と獲物を逃しはしなかった。


 この戦闘区域から撤退をするべく、エコチームとアルファ分隊は宮殿から出た。

 宮殿から出ると、市街地中央にある礼拝堂の方角からミサイルが上がるのが見えた。


 そして――そのミサイルは高高度核爆発を引き起こした。


 EMP攻撃である。


 エコーチームの強化戦闘服が、EMP攻撃によってショートを起こし地に突っ伏した。


 さらに脳内のラーニングチップの誤作動で、エコーチームは気絶する。


 意識が朦朧とするエコーチームの眼前には、右側頭部の角が無いカディア族の男アカフと、金髪碧眼のアンドロイドがトオル達を見下ろしていた。


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