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第31話 トオルの過去 中編その1

 

 トオル達を乗せたドロップシップはカルセムの大気圏へ突入していく。

 大気圏突入中に、司令官から作戦説明を受ける。


「エコーチームには、海兵隊と連携してアカフ=カターディンの殺害をしてもらう。降下地点はマトール州だ。アカフというカディア族の男は右側頭部の角が無い。よって、容易に見分けが付くはずだ。奴は今回のテロ攻撃を企てた幹部の一人、必ず殺せ。作戦完了後の帰投ポイントは各自のHUDに表示される。確認を怠るな」


 エコーチーム各自のHUDに作戦内容、マトール州の地図、アカフの容姿、連携する海兵隊のデータ、帰投ポイントなどが表示される。


「皆、作戦データを確認したな? チームリーダーの俺に従ってもらう。……異存はないよな?」


「トオルがチームリーダーだなんてな。てっきり、セイさんかと俺は思ってたぜ」


「ねえ、なんで僕達がこんな任務をするんだろ? 特殊部隊が行う案件じゃ……」


「……ブライ、テロで即応可能な特殊部隊は全滅したのよ。あの時、特殊部隊を乗せた艦艇は沈んだから」

 

 ブライの疑問は至極真っ当だ。本来は特殊部隊が行う案件である。だが、セイの説明した事も事実であった。そして、その穴埋めとしてトップクラスの成績の班が選ばれたのだ。

 

 ……最高にクソッタレだな。


 トオルは心中で悪態を付きながら、強化戦闘服のチェックと装備の確認をする。

 長方形の自動小銃、自動拳銃の不具合は無い。強化戦闘服の耐衝撃材も異常なし。


 他のメンバーも同様にチェックを行っている。その中で、ブライが振るえる手で選抜狙撃銃(マークスマンライフル)をチェックしていた。選抜射手のブライがこれでは、生き残れる気がしない。


 トオルはブライの両手を持ち、ヘルメットをこつんと当て鼓舞する。


「いいか、ブライ。この中じゃお前が一番、射撃の腕がいい。お前の一発が俺達を救うんだ。気をしっかり持ってくれ」


「ごめん、トオル。実戦だと思うと怖くて……でも、大丈夫。僕はやるよ」


 ああ、そうだ。頼んだぞブライ。


 ドロップシップがマトール州の上空、約一〇〇メートルに到達した。ドロップシップは上空をホバリングし、徐々に高度を八〇メートルほどまで下げてエコーチームの降下に備える。


「こんな高けえ所から落ちるのかよ!」自動小銃と半自動式散弾銃セミオートショットガンを背中に背負ったギルが尻込みする。


 そんなギルの尻込みなんぞ知ったことかと、機内のランプが青色に点灯した。

 

「さあ行くぞエコーチーム! 降下! 降下!」


 そして、トオルが合図と共にエコーチームは大空へダイブした。


 高速で地上が迫り来る。


 全身を高度に強化外骨格化した強化戦闘服着用時での降下は、ラぺリングや落下傘による降下ではない。短時間で地上に兵士を送り込む。それは降下というより落下と言ったほうが正しいだろう。


 エコーチームは約八〇メートルの高さから作戦区域の荒野に着地した。着地の衝撃で耐衝撃ジェルが高熱になると、強化戦闘服は即座に冷却装置を作動させた。

 

 だが強化戦闘服が、上空一〇〇メートル以内の落下の衝撃を吸収できる強化戦闘服であっても、着地の瞬間は耐衝撃ジェルが熱くなる。自動で冷却装置を作動させ、湯気が立ち込めた。

 

「あっちいい!」


 着地の衝撃で熱された強化戦闘服の高温にギルが吠え、中腰で踏ん張った。


「ギル、静かに。既に僕達は作戦区域内だよ」


 あれだけ震えていたブライも、いつも通りの冷静さを取り戻している。

 トオルはブライが平静に戻った事を確認すると、セイに定時連絡の指示を出す。


「海兵隊の司令部アルマに定時連絡を行う。間隔は二時間置きだ。セイ、最初の定時連絡を頼む」


「了解。最初の定時連絡を行う。……司令部、こちらエコーチーム、目標地点へ降下した。予定通り海兵隊との合流ポイントへ向かう」


 ――了解。こちらアルマ、通信感度は良好。エコーチームそのまま進め――


 海兵隊との合流ポイントは、ここから二六キロ先にある三階建ての廃墟だ。

 エコーチームは、合流ポイントを目指し風が吹きすさぶ荒野を進んでいく。


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