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第29話 トオルの過去 前編その1


 遺跡探索からアルバの宿屋へ帰還した日の夜。

 

 皆が寝静まった深夜、キューはスレクトの部屋を訪ねた。誰にも知られずに話さねばならない事があった。キューは静かに明かりの消えた暗い廊下を進み、スレクトの部屋をノックする。


「スレクト様いらっしゃいますか?」


 スレクトが静かに扉を開ける。

 ノックの音に慌てて起きたのだろう、シャツ一枚を着ていただけだった。


「……アンドロイドか。何の用だ?」


「あなた方、ズーニッツ帝国にとって有用な情報をお持ちしました」


「有用な情報だって? お前達は何者なんだ? ワタシはお前達と最初に会った時は、ただの民間人だと感じたが、遺跡探索の時は一人前の兵士のようだったぞ」


「お前達は何者だ?」スレクトはもう一度尋ねる。


「その事についてもお話します」


 キューがゆっくりとまぶたを閉じる。そして、まぶたを開けると語り始めた。


「まずは、太陽系連合政府の目的を説明します。政府は軍を投入してこの惑星を調査する計画を進めています。目的は、この惑星の利権の確保。政府と対等に渡り合える文明が存在しない場合は、武力で征服するつもりでした」


 確かに帝国にとって有用な情報だ。我々にとって人類がこの惑星に来るというのは、既定路線である。帝国はこれを待っていたのだ。帝国は人類と対等な立場になるための準備も行っている。


「人類が来るのはいつか分かるか?」


「残念ながら、いつになるかまでは……この惑星は定期的に別の次元へ隠されてしまうので、キューが残した記録映像を政府が発見したとしても予測はできません」


 この惑星は、定期的に周りの太陽や月ごと別の次元へと消える。今も別の次元にあるのだろう。


 だが、その問題はスレクトが解決していた。


「それは問題ない。先日破壊した旧文明の黒い装置こそが、この惑星を別の次元へ隠す装置だ。今頃は普通の惑星のように、誰からも発見できる状態になっているだろう」


「なるほど、それならば長くて半年後までには軍を惑星軌道上に集結させるでしょう」


 半年後……やはり人類の文明は星間移動を容易く行えるレベルにまで達している。これならば、奴らと対等に渡り合える。


「分かった。明日、帝国政府にこの情報を伝えよう。……それでお前達の任務はなんだ?」


「……トオル様の任務は、自らを政府の介入の口実にすることです。それは様々な要因を加味した結果、孤立無援になり死ぬ確率が高かった。そして、運よくこの惑星の人々と接触できたとしても、孤立した軍人では人々と軋轢を生みかねない、だからトオル様が選ばれたのです」


 キューのいうように孤立した軍人は武器を持った異星人に敵意を向けられた瞬間、機械的に処理をしてしまうだろう。そのように訓練されているのだから当然だ。しかし、対象を機械的に処理した結果、人類とその種族の間に軋轢が生まれる。


「それに、この見えない惑星のある宙域は、何者かによって守られていますから。軍を送った瞬間に、正体不明の種族に攻撃されかねません」


「攻撃される確率が高いから、司令部ごと部隊を送る真似はしなかったのだな。そして民間人が惑星に不時着したとあれば救出を目的とした介入ができる、か」


「だが、トオルは何者だ?」トオルは見事に四脚の守護者を破壊して見せた。ただの民間人とは思えない。


「……トオル様は、ステーション・タウの連合政府士官学校の学生でした。ですが、トオル様が十九歳の時、カディア族によってステーション・タウの一つがテロに遭いました」


 キューは目を閉じ静かに語る。


「そして、テロから一月後に政府はカディア族に対し報復戦争を決定。ステーション・タウ士官学校の訓練期間を二年七か月で切り上げ、トオル様達を戦地へと送り込みました」


 テロか……帝国もボル族のテロ被害に度々遭っている。どこも似たようなものなのか。


「それで、トオルはどうなった?」


「トオル様の第七〇二降下部隊のエコーチームは難度の高い任務に赴いた結果、トオル様を残して全滅し、トオル様だけが生き残りました」


 やはり、軍人だったか。降下部隊とはエリートなのだろう。


「あいつは優秀だったんだな。本人も誇りに思っている事だろう」


「いいえ、スレクト様、それは違います。トオル様は生き残りはしましたが精神に異常を来してしまったのです。そして記憶を消され改竄され、政府の駒としてここにいるのです」


「ふむ。トオルがどんな経験をしたのか、教えてもらってもいいか?」


 スレクトはトオルという男に興味が湧いた。この数奇な生き方をしているトオルのことをもっと知りたい。そんな個人的な興味だった。


「……分かりました。正直に言いますと、キューも誰かに話さねば辛いのです。メモリーログの中の彼女が、キューの人格プログラムに影響を及ぼしていますから」


 そして、キューはトオルのメモリーログの内容を語り始めた。


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