第26話 帝国の謎
トオル達はロネの街へ帰還した。色々とあってどっと疲れが出る。
ここの住民は、近くにあんな遺跡がある事を知ったらどんな反応をするだろうか。
しかも、スレクトの話ではこの大陸にはもう一つあるらしい。
「これが今日の報酬だ」
スレクトは、三人に金貨が二〇枚ずつ入った袋を渡した。
「こんなに貰えるの?」ラナリが目を丸くしている。
この国の金貨は、銀貨二〇枚分だったか。
「十か月はこの国で生活できる金額ですね」
……そんな価値があるのか。
スレクトは、どこからそんな金を持ってきたんだ。
やはり、後ろにスレクトの国でも絡んでるのか?
「どうだ。今回の依頼、悪い話では無かっただろう?」
「ああ、まあな」
スレクトの所属しているズーニッツ帝国は、アネス大陸のアネシア海峡を隔てた先にある、ヴァイツ族の国だ。この国は近代的な軍と文明を持ち、複数の氏族がいる軍事大国である。
彼らは産業革命も経験済みで、ホプリス族と比べると二世紀は文明が進んでいる。
同じ惑星にここまで文明レベルが異なる事など聞いた試しがない。……帝国の成長速度が異常だ。
「我々の帝国に来るのはどうだ? 宇宙に帰れるチャンスが訪れるまで、帝国での生活を保障してやってもいい」
スレクトの提案に、トオルは直ぐには答えを出せなかった。
彼女の提案はトオルにとってメリットはある。生活を保障するってのも魅力的だ。
だが、スレクトはなにか重大な事を隠している気がする。
それも、一個人だけの問題では収まらない何かを。
「悪いが、考える時間が欲しい。キューもそれでいいよな?」
「はい。あの遺跡の文明は、何か得体の知れないものを感じました。キューの電脳で理解できない言語もそうですが、トオル様とラナリが触れた、あの"十字架のようなもの"は特に」
あの時"十字架のようなもの"に触れたラナリに飛びついた瞬間、トオルは気絶した。
しかし、気絶しているときの記憶が思い出せない。
記憶に、もやが掛かっているように感じたが、記憶自体がロックされたようにも思える。記憶自体が全く思い出せないので、大事な記憶なのか、どうでもいい記憶だったのかすら判断がつかない。
「じゃあ、私達は戻ろうか」
「そうですね、ラナリ。トオル様も無駄な事を考えていないで宿屋へ戻りましょう」
「ワタシも、しばらくはアルバの宿屋に泊まることにしよう。そのほうが都合がいい」
「……まじかよ」俺達の監視か……
アルバ的には収入が増えるので喜ぶだろうが、スレクトが三人の監視をするためとしか思えない。
スレクトにとって、都合がいいとはそういう事だろう。
余程、聖遺物と呼んでいた"十字架のようなもの"は重要という事か。
トオルは、なんとなくスレクトがまた厄介事を持ってくるような気がした。
そして、監視が付くことに鬱屈とした感情を抱きながら、アルバの宿屋へと戻るのである。




