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第18話 ラナリの決意、トオルの決意

 

 アルバの宿屋に帰還したトオルは、自室のベッドに座り、これからの身の振り方を長いこと考えていた。思考の袋小路に入ってしまったトオルは欝々としている。火のついてない燭台が、今のトオルのように萎れていた。

 

 トオルは、ここで働くことも考えたが下男の仕事しかない。

 

 あとは害獣駆除の仕事だが、領主が奨励しているとはいえ、報奨金は矢弾代しか出ないとのことだ。

 当然、彼らの常識の外である7.62mm弾のような弾代は出るはずもない。

 よって、先ほどの害獣駆除は収入にはならない。

 

「……どうしたものかな」


「トオル、入ってもいいかな?」ノックと共にラナリの声が聞こえる。


「どうぞ」


 トオルはまさかの来訪者に少し体が強張った。生まれてから女子を部屋に入れた記憶などが無かったからだ。


 ラナリがベッドに座っているトオルの横に腰掛ける。彼女の綺麗な薄紫の長髪が、一歩遅れて柔らかく背中に舞い、柔らかな優しい匂いがした。そして彼女は、トオルにポツポツと語りかけた。


「さっき、キューから聞いたんだ。トオル達が家に帰りたくても帰れないって」


「まあ、そうなってしまったな」トオルにとって、帰れないという事実は真に遺憾であった。


「私は、トオル達が帰れないって聞くまでトオル達がここにやって来たことを、ただ楽しんでただけだった」


 トオルは、事実としてラナリがこちらの置かれている状況を深刻に考えて無かったのは、薄々と感じていた。しかし、彼女にとってトオル達は異邦人であり、赤の他人であるのだから気にする必要は無い。


 なぜなら、赤の他人のアクシデントに対して、それを助ける義務を感じる必要はどこにもないし、助けずに見て見ぬ振りをするのが常人の思考である。

 

 だが、ラナリは常人の思考とは違った。そう、違っていたのだ。それも優しい方向に。

 

「でも、今は違う。私はトオル達に協力したいって思ってる。この国に永住するにしても、家に帰る手段を探すにしても、私は絶対に協力するから」

 

 トオルは、ラナリの力になるという言葉が唯々嬉しく、鬱屈としていた気持ちが雪のように溶けていく。トオルの曇り顔に日が差した。


「……少し気持ちが楽になったよ」


「だから、何かあったら何でも言ってね」

 

 ラナリの笑顔はとても暖かった。


「あー、ラナリ」


 部屋から出ていくラナリを呼び止める。


「えっと、ありがとうな」


 ラナリは、振り返りながら優しく頷く。


 トオルはラナリが一階に降りた後、今後の身の振り方をキューと話し合う為に階段を下り、裏手にある納屋へと向かった。

 納屋に向かうトオルの足取りは軽やかであった。

 

 例え天文学的な確率だとしても絶対に脱出する方法を見つけてやると、トオルはそんな決意を胸に納屋の扉を開ける。


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