プロローグ・5
悪魔デルの物語です。
気づいたときには、もう両親はいなかった。
両親について覚えていることもほとんどなく、生きているのかどうかさえもわからない。
「僕の親って本当にいるのかな?」
作業中につい独り言が出てしまった。
周りを見回してみるとみんな作業中のようで僕の独り言に気づいた人はいなそうだった。
とりあえず、気を取り直して作業に戻ることにしたがここ最近作業に力が入らなかった。
「はあ~~~」
「どうしたの?そんな溜息なんかついて。」
「工場長!!いえ、なんでもありません。」
「そう?でも最近デル君なんか作業に集中していない感じなんだよね。」
「とんでもないです!!もう、作業が楽しくてしょうがないですよ!!」
「本当?」
「ええ!!本当ですとも!!」
「ならいいんだけど。これからも頑張ってね。」
「はい!!」
よし、上手く誤魔化せた。
最近作業に飽きてきたなんて言えないからね。
ピンポンパンポン
「今日の作業はこれでおしまいです。後片付けをして気をつけてお帰りください。」
もう終わりか。
ご飯買いに行かないと。
「デル君。今日の帰りご飯でも食べにいかないかい?」
「折角のお誘いですが、今日は遠慮しておきます。」
「そうかい。じゃあまた今度ご飯食べに行こうね。」
「機会がありましたら。」
また、ご飯に誘われたよ。
大人の人たちと一緒にご飯食べてもつまらないから行きたくないんだよね。
「ただいま。」
まあ、僕一人しかいないから誰も返事しないんだけどね。
もう流石に慣れたけどね。
でもいつお父さんとお母さんが帰ってくるかわからないからね。
「お腹すいたし、買ってきたご飯食べないとね。」
レンジで温めるだけでご飯作れるなんて子どもの僕にはありがたいご飯だよね。
味はイマイチだけど。
チン
「いただきます。」
うん。美味しくない。
決してまずくはないけど絶対に美味しくはないよね。
いつか天使たちのエンゲルランディスに行って美味しいご飯食べてみたいな。
「大人の人たちはよくこんなご飯を食べに行くよな。自分で作っても同じなのに。」
そういえば、僕はお母さんのご飯を食べたことあるんだろうか。
子どもの僕が言うのも変だけど、物心ついた時には両親ともいなかったからな。
そんな僕を雇ってくれた工場長って実はすごいいい人なのかな。
でもたしか子どもだからって大人の人たちよりも給料少なかった気がするからそうでもないのかな?
「まあ、どっちでもいいか。今は特にお金が欲しいってわけでもないし。」
明日も作業があるから、早く寝るかな。
「おやすみなさい。」
デルのプロローグももう少し続きます。