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我ら、現世に介入し隊  作者: 雅寿
2/2

忍の言い分

「……言い訳、って言うかさ。別に俺そんな悪いことした覚えないんだけど」


 忍の末裔、その名を凛成(りんせい)


 凛成は正した姿勢のまま、上にある僧侶の青年・玲紀(れいき)の顔を見上げる。本人にその気はないのだろうが彼の眼光はなにもしないでも鋭いところがあり、目を合わせている玲紀は若干居心地が悪そうに整った眉根を寄せた。


「悪いことしてない人を叱るような真似は致しません。自分がしたことを自覚しないというのは、それこそ本当にタチが悪いですよ」

「性根が腐ってるって言いたいのかな?」

「そこまで言っていないでしょう。と言うか、人の(いえ)の屋根に上がっておいてなにが『悪いことした覚えない』ですか。それ充分悪いことですからね」


 玲紀の言い分から察せられるように、凛成はその身軽さを悪い方へと活用してしまったのである。


 まったくと息をつく玲紀の姿にむっと唇を尖らせる。少し身を乗り出し、凛成はくわりとその犬歯を剥いた。


「だって今まで上ってても怒らなかったじゃない!」

「屋根の上って滅多に気にするところじゃありませんから。大体貴方忍でしょう、あんな風に気配消されてたらそりゃあよっぽどのことじゃない限り気づきませんよ……と言うよりも今までも上ってたんですね」

「あーもーなんで俺あの時調子こいて君に手ぇ振っちゃったんだろうね……ってか高いところに上りたがるのは忍の本能なんだもん!」

「貴方の言う『忍』とは一体なんなのですか。いえ、寺の屋根に上る、つまりは御仏(みほとけ)をその足の下に敷く行為……忍なれども許されることではありません。常識として頭に入れておくべきことです」

「いやだって本能……」

「あ゛?」

「ちょっと君キャラ守ろうよ」


 もういいですと玲紀は凛成から視線を外す。その視線が流れ、次にたどり着いたのは小柄な少年。


 彼は侍の末裔、その名を将臣(まさおみ)


 将臣は一瞬遅れて視線がこちらに向いていることに気づき、それからびくりと肩を震わせた。涙目になりながらあたふた忙しなく両手を動かす。観察すればよく分かる、彼は正に『見ていて飽きない奴』である。


「せ、拙者は、その、その……お、同じ歳の凛成殿を留めることもできず、そのまま共に……不甲斐ない限りであって、その……腹を切れば解決すると思うのだ!」

「わおいきなり内容が重いね! でもそれってもしかしなくても俺も腹切り待ったなしだよね!」

「と、共に責任を分かち合おうぞ……同胞よ!!」

「ごめん、俺根っからの体育会系で古文とか全然ダメだったから……辞世の句とか書けないわ」

「今からでも勉強し直せば間に合うでござる」

「いやもうその文化廃れてるので止めてください」


 なんともキャラクターの濃い会話続きだったので一旦ここで説明を入れることにする。


 見た目年齢には多少のバラつきがあるものの、彼らは全員同い年の大学生である。将臣に至っては一回りも二回りも年下に見える童顔ではあるが、同い年である。いわゆる見た目詐欺ってやつだね。年齢詐称なわけじゃなし。


 それから現代に溶け込んだ凛成とは違い、将臣は何故か一人称『拙者』のござる口調、通称『ござラー』のままで現代社会を生きているのである。

※本来『ござラー』という言葉は存在せず、これは凛成が勝手につけたものです

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