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我ら、現世に介入し隊  作者: 雅寿
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プロローグは忘れ去られた

 古より、日の本という国にて戦ってきた二種の戦士。戦場にてその晒した抜き身を振るい華々しく駆け抜けるただひたすらに真っ直ぐなる者『侍』と、死角というものを完璧に熟知し、しなやかな身のこなしで情報収集などの後方支援、又は暗殺など幅広い分野にて暗躍する影『忍』。

一人の主に忠誠を尽くす面では共通する二者ではあるが、やはり手段を選ぶ者選ばない者同士なだけあって決してゼロにならない距離というものがあるのだろう。イメージ的にも、この二者の仲はさほど良いようには思えない。しかしこの二者を上手く率い、まとめあげることができればそれこそ天下も夢ではない―――代表的なのが『徳川家康』、その人物だ。


 そしてその二者は、はるか昔に滅んだ、ように思われていた。群雄割拠の戦国時代をピークに、泰平の世が訪れ、武力を欲する『主』が滅んだと同時に。『侍の心を受け継ぐ』、『忍者のような身のこなし』というものはあくまで比喩であり、まがい物に他ならない。本物というものは時を重ねるごとに一人、また一人と数を減らしていくのだ。


 しかし先に言ったように、二者は『滅んだように思われていた』のである。若干姿形や本質を変え、その業を受け継ぐ本物は未だ滅んではいない。




「……で、言い訳は終わりましたか?」


 決して声を荒げず、しかし彼は静かなる威圧で二人を押し潰す。切れ長の目に通った鼻筋、男のそれとはとても思えぬ絹のような美しい髪。袈裟で身を包んだ彼はどうやら僧侶のようで、成人男性らしい低く重みのある声の持ち主だ。


 そして、その僧侶の青年の前にきちんと正座させられている二名。


 僧侶の青年に向かって右側に座るのは小柄な少年。青年に叱られ項垂れている様子がまた幼く、絵に描いたかのような『反省してます』な顔が、第三者の視点から見ればいささか滑稽である。


 それから、左側に座るのは小麦色の肌をした青年だ。無造作に掻き揚げられた烏羽色の短髪に口元から覗く犬歯、涼やかな目元の真ん中にある深い色の瞳がいかにもな野生感を漂わせている。隣の少年同様に背筋をピンと伸ばして正座しているものの、その表情からは反省の色など欠片も見られず、至ってケロリとしていた。


 結論から言うと、この座らされている二名がそれぞれ、侍・忍の末裔である。つまりはかつて相反しなかった両者が、現在仲良く一人の僧侶の青年に説教を食らっているという、滑稽に滑稽を重ねた滑稽の二乗なる画となっているのである。

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