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アルカナ ゲール~英雄の戦い~  作者: カルラ


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第一話 狂気と栄光と 3

 英雄同士の熱い死闘。

 それはほんの数十分前まで続いていた紛れも無い事実。

 しかし、それも過去のことだ。

 マリアは拠点である部屋に置いてあるソファに座りながら、迎えに座るローランを眺めていた。

「……ねえローラン。貴方英雄よね。伝説にもなった史上最強の……ね。それが……ああもう、何だってこんな事に!」

 ローランは無言だった。

 ただその両の拳は出血するほどに強く握り締められていた。

 そのローランの様子にマリアは更に苛立ちながら、赤ワインを口に含む。

 そして右手へと目を向ける。

 その五指のうち小指以外の四つの指にはコンダクターリングが嵌められている。

 数分前までは全ての指にあったのだが、今は四つ。

 その事実がマリアをいらだたせる原因だった。

 話は数十分前に遡る。


 完全に勝負はついていた。

 ローランのバランスは完全に崩され、次のストレングスの一撃を回避する術は無い。

 そしてその一撃は確実にローランの首を断つ、勝負を確定させる一撃となる。

 それは、マリア・ローレンツのソルシエル・ゲール敗退をも確定させることになる。

―ローラン! コンダクターリングを持って命じる! ワタクシを連れて離脱しなさい!―

 咄嗟のことだ。

 マリアはただただ必死でコンダクターリングを使用した。

 五回した使用出来ない、絶対的な指令権。

 その一つをマリアは純粋な撤退へと使用した。

 一撃必殺で使う予定だったマリアからすると、不本意で屈辱的な使用方法だ。

 しかしそれは非常に強い効果を生んだ。

 完全に決まるはずの一撃。

 しかしそれを異常な速度でローランは回避した。

 光速に限りなく迫った、超高速での回避行動。

 それはストレングスが把握出来る速度をも超越し、一瞬の後にマリアを連れてこの戦場から姿を消した。

 そしてその後、マリアとローランは予定していた拠点の宿泊所に、大きく遠回りをしてから帰宅したのだった。


「ねえ、ローラン。ワタクシは五回しか使えないリングを一つ使う羽目になったの。それは誰のせい? あのエリザベートとの一戦は確かにワタクシにも非があったわ。油断してた。でもね。さっきのストレングスのギャルドとは貴方とその男。一対一でしょ。しかも貴方の得意な騎士としての真っ向から戦い。それで負けるなんて、一体どういうこと」

 再びワインを口に含みながら、ローランへの叱責を続ける。

 最強のギャルドを召還して、勝利をほぼ手中に収めたはずでありながら今回の敗戦。

 エリート中のエリートであるマリアには、許容出来ない屈辱だった。

「返す言葉が無い。本当に悪いと思っているよ、マリア。だが俺も馬鹿じゃない。敵の強さは把握したつもりだ。あのギャルドの使用した武器、二本の剣。槍、盾。その全てが立派な切り札だ。俺のデュランダルを前にして、折れること、そして歪むことなく打ち合える獲物など、同等の格の武器としかありえない」

 ローランの言葉に、マリアは更に疑問をぶつける。

「デュランダルと同等? そんな聖剣中の聖剣と見劣りしないような剣を二本持ってるような英雄なんて検討もつかないわよ」

「確かにその通りだ。しかし実際に俺はあいつと剣を交えた。恐らくは俺たちの理解の外の存在であるのだろう」

「そうね。……まあいいわ。もう今日は休む。次の戦闘はもう少し様子を見てからに変更よ。他のところがどう動くかを、じっくり見極めてからにしましょう」

「承知した」

 マリアは今後の事を指示すると、ベッドへと横になる。

 今はただ、眠りたかった。

 再び立ち上がるために、今夜だけはゆっくりと。


 夜も明け、朝になる。

 周囲も喧騒を取り戻しつつある朝の風景の中。

 霧島すみれは昨夜の事をまとめていた。

 エドワード・ティーチは勝手に夜の街を徘徊して得た情報なのだが、すみれからすると、その成果は想像以上に面白い物だった。

「へえ、マジでもう戦っちゃってるんだ。でもまだ誰も死んでないって……やっぱ初日は様子見って所なの?」

「ハッハッハ。そいつは違うな少女よ。命がけの戦いで様子見なんて温いことをやってたら、すぐにあの世行きだぜ。ただ全力でぶつかっても、結果的にはトドメを刺すに至らない。そういうこともよくあることさ」

すみれの推察を一笑しながら、腕を組む。

「まあ、こうなるとやっぱ俺様は海に出たいな」

「はあ? 海って現代でも海賊をするつもり?」

「おいおい? 俺様もソルシエル・ゲールのことは理解してるぞ。聖なる石を手に入れるために勝ち残る。それが俺様のすること。それは分かってるが、それなら余計に海に行く必要がある」

「どうして?」

「俺様は海賊だぜ。切り札は海が近くに無いと使えないんだよ」

「不便ね。じゃあ使い勝手は最悪じゃない」

「ハッハッハ。まあ海賊の性さ。でも、海の近くで使えれば絶対に勝つさ」

 エドワードは笑いながら話す。

 その姿は説得力があるわけではないのだが、それが逆に不思議な魅力にもなっていた。

「分かった。じゃあ行きましょう。どっちにしても、海の方が楽しそうね」

 すみれは荷物の整理をして、宿泊しているホテルのチェックアウトを済ませる。

 海沿いのホテルを探すために、エドワードと共に朝の町を歩き出した。


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