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アルカナ ゲール~英雄の戦い~  作者: カルラ


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第一話 狂気と栄光と 5

 朝の町をすみれとエドワード・ティーチは歩いていた。

 切り札を使用出来る海へと目指してだ。

 しかし、暫らく歩き続けてある異常に気付く。

「ねえ、ちょっとおかしくない?」

「そうだな。ここは人が少ないんだな」

 すみれが不安に感じながらエドワードに同意を求めるが、エドワードの方は特に動じた様子も無い。

「違うのよ。これ……誰かが人払いの結界を張ってるんじゃ……」

 すみれが不安ながらある予感を口にした。しかしそれはある言葉によって真実になった。

「おっほっほ。意外と感が鋭いんですのね」

「誰っ!?」

 声の方へとすみれが振り向く。

 すると、そこにはフリル満載のゴシック服に身を包んだ人形のような美少女が立っていた。

「わたくしはシャルロット・プロースト。パリ魔術アカデミーの代表ですの」

 シャルロットは両腕を組んで見下すような表情ですみれを見ていた。

 それにはすみれも不満を感じずにはいられない。

「すみれは霧島すみれ。東京魔法学術院の代表だけど……ねえその態度は止めてくれない。何だか感じ悪い」

「あら、そうですの? でも所詮は極東の下賤な魔女でしょ。由緒正しきプロースト家の魔術師であるわたくしと対等に口を聞けると思っているのでしたら、その認識は直して戴きたいのですが」

「由緒正しい? そんなの言ってるけど、この状況ならすみれの方が圧倒的有利だよ。そっちはギャルド連れてないじゃん。すみれの勝ちだよ。やっちゃってよあいつ!」

 すみれがエドワードへ指示を出すが、それに対してエドワードは難色を示している。

「違うな少女よ。あの女は既にギャルドを連れている」

「えっ? どこに?」

 すみれは全く分かっていなかった。

 そしてそれはシャルロットの方を笑わせるには充分だった。

「きゃはははは。わたくしが一人でギャルドの前に出るとか……そんな馬鹿なわけないじゃない。まあ見たところ素人っぽいししょうがないか。ねえデビル。出てきなさい」

 シャルロットが指をパチッ! と鳴らすと何も無かった空間から一人の男が現れた。

 赤い服を着て、大きな剣を持った見るからに騎士というような感じの男である。

「オレはデビルのアルカナによって召還された者だ。お前がオレの敵か。……殺す! すぐに殺すっ!」

 デビルの男は纏う殺気を隠すでもなく全力でぶつけてきていた。

 思わずすみれが怯むほどに。

「おいおいデビル。殺すって俺様をか。まあいいぜ。俺様はタワーだ。まあ意味は最悪らしいが、それでも俺様にも意地があるからよ。悪魔風情にゃ負けられねえよ」

「笑止。お前はオレが殺すっ!」

 デビルが駆け、それにあわせるようにタワーであるエドワード・ティーチも駆け出した。

 デビルの武器は両手で持つ大きな剣。

 それに対しエドワードは右手に剣、左手にはピストルである。

 先手を取るのは当然のようにエドワードからだ。

「残念だが、俺様の勝ちだ。その剣じゃこれは防げまい!」

 エドワードはピストルを二発連続で発射した。

 それはデビルの顔を胸を狙った必殺の一撃だ。

 しかし、それは意外なほどにあっさりと回避された。

「はあっ!」

 デビルの剣が一瞬消えた。そして刹那の後にピストルは二発とも弾かれていたのだ。

「そのようなおもちゃでオレを殺せると思ったか!」

 すぐに間合いを詰め、デビルは剣を振り下ろす。

 しかしそれをエドワードは同じように剣で受け止める。

「さすが騎士というだけある。だがそれでも俺様には勝てない!」

「笑わせる。見たところ海賊のようだが、そのような下卑た存在がオレに勝とうとは笑わせる!」

 エドワードとデビルは互いの武器を持って驚異的な死闘を繰り広げている。


 ギャルド同士の死闘。

 それは常人の域を超えた、超人の力のぶつかり合い。

 そのような凄いものを生でまじかに感じ、すみれはエキサイトしていた。

―凄いな。なんだろ、これ。下手なショーよりもずっとか凄い。最高でしょ―

 すみれは興奮状態であった。

 このような素晴らしい戦いを直接見て、肌で感じ、それで心が動かないような人間は普通では無い。

 そして心が動き、エキサイトをするすみれは、やはりどこまでも普通であった。

 もう一人の魔術師である、シャルロット・プローストとはそれが致命的なまでに違う。

「ねえすみれさん。わたくし達も戦わないかしら。まさかただの見学のつもりじゃないでしょう」

 シャルロットの言葉。

 それは興奮状態で戦いを見ていたすみれをすぐに現実へと戻してしまう。

 だがすみれはシャルロットの言葉が分からない。

「えっ? 戦う? コンダクター同士って戦うものなの? すみれ達はギャルドの戦いを応援したら良いんじゃないの?」

 すみれからしたら当然の疑問だった。

 戦うのは召還した英雄のみで、召還したものは戦う必要が無い。

 それがすみれの認識だったからである。

 しかしその認識はシャルロットからすると、かなりの衝撃だった。

「……応援? あなたまさかソルシエル・ゲールにおけるコンダクターのすべきことすらわかってないというつもり?」

「だから応援とサポートでしょ。コンダクター同士は戦う必要がないって聞いたよ」

 すみれは当たり前のように口にする。けれどその発言はシャルロットを怒らせるには充分であった。

「応援とサポート……まさかそのような認識でソルシエル・ゲールに挑む魔女がいるなんて……いいでしょう。ソルシエル・ゲールの本当に怖さを教えてあげますわ」

 言い終わるとシャルロットはすぐに自身の背後から氷の槍を出現させた。

 シャルロットの得意の氷の魔術である。

「ちょっと、それって……」

 すみれが表情を青ざめさせながら呟くが、シャルロットはそれを待つ気は無い。

「さあ、まずはその足を一本頂きますわ。覚悟しなさいっ!」

 氷槍を高速で放つ。

 シャルロットの魔術によって放たれた氷の槍は弓矢のような速さですみれに迫る。

「きゃあっ」

 すみれはそれを必死で避ける。

 アイドルのダンスレッスンで培われたリズム感と反射神経が活き、すみれは紙一重での回避に成功したのだ。

「ちょっと止めてったら。危ないでしょ。今の当たってたら本当に大怪我してたよ」

「当たり前ですわ。そのつもりでしたから。まあ避けたことは褒めて差し上げますけど、あなたも本気にならないと、大変なことになりますわよ」

 すみれの抗議も意に反さずにシャルロットは更に氷の槍を生み出す。

 しかもそれは一本ではない。五本も用意してあるのだ。

「次は先程を遥かに上回る速度で射出します。防御の魔法を行使することをお勧めしますが」

「えっ……そんな、冗談でしょ?」

―防御の魔法って、すみれにそんな上級魔法出来るわけ……逃げないと―

 すみれはすぐにその場を離れようとするが、シャルロットはそれを待ちはしない。

「おっほっほ、逃げるなんて往生際が悪いですわよ。わたくしの氷の槍にて串刺しにおなりなさい!」

 シャルロットが指をパチッ! と弾くと氷の槍はすみれへと射出させる。

 五本同時に、すみれの元へ。その速さは銃弾のそれを上回っていた。


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