表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

田舎の極悪人

作者: 五郎
掲載日:2026/06/10

一人で泣いているあなた。ひとりになりたいあなた。自分は悪い奴だと泣いているあなた。悪いことをたくさんしたあなた。泣きながら、暗い顔をしながら生きていこう。それが嫌なら嘘つきになれ。

 テスト中、後ろに座っている小学校の同級生がぐしゃぐしゃに丸めた紙を転がした。中学2年生の時の担任だった英語の先生がその音に気づく。その紙が自分の椅子の真下にあることを分かっていながら自分は音を気にしていない振りをして書き続ける。

 おいらはカンニングをしていた。ノートの切れ端に小さくびっしり何か書いていたようだ。先生は自分の下に転がっている紙を拾う直前自分の机の上にあるノートの切れ端に気づく。自分が先生に必死に何か言っている。でももう無理みたい。

 まだ午前1時半だ。まだ4月なのにおいらは凄い汗をかいてしまった。これからは今まで通り隠して生きていける気がしない。

 手始めに、まだ小さかった頃に蟻を火で炙った話をしよう。働き蟻がうっとうしかったのか?いや、ただやりたかったからやった。蟻が火で炙られぎゅっと縮こまる。その時蟻のすぐちぎれてしまいそうな細い脚が少しだけ動いて、その後動かなくなり、焼けながら小さく縮んでいく。10年以上前の出来事なのにまだ頭に焼き付いて離れない。

 都会、高いビル、なんでも売ってる百貨店、自分が暮らすのは小さな部屋、そしておれは別にひとりでいい。

 かなり小さい頃からおいらはひとりになりたい病だった。ずっと1人になりたいと思っていた。誰かと一緒にいる時は絶対にリラックスできない。そして、今、家を出てひとりになった後も本当にひとりになりたいと思い続けている。

 小学生の時、クラスに少し悪い奴がいた。名前は今岡だったと思う。おいらはそいつと話が合うのが不思議で仕方なかった。自分は悪い奴だなんてみじんも思っていなかったからだ。悪口を言い合って笑っていた記憶はあまりなく、悪口をバラバラと言い続ける悪い奴の話を「あー」とか「うーん」とか言って共感していることを相手に見せないようにしていた。でも、心の中ではこいつ悪い奴やと思うと同時にニヤニヤしていたんだった。牛乳をぶちまけて笑う奴。遊んでいる最中、ひっくり返って泣いてしまった同じクラスの子を見て大笑いするおいら。典型的な悪人だ。

 今岡君の直した方がいいところを一人ずつ言っていこうと先生が言った。一人ずつ悪口を言っていく度に睨みつける今岡の目。今岡とは仲が良かったにもかかわらず、自分も何か適当に直した方がいいところを言ってしまった。今岡はまっすぐ顔を向けた状態で目だけこちらを向けて睨みつけていた。おいらはその後何事も無かったかのように彼と仲良くし続けた。

 今思えばクラスで一番、おいらがどうかしていた。良いこともしたが、良いことは言う必要はない。良い話なんて興味ないでしょとおいらは言った。えー別にいいよと一緒にコンビニで働いている同い年の女の子がいう。同い年だし同じ3月生まれだから彼女が好きだ。好きっていってもこの人は自分の仲間だと思っているだけで恋をしているわけでは決してない。しかし、ふと顔を見ると頭がぐらつくことがあるほど美人だった。

 中学生のころから自分の腹黒さは意外とバレていた。そんなに頭が良くなかったからだ。何故そんなことを平気で言えるのか理解できないと嫌になったがなるべく気にしていないフリをしていた。自分の場合、いじめられる側に問題があったといえるが、いじめるやつも自分が悪人であることは認めるべきだ。しかし、いじめられる側は死ぬまでいじめられる側として人生を送らなければいけない。いじめる側といじめられる側の違いは何か?それは、いじめられる側の方が辛いということだ。しかし、いじめられる側は可哀想にと言ってもらうことができる。正直自分はいじめられる側で良かったと思うことが何度もある。いじめられっ子万歳。いじめられっ子も立派な悪人だ。渡る世間は悪人ばかり。そう考えるとすごく楽になってきた気がする。

 ということを考えながら布団の上で蛆虫のようにのたうち回りながら一人でベラベラ喋っていた。最近怖い夢を見てしまうので寝たくない。そしてごちゃごちゃ考えていることを文字に起こす気力もない。寝たいか?寝たくないのか?寝たいよ。でも寝るのが怖いんだ。お前意味わかんねえ。ひとりで頭の中で喋るのは楽しい。声に出すと、外にいる時に間違えてやってしまいそうだからなるべくやらないようにしている。

 お前は賢いな。偉いね。そう言われるように演技をするのがいやでも得意になってしまった。古い考えを持つおじいさんおばあさんのいるところに生まれた田舎の長男というのはとても苦しい人生を送るはめになる。いい思い出も、悪い思い出も自分の過去のことは忘れた方がいい。

みんな外で仮面を被っているのは当たり前なのに、みんなそれを外しているかのように振る舞うのが上手い。素なんてものは自分以外の人間がそばにいる時に出せるのか。出せる奴はとんでもなくお気楽な奴なのか。それとも疲れ果ててしまったやつなのか。とにかく仮面を被っている奴には優しくしてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ