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雪のお城とアリとチョコレートの秘密

作者: 明石竜
掲載日:2026/02/02

二月十三日、バレンタインデーの前日、小学三年生のユキは学校帰りに

不思議な光景を目にした。

「アリさん? こんなに寒い日に、どうしてアリさんがお外にいるんだろう?」

 雪がうっすらと積もった公園で、何十匹かの小さなアリたちが列を作って

動いていたのだ。

「このアリさんたち、どこへ向かってるのかな?」

 ユキがあとをつけていくと、またしても不思議なものが。

 公園の隅に、手のひらサイズの小さなお城があったのだ。

 氷のように透き通った壁にチョコレート色の屋根。

 あのアリたちがお城の中に入っていく様子が観察出来た。

「このお城って、アリさんたちが作ったのかなぁ?」

 ユキが不思議に思っていると、お城の扉の中からひときわ大きな女王アリが現れた。

「人間の子よ、よくぞ来てくれました」

 女王アリは優雅におじぎをした。

「アリさんが、しゃべった!」

 ユキはとっても驚く。当然です。ふつう、アリはしゃべらないから。

「明日はバレンタインデー。私たちアリの国でも、毎年この日に

特別なチョコレートを作るのです。でも今年は、雪が降りすぎて材料が

集められなくて……チョコの欠片が少しあればいいのですが」

 女王アリは困ったお顔で伝える。

「それは大変だね。助けてあげたいな。そうだ! ちょっと待ってて」

 ユキはこれは夢かな? って思いながらもすぐ近くのコンビニで、一口サイズの四角い

小さなチョコをいくつか買って来て包み紙をはずして、

「これ、使ってください!」

 地面の上に置くと、アリたちは大喜びで運び始めた。お城の中で何かが起こっているようだ。キラキラと光が漏れ出す。


 しばらくして、女王アリが小さな箱を持ってきた。

「お礼です。明日、ぜひ食べてみてください」

 


 次の日、ユキは学校でこっそりその箱を開けた。中には世界一美しいチョコレートが入っていた。でも驚いたのはそれからだ。

 チョコレートを食べた途端、ユキの体がどんどん小さくなり、気づいたらあのお城の前に立っていた。

 扉の向こうでは、楽しそうなパーティーの賑わう音が聞こえる。

 女王アリが微笑んだ。

「ようこそ、ユキ様。今日からあなたも、私たちの仲間です。永遠に、ね」


 学校では、ユキがいなくなったと大騒ぎになった。でも誰も、公園の小さなお城に新しい住人が増えたことには気づかなかった。

 雪の中、アリたちの楽しそうな歌声だけが静かに響いていた。

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