ep.5 チュートリアル2
「では、武器の取り出し方を説明しますね。まずはじめに、ステータスを呼び出してください。その次に持ち物一覧から先ほどの武器を装備するを選んでもらうと装備完了です。」
「ああ。」
少年の言葉に素直に従い、あいもかわらず透明の板が目の前に現れる。そのステータス画面のリストから持ち物を探すことにする。
あらためてステータスを確認すると、はっきりとしないというかなんというか。一言で表すと見にくいUIをしているな。もっとこうわかりやすくならないのだろうか。
俺がそう思っていたところ突然としてステータス画面が眩しい光を発し異変がおきる。
「まぶ...」思わず目を瞑いでしまうほどの光がみちだんだんとその光がだんだんと弱まりそこにあったのは、きちんと整理がされたステータスであった。
前は、板の真ん中に円状になるよう、能力、習得スキル、地図、心拍数、もどるとあり。これを1ページとして、左上に2, 3, 4, と続いてる形であった。
わかりにくいし、心拍数ってなんだよ。そもそももどるってボタンを押さなくても、消えろと念じればこの透明の板は消えてくれる。絶対にいらないであろう機能が山ほどあるし、わかりにくいったらあらしない。
そういう使わないであろう機能は入れるなとは言わない。しかし、その他という枠を作りそこに打ち込んでくれると嬉しいのだが。 いや、見てないページがある分その他の項目がある可能性が否定できないから余計にタチが悪い。こんなのいちいち確認するほど律儀な性格をしてないんだよ。
それがどうだろう。整理されたあとの画面は、左上から順番に、能力、もちもの、地図、ヘルプとあり。真ん中に選択したものが表示されるようになっている。さらに、左には持ち物のショートカットが4個ほど存在していた。
いらない機能と思ったものはどうやら2ページ目のその他の部分に入っているようだ。
だいぶ見やすくなったのではないだろうか。ショートカットに関しては使うか微妙なところではあるが、ゲームを普段から嗜んでいる咲人ならなにか有用な使い道を教えてくれるだろう。
っと、またしても考え込んでしまった。たしか、持ち物から装備一覧だったかな。
「あったあった。えーと装備っと」
思わず声に出してしまったようだ。それによって先ほど選んだなまくらな剣が俺の手におさまっていた。その剣を確認のために凝視すれば、スキルの時と同じく、その能力がみれるようだ。
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見習いの長剣;
耐久∞/∞
筋力+2
速さ+1
スキルなし
スキル
不壊
称号:最弱の長剣
不壊:
レベル1でしか装備出来ないかわりに絶対に壊れない。
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これは... どうなんだ? と言いたくなるほど上昇値が少なくないだろうか。このゲームを始める際にSPを100ptもらってる手前、合計3しか上がらないのを見ると弱いと思わざるおえない。そもそも、なまくらだと思っていものがその期待を叶えた形で当然なまくらだったと思った方がいいのだろうか。
しかし、特出すべき点があるとすればスキルの不壊だろうか。壊れないと書いてあるがそこにだけは魅力が詰まっていると考えてしまう。しかし、よく考えて欲しい。この不壊スキルを強い武器につけたとして、その武器が最強だとはならないのだ。そう、レベル1でしか装備できないという説明から、それはスキル自体に作用するもので、装備には作用しないということだ。つまり、この装備のスキル不壊を取り除くことさえできれば、たとえレベル3, 4, 5 と上がり続けようと使うこと自体は問題ないという点だ。
そしてもう一つ。俺のレベルが1ですらないということだ。もう一度見てもらった方が早いだろうが、俺のレベルは...
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名前:ケイン レベル0
職業:error
HP :0
生命 :0
生命 :0
筋力 :0
防御 :0
魔法攻撃 :0
魔法防御 :0
速さ :0
運 :0
〈スキル〉
剣術, 好感, 幸運, 熟練度
〈ユニークスキル〉
英雄, レベル0
〈称号〉
ユニークスキル保有者
英雄の道
SP:
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そう、0なのである。これでは装備ができないのではないだろうか。しかし、不思議なことに俺の手にはその装備できないであろう装備。見習いの長剣が手にあるではないか。
またしても、謎が増えてる気がする。というより増えてる。このゲーム初めてほんの少しの時間に、数えきれぬほどわからないことが増え、その問題を後回しにすることが増えた。
これも、また後回し案件なので、もうスルーと決め込もう。そろそろ後回し案件に慣れてきたのか、自然と後回しか、そうでないかの判断が早くなった気がする。
っは、そうか。このゲームは仕事の効率を良くするための教育の場...なわけもないか。咲人がそのいれば、そんなことを言って俺がそのツッコミをするという流れを妄想しながらも次に進むことにした。
が、しかしである。ステータスを念じれば、能力に直接飛ばされて。初めから透明の板は能力の画面に入っていたのだ。
装備も念じれば自動で武器を持つことができるのではないだろうか。そんな淡い期待を込めて一旦装備を持ち物の中に戻すよう念じれば
あら不思議。俺の手から先ほどまで持っていた剣がなくなり腕がそこし軽くなるのを感じた。そして持ち物リストを見たところ、そこには見習いの長剣があるのを確認された。
同じ要領で武器の選択をせず、手に見習いの長剣を装備するよう念じれば。そこには剣が現れる。
戻せることができたのだから、出すこともできるとなんとなくわかってはいたが実際それができてしまうと考え深いものがある。
そこでふと思ったことがある。「あれ、ショートカットいらなくないか」と。細かいことは気にしたらダメな気がしたのでもう考えないことにした。
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改めて、少年の方に向き直り装備した趣旨を伝えたところ。
「装備出来たようですね。では、勇者様。目の前のスライムを倒し、レベルが上げれば始まりの試練が終了となります。」
そう少年が言うのを待ってたかのように、サッカーボール程度の大きさで、淡い水色に輝くジョルのようなそれは、不規則で不定形な形をしていながら、その輪郭をしっかりと保っている、不思議な生き物だった。どこかで形が崩れそうでありながら、中心には小さななにかが存在し、それがまるでその形を支えているかのように感じさせる
それがスライムだとそう遅くない時間に理解できる。スライムはジェル状の何かを震わせ、俺がいることを認知したようだ。
これがスライムか。よくよく考えて見るとこのジェル状の身体? をどうやって支えているのだ。なんとなく予想はできるが、中央にある小さいなにかだよな。それならあの小さいなにかを壊せば倒せるのだろうか。それとも周りのジョルを取り除いていくのか?
そもそも、あの小さいなにかで身体を支えていると仮定して、このジョルは確実にただの水じゃないのは明らかだ。なにか危険なものが混じっていた場合、それを取り除くことで危険ではないのだろうか。すくなくとも、側面は安全だとおもう。でないと、スライムがいる場所の野原はなんらかの異常を起こしているはずだ。
それとも、スライムの任意で危険物が吐き出される可能性だってありえる。フィクションではスライムは弱いと聞くが、このゲームの中で弱いとはまだ聞いたことがない。万が一強いという可能性もあるのだ。たとえ、なんの脅威も感じないオーラを持っているものだとしても。
俺やあの人のように、武を極めたものなら己の気のコントロールや、相手の気を感じある程度の強さを識別することができる。しかし、自分よりも実力者だった場合それが自分を傷つける材料になってしまう。だからこそ、この気で相手の全てを判断することは好ましくないのだ。
色々考えたが周りを削っていくのは非効率で時間もかかる。それにもしものことを考えるならあまり傷を増やさない方がいい。ならあの方法でやるか
「え、うそ。そんな」
少年からそんな言葉が聞こえてきた。それもそうだろうな。俺ですらこの技を、ゲームで使えると思っていなかったのだ。やったことは至って単純。
ただ、空気を斬った。
それもあのちいさい何かだけを斬れるよう精密に気のコントロールをし、外側を一切傷つけることなくだ。
武を収めてないものからすると、スライムが突然死んだように見えるだろうな。
しかし...
「...本当によくできたゲームだな」思わず口にだしてしまうほどすごいものだった。そうして、しばらく余韻を浸かってるのも束の間。先ほど倒したスライムが光の粒子となって消えて無くなってしまった。
「消えた」
そして
『スライム レベル1を倒しました。プレイヤーケインのレベルが上がります。error経験値をイント&アイテムに変換します』
ゲーム開始の時に聞こえてきた無機質な声のアナウンスといつもの透明な板がでてきた。
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4イント+4イント
スライムの核 × 2(1)
スライムの粘液 × 2(1)
スライムの魂(R) × 1
生命の石(R) × 1
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やっぱりレベル上がらないんだな。そもそも1からスタートするところを0からなんだ。少しだけ期待していたが、期待するだけ無駄ってものか。それよりも、イントってなんだ。それにスライム関連のアイテムならわからなくもないが、生命の石は本当になに。
普通に考えれば、スライム関連って思うだろう。しかし、それならスライムの生命の石とかでもよかった気もする。そして、スライムの魂というアイテムがある以上。生命の石というアイテムはスライム関連とは少し違うきが...「勇者様。おめでとうございます。レベルアップなされたのですね。それでは、始まりの街カカオへ行ってらっしゃいませ」
「え」
有無を言わせないと言わんばかりに、少年が喋り終えたタイミングで足元に魔法陣が現れ、強烈な光が現れた。
「っまぶし...い?」
あれ、ここって。光が徐々に消え始め、目に映ったのは少年の後ろ姿で、何かを呟いている。
「はあ、やっとあいついなくなったよ。人の話をすぐに無視するし、殴ってくるし。制約さえなかったらあんな男ぶっ殺して...」
「ほう、一体どうやって俺をぶっ殺すのか詳しく聞こうか。」
「それはもう、殴らないでと何度も謝って俺が悪かったですと、言われようと何度も殴り続け...え」
どうやら、あの魔法陣ははじまりの街カカオへはいけず、行き場を失った。魔法が少年の後ろへと移動する形で治ったようだ。そして、なにやら俺に対して私怨を言ってるように見える。そして振り返ったのが今ということになる。
俺は聖人君子ではない。だれかに悪口を言われれば当然腹がたつ。だから、これは正義の行いなのだからこそ俺は、少年の頭に向かってチョプをお見舞いした。
「いたい」
少年の頭を叩いたからだろうか、目を潤わせながらこちらを睨んでくる。しかし、睨むだけで先ほどの威勢はどこにもなかった。
次回の更新は
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