レンvsセト(後編)
レンはその雷を見ながら、放って震えている手を抑えながら、
「セト……。ごめん……」
と言った。
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観客席からはざわめきの声が聞こえた。いくら本気でやれと言ったセトに対し、あれはやり過ぎじゃないかという声も聞こえた。
レイ達も同じ気持ちだ。
「セト……。自分から死ぬような真似しやがって……」
「本気でやれって言っても……、さすがにあれは……」
「セトさん……。本当にこれで良かったのでしょうか……?」
入場口では、ノエルが物凄い雷鳴の音を聞き、試合を見に戻ってきた。
「あれは……、そうか。つくづく馬鹿な奴だ」
そう言いながら、ノエルはセトを鼻で笑った。
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レンは、自分がやった事の重さに耐えきれず、体勢が崩れた。
「僕のせいだ……。僕が一緒に出るかって誘わなきゃ……」
自分の事を一番気遣っていた親友の命を奪ってしまったのではないか。そう思うと、レンの目からは涙が落ちそうになった。
その時、レンはセトのいた所から燃えたぎるように流れているエーテルの流れを感じた。その方向を見ると、レンが放った雷は、だんだんと朱赤の炎に変わっていった。
レンは、次第に暗くなっていた表情が晴れ、
「セト!!まさか、『やった』のか!?」
と大声で言った。
すると、その炎は次第に雷を飲み込み、さらに燃え上がってゆく。そしてその中から、
「あぁ……!『やってやった』ぜ……!!」
という大きな声が聞こえると、セトが出てきた。しかも、セトの身体には朱赤の炎が纏わりついていた。
そう。これは、あの魔王レグルスに2度目の死を与えた物と同じ炎だ。
その様子を見て実況役の兵士も、
「こっ、これは凄い!!なんと!レン・フリューゲル選手の放った雷の中からセト・ヴァールクス選手が飛び出してきたぞーー!!しかも熱い炎を纏ってカムバックだーー!!」
と興奮しながら言った。観客席も、それに応えるかの
ように歓声が湧き出た。
セトは朱赤の炎を纏った自分の手を見ながら、
「何となく掴めてきたかもな……」
と言った。
「何を掴んだの?」
と聞いたレンにセトは、
「こいつの発動条件さ……!もしかしたら、『執念』かもな!」
と答えた。
その様子を見たノエルは、変わらなかった表情が一変し、困惑の表情を浮かべていた。
「何だあれは……。まさか、あの時のあれは……、嘘じゃなかったのか……?」
それを他所に、セトはもう一度レンに指をさし、
「さてと!俺はこいつを発動したんだ!お前もさっさと『あれ』使えよ!」
とレンに言った。
「『あれ』か!よーし!今なら思う存分使えるな!」
と言い、レンは目を閉じ、肩の力を抜き深呼吸した。
レイもハルもアレクシアもノエルも、過剰強化を使うんだろうなと思っていた。しかしこの時のレンは、既にそれに代わる力を会得している。
「[神竜覚醒]!!」
とレンが言うと、レンは目を開けると同時に力を込め、自身の身体に碧い光を纏わせた。
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その変化に、レイとハルとアレクシアとノエルは驚くしかなかった。
「お、おい……。ありゃ何だよ……?」
とレイがハルに聞いても、
「そんなの俺が知りたいよ……」
としか言いようがなかった。
アレクシアは驚きつつも、碧い光に見惚れていた。
「綺麗……。レンさんって、あのような技も持っていたのですね……」
それを見たノエルは、最初の驚きは既に消え、腕を組んでいた手の力が強まっていた。
「奴はいつの間にあのような技を……!チッ!」
と舌打ちすると、ノエルはその場を急いで離れていった。
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「これでいいんでしょ?セト!」
とレンがセトに聞くと、
「ああ!逆にこれ以上何があるって話だ!」
と言い、セトはナイフを構えた。それに対するようにレンも剣を構えた。
「さーてと……」「じゃあ第2ラウンド……」
「「始めるか!!」」
とそれぞれ2人は言い、お互いに剣とナイフを構えて突進した。剣とナイフがぶつかり合うと同時にレンの碧い光とセトの朱赤の炎もぶつかり合い、これ以上ない余波が生まれた。レンとセトが剣とナイフでぶつかり合う度に、リングの表面にはヒビが入り、[ダイヤモンドランパート]には常に衝撃が加わっていた。次第にそのぶつかり合いも激しくなり、レンとセトのお互いの動きも速く、鋭くなっていった。やがて、目では追いつけないほどに速くなり、常人にはリングが風圧で割れているように見えた。
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その様子を見てさすがに我慢できなくなったのか、アレクシアは思わず、
「レンさーーーん!!セトさーーーん!!どちらも頑張ってくださーーーい!!」
と大きな声で応援した。
レイも負けじと、
「そこだーーー!!いっけーーー!!」
と大きな声で言った。ハルに、
「見えてるのか?」
と聞かれたが、レイは、
「見えねぇ!だけどノリで何とかするんだよ!」
と言って再び応援を続けた。
すると、それに影響を受けたのか、次第に他の観客も大きな声でレンとセトを応援した。その大きな声は歓声になる程に広まり、遂には今までの試合を超えるほどの大きな歓声が起こっていた。
実況役の兵士もその歓声に負けないように、実況を続けていた。
「レン・フリューゲル選手とセト・ヴァールクス選手!!お互いに一歩も譲らぬ大激戦だ!!私の目には見えませんが!それ程にまで戦いは激しいと言う事でしょう!!これはまさに超次元の戦いだーー!!」
レンとセトはそれを気にせずにぶつかり合っていたが、レンがセトのナイフを2本とも場外に弾き飛ばすと、セトも負けじとレンの振り下ろす剣を受け止め、そのまま剣だけを投げ飛ばした。そして、お互いに思いっきり右ストレートで殴りつけ、そしてお互いに飛ばされ、体勢を立て直した。
「セト!まさかここまでやるなんて思わなかったさ……!」
「あぁ、俺もだ!まさかこんなに強かったなんてよ!」
レンとセトはお互いにそう言った。
「じゃあ、こいつは受け止められるかな?」
とレンが言うと、
「何だ?超電撃か?それなら俺も超火炎で受けてたつぜ!」
とセトは答えた。
「そっか、なら!」
と言い、レンは思いっきりセトから離れると、右手を真上に突き上げた。すると、レンの右手に対して、とてつもない威力の雷が無数に落ちてきた。
ハルはそれを察したのか、セトに対して、
「セト!いくら何でもあれは無理だ!!避けろ!!」
と大声で言った。
セトはその忠告を聞いた上で、
「いや、今の俺ならあれにだって対抗できらぁ!!」
と言い、全身に力を込めた。すると、セトの身体は炎に包まれた。
少しして、レンは力を込め終わったのか、右手をセトの前に突き出し、左手を右腕に添えた。
それに対してセトも、力を込め終わり、全ての力を左手に込めた。
レンはセトに対し、
「極電撃!!」
と言い、雷の光線を放つと、セトもレンに対し、
「そっちが極電撃なら、俺は極火炎だぁぁぁ!!」
と言い、巨大な炎の球を放った。2つの想像を絶する魔力がぶつかり合い、[ダイヤモンドランパート]にはヒビが入り始めた。
クリシスはそれに気付き、ハルに対して大声で、
「ハル!!手を貸してくれ!![ダイヤモンドランパート]にヒビが入った!!」
と言った。ハルは驚き、
「どうすればいい!?」
とクリシスに大声で言った。
「私が今いる場所の反対側に立て!!お前の防壁も使わせてもらうぞ!!」
とクリシスが大声で言うと、ハルは大きく合図を出し、クリシスの反対側に立ち、魔力を使い果たす勢いで防壁を張った。
闘技場にいた兵士は、観客を避難させようと誘導した。そして、レイ達と実況役の兵士以外は全て避難した。
それを気にせず、レンとセトはお互いに魔力をぶつけ合った。そして、極電撃と極火炎がお互いにかき消されたと同時に、レンとセトはお互いに拳を振りかぶり突進した。
レンは思いっきり殴りつけようとしたが、セトは大きく身体を回転させ、レンにカウンターの如く右ストレートをレンの腹部に食らわせた。レンは大きく吹っ飛ばされ、セトは更に追撃をかけようと大きく跳び上がりレンにとどめの一撃を与えようとしたが、レンは体勢を立て直し、近づきてきたセトを思いっきり蹴り飛ばし、その勢いでレンは更に跳び上がった。
対して、セトは地面に強く叩きつけられた。セトが立ち上がり上を見ると、レンは真っすぐとセトに向かって急降下し、雷を纏わせた拳をセトに向かって突きつけた。雷はまるで全てを消し飛ばすかのように勢いを増し、セトに向かって落ちてくる。
それに対抗するように、セトは地面に向かって爆破を放ち、その勢いでまた大きく跳び上がり、レンに向かって炎を込めた右手を振りかぶった。その炎はまるで天を昇る龍のようにレンに向かって昇っていく。
「僕の……!!」「俺の……!!」
「「勝ちだああぁぁーーー!!」」
2人の勝利に向かう拳が激しくぶつかり合うと同時に、[ダイヤモンドランパート]は音を立てて割れ、闘技場には、炎と雷が入り混じったかのような巨大な光の柱が昇っていた。
【ちょっぴり用語解説】
〈極火炎〉
覚醒したセトがレンの極電撃に対抗するために編み出した超火炎の上位互換。
最後まで読んでくれてありがとうございます。




