復讐者、襲来
夜が明けて、レン達5人は宿を出た。
すると、セトは自身の武器を預けた鍛冶屋に向かった。
「おっさん、俺のナイフ点検終わった?」
「ああ。ついでだが、ちょっと研いだり錆止めを塗ったりしてやったぞ」
「え!マジで!?おっしゃあ!!あ、でもその分、値は上がるんだろうな……」
「500アリールで構わんよ。どうせトルネシア兵がたくさんうちの武器を買ってくれるお陰で、余裕があるし」
「マジで!?点検と変わらない値段じゃん!」
セトは鍛冶師に500アリールを渡し、鍛冶師から武器を受け取った。
「まいどありー」
レン達5人は村の出口で立ち止まった。
「そういや、お前らは次どこに行こうとか決めてるんか?」
「うーん……。あんま決めてないかな」
「あっそ。まあ、俺はこのまま村に帰るかな」
「そっか。じゃあ、また次会おうな!」
「お前の次はいつだか分かんねぇよ!」
セトは、レン達に手を振りながらトーラスの村に帰っていった。
「さてと、今度は俺らだな。今んとこ、まだレグルスの残党らしい奴は見かけねぇが、気をつけとかねぇとな」
「そうは言っても、どうせレンの事だからひと目見てみたいって思うんじゃないか?」
「あの、お兄様……」
「どうした?」
アレクシアは、既にガンガン先に進んでいるレンを指差した。
「もう、レンさん行っちゃいましたけど……」
「 ちょっと待てーーー!!」
ハルとレイはレンの所まで走った。
「あっ……。ごめん、まだ1人で旅してた感覚が残っちゃって……」
「ガンガン進むのはいいけどよ……、せめて俺らになんか言ってから動けよ……!」
「1人で旅してるんじゃないんだぞ……!今のお前は……!」
「ごめんって……」
そして、ハルとレイの後を追うように、アレクシアも走ってきた。
「よし!これで全員だな!」
「全員だな、じゃないですよ……!もうトルネシア王国領で巡っていない場所はレンさんの故郷のトーラスしかないんですよ?なのに、なんでトーラスに帰ろうとするセトさんとは反対の方向に行こうとするんですか?」
「決まってるでしょ?レグルスの残党の事だよ」
「ああ、王都の宿のおっちゃんもセトも言ってたな!それがどうかしたのかよ?」
「レイは、なんでトルネシアから大きく西に離れたトーラスに住んでるセトが、レグルスの残党の事を知ったと思う?」
レイはしばらく考えた後に、
「そりゃ、とんでもねぇからじゃねぇのか?」
と聞いた。
「そうだよ。トーラスに住んでるセトも知ってるって事は、相当な奴だってことだよ」
「戦いたいのか?そいつと」
ハルに聞かれると、レンは嬉しそうな顔でハルの方を向いた。
「当然でしょ?もしヤバイ奴だったらなんとかしないとダメだし。そいつと戦うためにも、もうちょっとトルネシアに残って旅を続けるよ」
それに対し、レイとハルは少し諦めたような表情をした。
「そう言うと思ったよ……。ま、お前だったら楽勝かもしんねぇな」
「レイと同じだ……。どれだけヤバイ奴だったとしても、こっちにはもっとヤバい奴がいるか!」
(ヤバイ奴って……。僕が人外だと思いたいのかよ……)
「まあ、王都の宿の人も、街道に気をつけろと言っていたので、街道に沿って歩くんですか?」
「その通り!というわけで行きますか!」
「おい!今度はガンガン1人で進むなよ!」
レン達4人は、レグルスの残党を見つけるために街道を進んだ。
その夜、レン達は街道から少し離れた草原で焚き火を焚き、キャンプをしていた。
「結局見つかんなかったな……。もうそいつ死んでんじゃねぇのか?」
「それだったら、噂になってないだろ?もっとよく探さないと……」
「ま、明日探してダメだったら、一旦諦めるか……」
「そんな事して、あいつの興味を削いでどうするんだ?」
ハルは、レグルスの残党との戦いに向け、剣を素振りするレンを指差した。
「あー……。ありゃ、完全にやる気だな」
「だろ?」
「心なしか、あいつの目があの時みてぇに真剣な眼差しになってやがる」
「そうか?俺には、そういう風には見えないが……」
すると、アレクシアが3人に向かって、
「皆さーん!ご飯の準備できましたよ〜!」
と言った。
「お!もうそんな時間?」
レンは直ぐ様、焚き火の近くに寄った。
そして、レンは皿に入っている白いシチューをじっと見つめた。
「ねぇ、アレクシア。このドロドロしたやつ何?」
「「「え?」」」
「レンさん……。それシチューですよ?」
「え?シチューって、白じゃなくて茶色だったよ?」
「そっちが本当のシチューなんだよ。さては、お前そっちのシチューは食ったことねぇな?」
「美味いのは分かるよ」
(それ、誰でも分かるやつだぞ……)
「アレクシア、これ何の肉入れたんだ?」
「アルミラージのもも肉です!火を通したら、意外と美味しいんですよ!」
そんな会話をしながら、レン達は食事を終え、焚き火の火を消し、それぞれ眠りについた。
夜が明け、日がだんだんと登ってくる時、レン達はまだ眠っていた。すると、1人の剣士がレンに近づき、刀を抜き、心臓目掛けて突き刺そうとした。
レンは、その気配を一瞬で読み取り、間一髪のところで回避した。
「チッ、仕留め損ねたか」
「誰かに見られてるなとは思ったけど……、まさか本当に襲ってくるなんてな……。そのマントの中から見え隠れする軍服の色……、レグルスの残党ってお前のことか」
すると、レイとハルとアレクシアも目を覚ました。
「んだよ……、人が寝てる時に……。って、どういう状況だよこれ?」
「レイ、ハル、アレクシア!気をつけて!こいつがレグルスの残党だよ!」
それを聞いて、レイとハルとアレクシアは、それぞれ飛び起きて、武器を構えた。
「まさか、そっちから出てくれるなんてな。驚いたぜ」
「出迎えるつもりはない。ここで貴様らを殺すつもりだったからな」
「何のために?」
「決まっている。俺から故郷を奪った貴様ら人間への復讐だ!」
「復讐?僕たちは関係ないじゃないですか!」
すると、その剣士はアレクシアの喉元に刀を近づけた。
【ちょっぴり用語解説】
〈アリール〉
ベスティア全土の通貨の単位。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
よければアドバイス(読みやすくなる工夫だったり)とかをくれると嬉しいです。