決勝2回戦、決着
【前回のあらすじ】
《レイ》
オレとレンの試合に決着がついた。
結果は、オレの負けだ。すんでのところであいつのパンチをもろに食らっちまった。
もう未練はねぇよ、死ぬわけじゃねぇけど。
続く2回戦第2試合はセトが準決勝に駒を進め、レンと準決勝にて戦うこととなった。
「ハァ……、こっから準決勝もあるのか……。体力が持たねぇよ……」
セトはベンチでぐったりしていた。
それもそのはず、セトが先ほどの試合で戦った相手はセトよりも小ぶりなナイフを6本所持しており、それを遠隔操作して戦っていたのだ。レンならともかく、セトにとってそのナイフを掻い潜るのは至難の技であり、ただの自滅行為にしかならなかった。しかし、それでも何とか食らいつき、やっとの思いで攻略したのも束の間、ナイフはセトが攻撃しようとする場所を的確に、そして素早く防いでいた。そうして色々あって、セトはなんとか準決勝に勝ち上がったのだ。
「でも、次の相手はレンだ。今のうちに休んでおかねぇと……!」
そう言いながらセトはベンチに横になっていたが、どうしても今やってる試合が気になったのか、起き上がって入場口の近くに来た。
すると、セトの後ろから、
「何をしている?まだ貴様の出る幕ではないだろう」
と言う声がした。ノエルだ。
「いや、試合が気になっただけだ」
セトはノエルの方を向かずに言った。
「だけか。貴様が気になるような試合展開はないぞ」
そう言いながら、ノエルは入場口からリングへと出ていった。
ノエルが出てきた後に、反対側の入場口からハルが出てきた。ハルはノエルと戦う事になってからはかなり落ち着きがなかった。
ハルはリングに上がっても険しい顔で俯いたままだった。
(どうする俺…、あいつにとっては俺なんて相手にすらならないぞ……。どう攻めればいい?どう守ればいい?いや、そもそもあいつに正攻法で勝てるのか?レンですら互角だった相手だぞ?それを俺なんかが敵うのか?いや……、そもそも勝てる奴なんているのか!?)
そう思いながらハルは険しい顔のまま、顔を上げた。それに対し、ノエルはいつもと変わらぬ鋭い目でハルを見ていた。
「嫌なら降参しろ。戦う気がない奴が相手ではつまらん」
そうノエルはハルに言った。
「誰が……!?いや、下手に口出し出来ないか……。そう言われればそうだからな……」
ハルは図星を掠められたかのように呟いた。
観客席のアレクシアはどちらを応援すればいいのか迷っていた。
「ノエルさんを応援したいけど……、やっぱりお兄様にも勝ってほしいし……。ボクは一体どっちを応援すれば……」
「どっちも応援すりゃいいだろ。悩むこたねぇよ」
既に客席に戻っていたレイがアレクシアのつぶやきを遮るように言った。
「あ、なるほど!どっちも応援すればいいんですね!」
そう言いながらレイの方を向き、その後またリングの方を向いて、
「お兄様ーー!ノエルさーーん!頑張ってくださーーい!!」
と大声で言った。
それをアレクシアの方を向いて聞いた後、ハルの方を向いて、
「こういう時に言うんだろう?『だってよ』と」
と少々バカにするような口調で言った。
「あいつがお前まで応援するなんて……。ホントに人生どうなるか分かったものじゃないな」
とハルは続けて言った。
「両者、準備は?」
審判がノエルとハルに聞くと、
「さっさと始めろ」「出来ている!」
とそれぞれ言った。
「……では、決勝トーナメント2回戦第3試合、始め!」
審判の開始の掛け声とともに、ノエルは真っすぐとハルに向かって突撃し、そのままの勢いで蹴りの強襲を仕掛けた。
「なっ!?ちょ、まだ構えてすら……」
ハルの呼びかけも届かず、ノエルの足はハルの腹部を思いきり蹴りつけていた。
「戦いに待ったはない。貴様が一番よく知っているはずだ」
ノエルがそう言った後、ハルは蹴りの勢いで思いきり後ろに吹き飛ばされ、闘技場の壁を貫通して隣接した建物の壁に張り付けになった。
「な、何だ!?何が起こった!?」
建物の主は何事かと思って出てきた。
「か、加減しろよ……。ちょっとは……」
そう言いながら、ハルは地面に倒れた。
「ちょ、ちょっ!君!?大丈夫かい!?」
建物の主はハルに駆け寄ってハルを担いで闘技場に空いた穴に向かって歩いてきた。
観客席からは動揺の声があちらこちらで聞こえていた。
「えーと……。しょ、勝者…、ノエル・フリューグント選手……」
審判も思わず大声を出せなくなっていた。
「こ、これは……。ノエル・フリューグント選手のスピード勝利……。で、いいのか……?」
実況役の兵士も唖然としていた。
「お、お兄様!!」
アレクシアは観客席から降りてハルの元へと向かっていった。
「分かりきっていた事だ」
ノエルはそう言いながらリングを後にした。
その様子を見ていたセトは、目を丸くしていた。
「……。へ?」
その様子がノエルの目に入ったのか、ノエルはセトにこう言った。
「これが戦場だ。覚えておけ」
「いや、ここ闘技場……」
「どっちでもいいだろう」
そう言った後、ノエルは控室に戻っていった。
ノエルは途中、オルフェウスとすれ違った。オルフェウスはすれ違いざまに、
「お前はいつもあのような戦いを?」
と聞いた。それに対し、
「当然だ。結果が分かりきっている戦いを無理に長引かせるつもりはない」
と答えた。
「それは相手が可愛そうになるな」
と言い、オルフェウスは入場口へと向かった。
「鬼人族如きに言われる筋合いはない」
ノエルはオルフェウスに聞こえないように言った。
次の試合も当然、オルフェウスが圧勝した。
最後まで読んでくれてありがとうございます。




