第2回戦の開幕と動き出す影
【前回のあらすじ】
《ノエル》
ネルケディラ武闘大全は順調に進んでいた。俺の相手は変な奴だった。だからそいつに合わせたお仕置きをしてやった。俺には到底及ばん。それに、あと少しで奴と決着をつけられる。
その後、続く7試合目と8試合目も終わり、これで1回戦が全て終了した。レン、レイ、ハル、セト、ノエル、そしてオルフェウスは全員2回戦へと駒を進めた。
それに伴い、トーナメント表にもその結果が書き加えられた。2回戦ではなんとレンとレイ、ハルとノエルが戦うことになった。
レンとレイはトーナメント表の前に立ち、自分達の戦う相手を見ていた。
「ねぇレイ、次の僕の相手レイだって」
「オレも、次やり合う相手がレンだってよ」
お互いそう言った後、レンとレイはそれぞれお互いの方を向いた。
「言っとくが次勝つのはオレだぞ?パワーならお前より強えんだ。正面からブチのめしてやるぜ」
「だったら僕もお前と真っ向からぶつかってやるよ。パワーだけじゃ僕に勝てないって事を見せてやるよ!」
「へぇ〜?前にオレに腕相撲で負けたくせによく言うぜ」
レイがそう言うと、レンは少しの間黙り込んだ。ベスティア戦争中、レンとレイは鍛錬の間に腕相撲で勝負した事があるが、現在のような化け物じみた強さを持っていなかったとは言え、レンはレイに負けた事があるのだ。その時、『パワーだけならレンよりも上』というレイにとってはちょっとだけ誇れる所が生まれたのだ。
「じゃあ僕が過剰強化使っても文句は言うなよ?レイ」
「お、おい、それだけはちょっと勘弁してくれよ……。オレが持たねぇぞ……」
そんな感じの会話を交わしていたレンとレイを尻目に見ていたノエルは、
(バカバカしい……)
と思いながら選手用に用意されていた紅茶をすすっていた。すると、目の前の椅子にハルが座ってきた。
「何の用だ?魔力切れでも起こしたのか?」
「だったら尚更お前の所に来る必要がないだろ」
「なら何の用だ」
ハルは、両肘を机についてノエルの目を見ながら聞いた。
「アレクシアとはどういう関係なんだ?」
「どういう関係とは、どういう事だ」
「昨日、お前とアレクシアが楽しそうに話してる様子を見かけたんだ」
「それがどうした。貴様はまだ俺が足を洗い切れてないと言いたいのか?」
ノエルは手に持っていたティーカップを置いてハルに聞き返した。
「そういうわけじゃない。ただ、お前は一度レグルスの元に身を置いていた存在だ。それだから妙に引っかかっているんだよ、俺の中で。もうお前は以前のように脅威的な存在じゃないというのは分かっているのに」
「分かっているのなら引っかかりを外せ。モヤモヤして気に食わない」
「それは分かってるさ……、でも……」
「だからと言って、俺は貴様を気には止めない。俺はレン・フリューゲルと決着をつけたいだけだ。他の奴らはどうなってもいい」
ハルが言いかけた言葉を塗り替えるようにノエルが続けて言った。
「別に、俺もお前を特別気にかけようとは思わないさ。ただ、心配性なだけだ」
「過保護な兄を持ったものだな、あの小娘は」
ーーーーーーーーーー
一方その頃、
「おー、いちちち……。全く、あの可愛い子ちゃん怖いねぇ……。オレのお鼻を折っちゃってね〜……」
トロイが治療してもらった鼻をさすりながら闘技場を後にしていた。
「でも、次またあの子と戦うってなったら……、オレもちったぁ修業し直しやな〜」
すると、トロイの目の前にフードを深くかぶった男性がいた。
「あれま、ありゃ迷子じゃないの。どこ行きたいんだろ?」
トロイはフードを深くかぶった男性に、
「おい少年?道に迷ったんなら、オレが教えちゃおうか?」
と話しかけた。
「ああ、闘技場に行きたいのだよ。どこに行けばいいのかな?」
とその男性が返すと、
「闘技場?ああ、そりゃあそこだね」
トロイは闘技場を指さした。
「ここだけの話、こっからはもっとやっべえ事になるってよ!見に行くんなら、今って訳よ!」
「なるほど……」
そう言いながら男性はトロイに気づかれずに、右手に氷の刃を生成し、
「……ありがとうね」
と言ったと同時にトロイの心臓目掛けて刺した。
「ぐふっ…!そりゃ…、ないわ……」
トロイはゆっくりと倒れるように死んだ。
「さてと、闘技場に行きますか」
そう言いながら男性は、闘技場へと飛んでいった。
男性が闘技場の一番高い場所に降り立つと、決勝トーナメント2回戦の第1試合であるレンとレイが戦っている様子を見ていた。
「うおおぉぉ!!」
「だああぁぁ!!」
レンとレイはお互いに、一進も譲らない激闘を繰り広げていた。観客の盛り上がりも尋常じゃないほどに、盛り上がっていた。
「レン・フリューゲル選手とレイ・ディアデマートゥス選手!お互いに激しい攻防が続いています!!この激しさは今までの大会ではなかったことでしょう!!これは瞬き厳禁だーー!!」
時折、実況役の兵士の声が闘技場全体に響き渡る。
その様子を、男性は静かに見ていた。すると、ある者が彼の目に写った時、男性は静かに微笑んでいた。
「あの男……、やっぱり僕の思ったとおりだ」
男性のマントからは色彩の薄い肌と背中の背びれが見え隠れしていた。そう、彼が『第二の魔王』、アイリスだ。
「でも、今殺すのは面白くないや。もっと派手なタイミングで殺すことにしよう」
そう言いながら、その冷たい目は闘技場を静かに見下ろした。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
いよいよ第二の魔王が(本格的に)登場です。




