3を飛ばして4,5,6まとめて
【前回のあらすじ】
《レイ》
オレと同じ極零帝国出身のハオランと戦った。最後はオレの大好きな肉弾戦で勝負を決めた。オレが兄貴の無事を確かめようとしたらハオランがオレの素性を大声で言おうとしたので止めた。今あいつらにバレる訳にはいかねぇんだよね、オレ。
第3試合が終わって第4試合、セトの出場する試合では大盾2つ持ちにかなり重そうな鎧を着込んでいた戦士がセトの相手だった。
「うわ、何だあれ……。見るからに防御全振りじゃねぇか……」
それを入場口から見ていたレイとハルは、セトの相手を見ながら色々話していた。
「げっ、あいつ武器無しってバカじゃねぇの?」
「お前が言う事か?」
図星だったのか、レイは言葉が出なかった。
「でも、案外正しいかもな」
「え?マジで?」
「ああ、あいつの鎧はフルプレートというよりもオーバープレートに近いぞ。そこに大盾を2つも持ってるんだ。総重量は少なく見積もっても40kg以上はあるぞ」
「そんなにか!?あ、でもオレだからかもしれねぇけど、そんなに重いって感じが薄いな……」
レイは片手で斧を軽々と、しかも柄の先端を持って振り回すのでそう思うのも当然である。
「かもな。だけど、その分守りはとてつもなく固いぞ。俺の相手じゃなくて良かった……」
「お前には魔法があるじゃねぇか。それで上手いこと立ち回って勝てるだろ?」
「あの大盾をよく見てみろ」
そう言われて、レイは相手の大盾を見た。よく見ると、かすかに魔結石に近い粒子が大盾に散りばめられていた。
「あっ!あれって魔結石か?」
「いや、基本防具には魔結石は使われてないはず。おそらくあれは魔防の大盾だな」
「魔防の大盾って……、1つ20000アリールはする高級防具だよな?」
「それを2つ持って、鎧もかなり重いものだ。相当金を積んだんだろうな」
そんな感じで会話しているレイとハルとは少し離れた場所でレンはセトの対戦相手を見ていた。
(あの感じ……、長期戦に持ち込むつもりなのかな……)
試合の結果は、セトの完封勝ちだった。やはり大盾2つでは攻撃に転じることができなかったので、相手はただ守るしかなかった。
続く第5試合、ハルの番だ。
「おっと、俺の番か」
準備を終えて、ハルはノエルの方をちらっと見た。ノエルは目を瞑ったまま俯いていたが、ハルに気づくとすぐに鋭い目でハルを見た。ハルは思わず目をそらした。
(なんか嫌な予感がするけど……、気にする必要はないか)
そうしてハルは、入場口からリングへと上がっていった。
第5試合でのハルの対戦相手は、ハルと同じ魔術師であり、お互いに魔法の撃ち合いになった。ハルは槍で相手の魔法を弾きながら火炎を放ち、相手は魔防盾でハルの魔法を防ぎながら氷塊を放っていた。
しばらくして相手は魔力を切らし、ハルはその隙を突いて相手に近づき、ゼロ距離での爆破で相手を場外に飛ばして勝利した。
(やっぱり、防御するにも魔力を使ってたか……)
そして、ハルは入場口から控室へと戻った。すると、そこにはノエルの姿が目の前にあった。
「……なんだよ」
ハルは意を決してノエルに聞いた。
「いや、ただ細々しい戦いだと思っただけだ。あれでは貴様も魔力を切らすだろう」
「俺には槍があるから、ある程度は大丈夫だぞ?」
「どうだろうな。俺が太刀を抜くまでもない事は分かるが」
「何でそう言い切れるんだよ」
「誰が相手でも俺は勝つ。ただそれだけだ」
すると、ノエルの後ろから見るからに感じの悪そうな野良剣士がノエルに近づいてきた。
「おい、そこの可愛い子ちゃん?」
ノエルは誰が話しかけられているのか分からなかったが、その野良剣士の様子を見て自分だと分かった。ノエルは刀の鞘に左手を添えた。
「この大会は君みたいな子にゃ、少しきちぃぜ?どうだ?次の試合でオレに勝ちを譲ってくれたら、オレは君を娶ってしまおうかな?」
(何だこの男は……。今すぐに斬ってやりたいところだ……)
ノエルは刀を抜きたくなる気持ちを抑えながら、静かに野良剣士が離れるのを待った。すると、
「それでは第6試合!この大会でのダークホース!ノエル・フリューグント選手対トロイ・フロイス選手だー!!」
という実況役の兵士の声が響いた。
「おっとぉ!来たか!じゃ、リングで会おうぜ!」
そう言いながら、トロイと呼ばれた剣士は一足先にリングへと向かった。続けてノエルもリングへと向かっていった。
ノエルとトロイは、リングに立って審判の合図を待っていた。
(こいつだけは簡単には落とさん……。そうだな、奴の軟弱な精神に漬け込むとするか)
「それでは、決勝トーナメント第6試合!始め!」
開始の合図と共に、トロイは腰のサーベルを抜いてノエルに向かって飛びかかった。ノエルはそれを後ろに回って避けた後、ノエルはトロイに向かって驚きの行動に出た。
なんと、トロイの頭を太ももで挟み、そのままノエルはトロイの頭を地面に叩きつけた。
「「「おおぉぉぉーーーーっ!!??」」」
観客の男達はおろか、実況役の兵士や審判でさえもノエルの行動に驚きのあまり大声を出した。
「こっ!これはっ!?なんと大胆な!!なんとノエル選手!トロイ選手に、かの伝説の投げ技を披露したぞーー!!??これはもはやトロイ選手が羨ましくなるほどです!!」
トロイは、ノエルの臀部に顔を押し潰され、まともに息が出来なくなっていた。
「う……、く、苦しい……」
ノエルはそんなトロイをゴミを見るような目で、
「どうした?可愛い子ちゃんの尻だぞ?嬉しくないのか?」
と言った。
入場口からそれを見ていたレイとセトも、かなり唖然としていた。だが、レンはあまり唖然としていなかった。それどころか何故男達は大声を出していたのかすらも分からなかった。
「ねぇ、セト。なんであれで男の人たち大声出したの?」
とレンはセトに聞いたのだが、
「お前は知らんでいいッ!」
と言われてしまった。レンはますます分からなくなり、首を傾げた。
ノエルはトロイから離れ、審判にこう言った。
「気を失ったぞ?この場合どうなるんだ?」
「せ、戦闘不能とみなし、ノエル選手の勝利となります」
審判は、未だに驚きを隠せなかったが、すぐに立て直した。
「トロイ・フロイス選手、戦闘不能!よって勝者、ノエル・フリューグント選手!」
その声が響いている間に、ノエルは入場口へと戻ろうとした。すると、入場口の上の観客席にアレクシアがいて、ノエルに話しかけた。
「ノ、ノエルさんっ!いくら何でもあの決め方はないですよ!」
「何故だ?奴は俺に可愛い子ちゃんと言って娶ろうとしたんだぞ?だから俺はそれを利用したまでだ」
そう言った後、ノエルは入場口へと戻っていった。
【ちょっぴり用語解説】
〈魔防の大盾〉
本来はネルケディラ王国の重装兵の為に作られた盾。
後にネルケディラでも防具技術が発達し、高値ではあるが、一般国民用にも販売が開始された。
最後まで読んでくれてありがとうございます。




