ネルケディラ武闘大全決勝第1試合
【前回のあらすじ】
《クリシス》
スコピが見つからないと言う理由で試合が始まらないので、私が代わりに探すことにした。幸いなことにスコピはアレクシアが見つけてくれた。
スコピはスコルピオンの幼体だった。
見つけないでよかった。私はサソリがどうも苦手だからな。
「皆様、大変お待たせしました!そして、大変ご迷惑をお掛けしました!これより、ネルケディラ武闘大全の大目玉、決勝トーナメントを開始します!!」
実況役の兵士の元にスコピが戻ってきたのでようやく決勝トーナメントの案内が始まった。
「お?ようやく始まった。なんか遅かったね、セト」
控室にいるレンは、中々案内がないので控室の中にある軽食所でサンドイッチを40枚食べていた。
「ああ、なんかアクシデントでもあったんかな。とにかく!決勝第1試合ってお前だろ?だったらはよ行かねぇとじゃん」
「そうだね。1試合目からエイリークと戦う羽目になるなんて……。まあランダムだから仕方ないか」
レンはそう言うと、残りの手に持っていたサンドイッチを一瞬で平らげ、入場口に向かった。
(エイリークもかなり強くなってるはずだ……。前にやった戦法は通じないだろうし、油断せずに戦わないと)
「それでは、決勝トーナメント第1試合!レン・フリューゲル選手対エイリーク・アウグスト選手!なんと、前大会の準決勝で素晴らしい戦いを見せてくれた両者がまさかの初戦でぶつかったぞー!?」
実況役の兵士の語りと同時に、レンとエイリークはそれぞれの入場口から出て、リングへと上がっていった。
「まさか、初戦が君とはね。レン君」
「僕も驚いたよ。準々決勝くらいにぶつかるもんだと思ってた」
レンとエイリークはそう言葉を交わした後、審判がリングに上がってきた。
「決勝トーナメントのルールを改めて説明致します!試合の勝敗は、場外か戦闘不能、降参の宣言をもってつけたいと思います!くれぐれも、対戦相手を殺す事のないように、かつ全力を尽くして戦ってください!」
と審判が言った後、エイリークとレンはそれぞれ距離をとって開始の立ち位置に立った。
「それでは決勝トーナメント第1試合……、」
審判がそう言うと、レンとエイリークはそれぞれ剣を抜いて構えた。
(さてと……、久しぶりに技のぶつかり合いだな……)
(あの構え……)
エイリークはレンの剣の構えを見た。かなり特殊な構えなので少し見入っているのだ。
(どうやら本当に彼女の弟子になってたみたいだね……)
「……始め!!」
開始の宣言と共に、レンとエイリークはそれぞれ相手に距離を詰めたと同時に、お互いに剣を打ち合った。
エイリークは自身の得意とする、『突き』の剣技でレンを翻弄するが、レンは『受け流し』の構えでエイリークの突きを捌いた。
「レン選手!エイリーク選手の無数の突きに物怖じせず受け流しているぞ!!これはまさに、前大会の優勝者アンネロッテ・フリューゲル選手を彷彿とさせる動きだ!!」
エイリークは『突き』から『薙ぎ』の剣技に変え、レンに猛攻を浴びせた。レンは後ろに下がりながら、自身の剣を踊らせるかのように操り、エイリークの横薙ぎも縦斬りも華麗に捌いていた。
その様子を遠くから見ていたレイとハルは、以前とは違うレンの剣技に見入っていた。
「スゲェな、レンの剣技……」
「ああ……」
観客席から見ているアレクシアも、レンの剣技をじっと見ていた。
「これがレンさんの剣捌き……。なんだか別人みたいになってる……」
そう言った後、アレクシアは背中にある両手剣を抜いてじっと刃を見ながら、
(ボクも特訓すればああいう風に扱えるのかな……)
と思っていた。
その後もエイリークの猛攻は続いたが、レンは受け流してばかりで中々反撃に転じなかった。
「レン・フリューゲル選手!中々反撃をしないぞ!?何か策でもあると言うのか!?」
「レン君!どうして反撃してこないんだい!?」
思わずエイリークはレンに聞いた。するとレンは、
「まだその時じゃないさ!」
と言い、エイリークの薙ぎ払いを剣で受け止め、自分の剣をエイリークの剣に沿うように滑らせながら、エイリークの後ろに滑り込んだ。
レンは立ち上がって、エイリークの方を振り向いた。エイリークはレンに目掛けて剣を横に薙ぎ払った。
そこには、レンの姿はなかった。
「ま、また後ろに回ったのかな?」
そう言ってエイリークが後ろを向いても、レンの姿はなかった。
観客席からはざわめきが聞こえてきた。エイリークは何でざわめきが起こっているのかが分からなかった。すると、
「こっちだよ、エイリーク」
と言うレンの声が聞こえた。
「はぁ……、やっとまともに呼んでくれたよ……」
と言いながらエイリークは声のした方を向くと、レンはエイリークの剣の先端の上に立っていた。
レンとエイリークは、しばらくお互いを見つめていたが、エイリークはハァと一息つくと、
「降参だよ、レン君」
と言った。
「エイリーク・アウグスト選手、降参!よって勝者、レン・フリューゲル選手!」
という審判の声に続くように、観客席からは歓声が聞こえてきた。
「決まったーー!!なんとレン・フリューゲル選手、攻撃に転ずることなく勝利をもぎ取った!今大会レン・フリューゲル選手は前大会とは一味、いや五味違うぞ!?」
レンとエイリークはお互いに握手を交わした。
「あそこから攻撃してもよかったのに」
「いや、あんな事するの見せられたら、さすがの私も手は出せないよ。それに、もし攻撃に転じたとしても、君は何百回でも受け流し続けるとも思ったし」
「そっか。でも、僕だって受け流し続けるのは流石に無理かあるよ」
そんな言葉を交わした後、レンとエイリークは手を離し、お互いの入場口に戻っていった。
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