レンとセト
レンの旅は、かつての戦友であるレイとハル、そしてハルの妹であるアレクシアを迎えて賑やかになった。
アレクシアはレンとハルが思うよりも、早いスピードで実戦慣れしていた。
(あ、あれ〜?こんなトントン拍子で実戦慣れするなんて思わなかったな……。このまんまじゃ僕より強くなっちゃいそうな気がするけど……、そんなことないか)
(アレクシアのやつ……、思ったより早く実戦慣れしていってる……。これじゃオレが心配しなくなるのが2日後とかになりそうだな……)
一方アレクシアもアレクシアで、
(レンさんがどれだけ強いかは、お兄様からある程度聞いてたけど……。ゴーレム5体をたったの火炎一発で一遍に倒すなんて……。これじゃ、ボクが戦う暇がなくなっちゃいますよ……)
とレンのあまりの強さに驚いていた。
そんなこんなで、レン達はトルネシア王都から北にあるブラムの村に着いた。
「思ったよか、速く着いちゃったな〜」
「こんな村があったなんて知らなかったぞ……」
ハルは初めて見る村に対し、興味津々だった。
「あれ?お前知らなかったのか?トルネシアの兵士達の武器はここで作られてんだぜ?俺のこの斧も、ここの鍛冶師が作ったもんなんだ」
「え!?そうだったのか!?」
ハルはレイの腰に吊るしてある両手斧を見た。
「この村は鍛冶師たちが鍛冶場を造るのに、いい場所はないか?って所から始まった村なんです。そうしてできた鍛冶場に、たくさん人が集まって、家や商店ができ、最終的に今のこのブラムの村の形になったって言われてるんですよ」
「すげぇな、そんなん分かるのかよ」
「はい!トルネシア王国領のことだったら、本でたくさん読みましたから!」
そんなふうに笑顔で話すアレクシアを後目に、
(前もって、この地域になにがあるのかちゃんと調べてる……。これ、俺要らなくなるんじゃないのか……?)
とハルは自分がハブられるんじゃないかと心配した。
「ま、ここでちょっと休憩してから村を出ますかね〜」
「えっ!?色々見てまわらないんですか!?もったいないですよ!本によれば、この村は鍛冶師にとっての聖地とも言われてるんですよ!?」
レンはそんなアレクシアの熱量に押されかけた。
「えっ……?あ……、そうなんだ……。へ、へぇ〜……」
(やっばい……、この子完全に旅をエンジョイする気だよ……。僕なんかと大違いだ……。僕なんて村に来ても、道具屋で足りないもの買って、宿で休んで終わりなのに……。完全に見てまわろうとしてるよ……)
そんなレンを、レイとハルは横から見ていた。
((あのレンが押されてる……))
すると、レンの視界に見たことある人影が見えた。
「ん?あいつは……。ちょっと待ってくれよ……!」
レンはアレクシアを優しくどかして、1人の若い男性の元に向かった。
「あの顔……、やっぱりそうだ!あいつだ!」
レンは男性の元に駆け寄りながら大声で呼んだ。
「おーい!セトー!やっぱお前か!」
すると、セトと呼ばれた男性はレンの方を向いた。
「お?え!?レン!?嘘だろ!?」
「久しぶりだなー!おい!」
すると、セトはレンの頭を叩いた。
「久しぶりー、じゃねぇよ、おい!村にも帰らねぇで、俺にも手紙の一枚も寄越さねぇで勝手に旅に出やがってよ!心配したじゃねぇかよ!!」
セトは嬉しそうにレンと肩を組んだ。
「ごめんって!そういえばトーラスの村になんにも言わずで旅に出ちゃったな〜とは思ったんだよ……」
「思ってんなら、顔見せに来いよ!」
レンとセトが嬉しそうに話していると、アレクシアが2人の元に近づき、セトを指差した。
「その人、レンさんの知り合いなんですか?」
「知り合いもなにも……、僕がトーラスの村に落ちてきてからの友達だよ!」
「友達って……。まさかお前から言われるなんてな!ところで、この女の子は誰だ?お前のガールフレンドか?」
しかしレンは、ガールフレンドという言葉が分からなかった。
「いや、ただ一緒に旅をしてるだけだけど?」
レイとハルも、2人の元に近づいた。
「そういうの、言ったら傷つく奴もいっから、気をつけな」
「お!レイとハルじゃん!久しぶり!」
「あぁ、久しぶり。というか、オレたちのこと覚えててくれたんだな」
「当たり前だろ?戦友でも、友達は友達なんだからよ!」
「あっと、そういやお前自己紹介してないじゃん!してあげな!」
「あぁ、そっか!そうだよな!この女の子とは初めて会うからな」
セトはアレクシアの方向を向いた。
「俺はセト・ヴァールクス。トーラスの村の出身で一応、盗賊なんだ。ダンジョンのお宝探しなら任せときな!」
「ボクは、アレクシア・アルターレといいます。ハルお兄様の双子の妹です」
セトはその言葉を聞いて、ハルの方を見た。
「双子?にしても全然似てねぇな」
「ハルが父親の血を強く引いてて、アレクシアが母親の血を強く引いてるんだってさ」
「そっか。どうりでアレクシアの方は目がアメジストみてぇに綺麗なわけだ」
「え?お兄様の目も充分綺麗ですよ?」
「アレクシア。母さんの血を強く引いてるってことはエルフの血を引いてるって事だから、お前の方が目は綺麗だぞ?」
(そういや、ハルはエルフの人間のハーフだったな。耳以外人間と変わらねぇから忘れてたぜ。ハァ……。よくよく考えたら俺とセトだけじゃねーかよ人間なの……。レンもドラゴンの尻尾生えてっし)
レイがそんな事を思ってるのも束の間、
「そういや、セトはなんでここまで来たんだ?」
「こいつらだよ」
セトはベルトの両横にそれぞれ挿したバトルナイフを取り出した。
「かれこれ、半年は見てもらってないからな……。点検がてらお前来てっかな〜って思って来たんだよ。それに……」
「それに?」
「魔王レグルスの残党の事だよ。お前はもう知ってると思うけど、実はトーラスでもかなりの噂なんだぜ?」
「へぇ……」
(王都から西に大きく離れたトーラスでも伝わってるのか……。こりゃ、ただ者じゃなさそうだ……)
「んな暗い顔すんなよ!もう俺は宿の部屋取ってあんだよ!お前ら4人の分も追加してあげっから、積もる話は宿でしようぜ?」
「それもそうだな。こんなとこで立ち話すんのは、ちっと嫌だしな」
「悪いな……。オレたちのために予約を追加してくれるなんて……」
「いいって!助け合うのが友達だったり、戦友ってもんだろ?」
「助け合うのが友達か……。久々に聞いたな……、それ」
「ヘヘッ、だろ?」
レン達4人はセトに宿の予約を取ってもらい、宿で休むことにした。
【ちょっぴり用語解説】
〈火炎[フレア]〉
火の球を飛ばす初歩的な攻撃魔法。
強化すると、大火炎[ハイフレア]、超火炎[メガフレア]になる。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
よければアドバイス(読みやすくなる工夫だったり)とかをくれると嬉しいです。