レイとレイカ
【前回のあらすじ】
《レイ》
レンとセトに遅れて、デヴェロピアに着いた。
ハルはクラフターから転げ落ちて怪我するわで大変だったぜ。
それにしても、道具屋の前にいた人影なんだが……、ちょっと気になって調べることにした。1人で動くのはオレは慣れっこだから安心しな。
人影はどんどんと表の通りとは違う場所へと進んでいた。レイは引き返す事も考えたが、それでも好奇心には抗えず、人影にこっそりとついて行った。
(あいつ……、どんどん裏っかわに進んでやがる……。何考えてんだ?)
そして、その人影は路地裏へと入っていった。レイもその路地裏に入っていったが、その先には行き止まりしかなかった。
「なっ……?どこ行きやがったあいつ?」
そう呟いた次の瞬間、後ろから
「俺をつけているのは貴様か?」
という声と同時に、レイの首の後ろに刃物のような物を突きつけた。レイがハッとして後ろを振り向くと、そこには刀を構えたノエル・フリューグントがいた。
「あっ……!お前あん時の……!」
「む?なんだ、あの小娘の仲間か」
「いやいや……。お前も小娘じゃないのか?」
「その事は口に出すな。それに、なぜ俺をつけてきた?」
「あ、いや……。あの冒険者、何か妙だなって思ってついてきただけだよ。まさかノエル・フリューグントだなんて思いもしねぇだろ?」
すると、ノエルは刀を納めて呆れた表情でため息をついた後、
「それだけの理由でつけてきたのか?バカバカしい」
と言った。
「ま、正体は分かったんだ。オレはあいつらの元に戻らせてもらうぜ」
そう言って、レイはノエルを後にして戻ろうとした。しかし、
「待て」
と言われて、レイは仕方なく待った。
「何だよ?オレはお前に用はないぞ?」
「貴様に用がなくとも俺にはある。貴様、なぜ俺の母の名を知っていた?」
「なんでって……。まだオレがお前の故郷を滅ぼしたって思ってんのか?」
「本当に俺の故郷を滅ぼしたのがレグルスだったと分かった今、最早貴様なんぞ眼中にない。だが、それならなぜ貴様のような人間が俺の母、レイカの名を知っているんだと思っただけだ」
「……」
「どうした?さっさと言え」
レイは黙っていたが、しびれを切らしてため息をついた。
「分かったよ。こうなったら洗いざらいだ」
そう言って、レイはノエルの方を向いた。
「オレがレイカ・ケンザキの名を知っている理由は、一度見たことがあるからだ。親父と一緒にな」
それを聞き、ノエルは動揺した。
「何……?一度見たことがあるだと?」
「もう10年も前の事だけどな。その時のオレと親父は世界中を巡っていたんだ。ある時はトルネシア王都に行ったり、またある時はリュドミーラ王都に行ったりして、色々楽しかったぜ。そんな時、遠く離れた辺境の島に剣聖と呼ばれる剣士がいるって噂を聞いてな。オレも親父も一目見たくて、わざわざ船でアマツクとかいう島に行ったってわけだ」
「貴様……、アマツクに来たことがあるのか……」
「レイカって奴と知り合ったのもその時だ。そいつの剣技を親父は実際に食らってみたいって言って、そのまま手も足も出ずにやられたのを今でも覚えてるぜ。そんでもって食事してる時に話していたんだが、あいつは自分にも子供がいるって言ったんだ。出来は悪いが、それでも子供にしてはかなりの腕前の持ち主だったって言ってたんだぜ」
「そんな事を言っていたのか……。む?待てよ……。母君は滅多によそ者とは剣を交えないはずだ……。それなのになぜ、貴様の父なんかと手合わせする事になったのだ?」
「そりゃ……、親父がしつこく頼んだからだよ。デコに砂がつくまで何度も土下座してたぜ?」
「そうなのか……」
「ま、オレが話せんのはそんだけだ。そろそろおイトマさせてもらうぜ。明日はネルケディラ王都に行かなきゃだしな」
そう言ってレイは立ち去ろうと後ろを向いた。すると、
「ネルケディラ王都に?と言うことは、貴様あの大会に出るのか?」
ノエルがそう聞いてきたのでノエルの方を向き返した。
「ああ。あいつらには言ってねぇけど、オレも出ようと思ってんだ。なんせ、セトもレンも出るんだ。だったら俺も出るしかねぇと思ってさ」
「レン・フリューゲルが出るのか!?」
ノエルは、突然驚いたように言った。
「え?そ、そうだけど」
「そうか。だったら俺が出る価値はあるか」
「なんでだよ?まさか、レンと戦いたいのか?」
「戦いたいわけではない。あの時の決着を着けたいだけだ。復讐は望まぬ形で終わったが、奴との決着はまだ着いていない。英雄気取りの剣士よりも、剣聖の子である俺の方が上だと言う事を、奴に教えてやる……」
「ふーん……。よく分かんないけど、レンもお前が出るって分かったら、変に張り切りそうだな……」
そう言いながら、レイはノエルの元から立ち去った。
ノエルは自身の刀を見ながら、
(あの母君も、少しは俺の事を認めていたのか……)
と思っていた。
その頃、レイはハルとアレクシアの元に戻ろうと、スイーツ屋に向かっていた。そして戻ってきた瞬間、レイは目を疑った。
「ちょっ……!?何だよこの状況!!」
なんと、スイーツ屋の前のテーブルの上には多くの皿が積まれていた。
「あ、レイ……」
「おいおい、しっかりしろよハル!何がどうしてこうなったんだよ!!」
「いや、俺は普通にアレクシアにスイーツ買ってあげてたんだよ……。まさかこんなに食べるなんて思わないだろ……!」
そして、アレクシアはまた皿を積み上げてハルにこう言った。
「ねぇお兄様!次はこっちのシフォンケーキが食べたいです!」
それを見てさすがにマズいと思ったのか、レイはアレクシアを止めた。
「なぁアレクシア!もうそのへんにしとかないか?こいつの財布はもう限界らしいし、それにそんだけ食ったら太っちまうぞ!」
それを聞いて、アレクシアもようやくこれ以上食べるのはマズいと思って、この辺で止めた。
「わ、分かりました……」
「やれやれ……。ちょい、店主。お代は頂戴したのか?」
「え?あ、はい。全部頂きました」
「そっか、なら行くぞ!」
そう言って、レイはハルとアレクシアを引っ張って、店を後にした。
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