振り返れば
【前回のあらすじ】
《セト》
魔王レグルスと戦っている時に俺の中に目醒めたあの力、使おうと思っても全然発現しない。俺に何か足りないって言いてぇのか?
そう思ってたらレンが散歩に誘ってきた。そして俺の力が発現しない事を俺に聞いた。
なんでもお見通しって事か。
レンとセトは歩いていると、急にセトが川に向かって走り出した。
「お、おい!どこ行くんだよ!」
「この川見たら、やる事は1つしかねぇだろ?」
セトは、川の側に来たと同時に、平たい石を手にとって川に投げた。石は3回跳ねて沈んでいった。
「な?小さい頃お前もやったろ?」
「あー、言われてみれば!確か、セトが教えたんだよな?この遊び!」
「ああ。お前がトーラスに落ちてきた時から大体2カ月過ぎた辺りだっけ?確か、お前が剣の素振りしてる時に、俺が投げようとした石がすっぽ抜けてお前に当たっちゃって、それの詫びで教えたんだったな。懐かしいな……、教えてばっかで、すぐにレンの投げた石が6回も跳ねた時の事、今でも覚えてるぜ」
そんな会話をしながら、レンとセトは川から離れた。
しばらく歩いていると、今度はレンが柵に向かって走り出した。
「ちょっと!置いてくなよ!」
セトがレンに追いつくと、そこには練習用の木剣と的があり、セトは懐かしく思った。
「あー、ここか……。確か、俺はここでお前に殺されかけたっけ……」
「そんな事あった?」
そう言われると、セトは近くにあったカカシを拾った。
「ほら、思い出してみろよ。お前がこいつを的にして剣の練習してる時に、俺が後ろから話しかけて……」
「あーっ!そうだ!セトに思いっきり攻撃したんだった!」
「そう。当たりどころが悪かったら死んでたぞ。脇腹に思いっきり振るもんだから、すっげえ痛かったぜ」
「そういえばそんな事あったな……。確か、僕がトルネシアの兵に志願する前の12歳を超えた時だっけな……。今思うと、ホントに申し訳ない事しちゃったな……」
「ホント、あの時のレンの表情すっげえ怖かったぜ。俺の事をミュータントか何かと思ってんじゃねえかって顔だったぞ?」
セトはレンに話した事を思い出しながら言った。
「そんな顔してたのか……」
「それが今じゃこのアホ面だからな。人生何が起こるか分かったもんじゃねえ」
(アホ面って……。もうちょっといい言い方無かったのか……?)
そうして、レンとセトはトーラスの村から離れた森の中へと入っていった。
「俺とレンがよく遊んでた川から、レンがいつも使ってた特訓場と来たら、やっぱ最後は『あそこ』だよな?」
「やっぱり、セトもおんなじ考えだったか。そうだよな!やっぱりこうして歩いてて最後に着く場所といえば……」
レンとセトが森を抜けると、急に平原が現れた。そこには、特訓用のカカシや武器の手入れをする作業台、しかも1対1での手合わせをする時に使う簡素な試合場まで完備されている。
「僕達2人だけの特別修練場!こうして思い出を巡りながら歩いていると、結局最後にはここに来ちゃうんだよな〜」
「こうなるまでに、色々とかかったよな……。まずいい感じに隠れて見えない感じの小さな平原を見つけて……」
「そこからこんな感じに試合場とか作ったりあそこにあるカカシとか用意したり……」
レンがそう余韻に浸っていると、セトは使われていなくて少しボロボロになってしまった作業台を指さした。
「最後にはあそこに作業台置いたんだよな。剣やナイフの切れ味が悪くなったら困るって言って」
「そうだよな……。2人が余裕で入るくらいの小屋も作ろうとしてたよな?」
「結局、金が足りなくて木材買えなかったけどな」
そう言いながら、セトは試合場に腰を下ろした。
「ここの修練場、まだ父さんに気づかれてないといいけど」
「でも、村長の事だから意外に見つけちゃうんじゃない?」
そう言って、レンもセトの隣に座った。
「まあ、それもあるかもな」
「え?それってどういう……」
「夕暮れになるまで特訓した時あったろ?帰ったら父さんからどこで何してたんだ?って聞かれたんだよ。まあ、そん時は錬金の素材集めって言って何とか誤魔化したけどさ」
「村長怒らなかった?」
「いんや。怒るどころか、『早く帰ってこなかったからセトの分のハンバーグ、セイラが食べちゃったよ』って笑いながら言ってたぜ」
そうセトは寝転びながら言った。
「へ、へぇ〜……」
「俺が錬金術やりてぇって言った時も、何も言わずに釜とレシピ本くれたからさ。意外と俺のやりたい事、何となく分かってんじゃねぇの?知らんけど」
「ふーん……」
レンがセトの話を聞いていると、突然セトが立ち上がった。
「さてと!ここに来ちまったからには、やるんだろ?」
「何を?」
「手合わせするっつったのどこのどいつだよ!」
「あっ、そうだった!」
「ったく……、俺が言わなかったら忘れてたな?」
レンは、セトの質問に対し、笑みを浮かべながら立ち上がって答えた。
「いや、まさかここでやるなんて思わなかったからさ。意外とびっくりしてるだけ」
「そうかよ」
そうして、レンとセトは試合場に上がってお互いに向かい合った。
「こうしてると、僕とセトが始めて手合わせした時の事思い出すな……」
「だな。けど、あの時とは一味も二味も違うんだぜ?」
そう言いながら、セトはナイフを構えた。
「それはこっちもだよ」
レンもそう言いながら、剣を構えた。
「それじゃ……、始め……」
「あ!そうだ!重要な事忘れてた!」
レンが言おうとした事を遮って、セトが何かを思い出したかのような口調で大声で言った。
「な、何!?」
そう聞かれて、セトはレンに指を指してこう忠告した。
「お前!間違っても過剰強化とか使うんじゃねぇぞ!?」
「な、何で!?それじゃ、手合わせの意味ないじゃん!」
「お前、その理論だと『俺を殺す』って言ってるようなもんだぞ!?いくら俺が強くなったって言っても、さすがにお前の過剰強化は耐えられそうにねぇんだよ!」
「もう……、分かったよ。過剰強化はなし!これでいいんでしょ!?」
「むしろ、俺みたいなただの人間と手合わせする時はいつもそれで居てくれ……」
セトは、困惑した表情でレンに言った。
「じゃあ改めまして、始めるか!」
「ああ!過剰強化無しだけど、手ぇ抜くなよ!?」
そうして、レンとセトは刃を交えた。
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