レンの考え
【前回のあらすじ】
《ハル》
レンは何故か俺を連れて書庫に来た。そして、あいつが俺のいるテーブルの上に置いたのは、どれもエーテルについて書かれた本だった。
その中には黒く塗りつぶされているものもあった。流石の俺も黒塗りされている箇所は読めないからな。何とかして読めるようにはしないと。
時を同じくして、レン達は客室でそれぞれ暇をつぶしていた。
レイは一人用のソファに横になって寝ており、レンは剣を手入れをしており、ハルは塗り潰されたページがある本を机の上に置き、なんとか黒いインクを消そうとしていた。クリシスはというと、既にネルケディラへと帰還していた。
レンは、ハルの作業が気になり、ハルの元に寄った。
「そのインク、ポーションで消せるのか?」
「ただのポーションじゃねぇよ。インクに一滴垂らして使う修正液だよ」
「へぇ〜、そんなものあるんだな」
「ああ。父さんも手紙書く時、字を間違えた時に使ってたよ」
「ふーん」
「まあ、お前は何か書くって事がないから必要ないかもな」
そんな会話をしている次の瞬間、扉が勢いよく開いたと思ったら、ノエルが入ってきた。
その扉が開く音で、レイは思わず飛び起きた。
「うわっ!?な、何だ!?敵襲か!?」
そう言って慌てるレイなんて気にも止めずに、ノエルはレンの胸ぐらを掴み、そのまま壁に追いやった。
「な、何だよ?」
「何だじゃない。貴様、ただの人間にレグルスを倒しに行かせたと聞いたぞ。正気なのか?」
「貴様って……。ちゃんと名前で呼んでくれないと……」
「正気なのかと聞いているんだ。さっさと答えろ」
レンはため息をつき、掴まれているノエルの手を放した。
「正気だし、本気だよ」
「……っ!貴様ふざけているのか!?」
レンの答えに納得が行かなかったのか、ノエルは声を荒らげた。
「よりにもよって、そこら辺の人間に行かせるとは……。貴様、何をしてるのか分かってるのか!?」
「分かってるさ。それに、そこら辺の人間じゃない。セト・ヴァールクスに……。僕の初めての友達に行かせたんだ」
「何を寝ぼけた事を言っているんだ……?レグルスはその辺の雑魚では話にならないんだぞ!?」
「その事は既に経験済みです」
「なら、何故自分で倒しに行こうとしない!?」
「はぁ……、もうこの際だから言っちゃうか」
レンのその言葉に、レイとハルもレンの方を向いた。
「はっきり言って、今のレグルスには今の僕じゃ敵いっこない」
「なっ!?」
「はぁ!?」
レンの言葉に対して、レイとハルはそれぞれ絶句した。
ノエルも驚きのあまり、言葉が出なかった。
「何……だと?」
「まあ、色々修業積んで強くなれば、勝てるかもしれないけどさ。あのレグルスだ。僕の動きなんてもう大体分かってるでしょ」
「お、おい!ちょっと待て。それだったら何で俺とかクリシスとかじゃなくて、セトにしたんだ?」
思わずレイが話に割って入った。
「それは、ハルにもう2割は話してるよ」
「いや、それっぽい事言っただけで、1割も話してないぞ」
ハルも話に割って入った。
「さっき、書庫でエーテルの本漁っただろ?」
「まあ、そうだな」
「この事はセトにも言ってなかったけど、僕はエーテルの流れがある程度分かるんだよ。それでセトのエーテルの流れを見たんだけど、かなり流れが強くなってて、いつ決壊してもおかしくない状態だったんだよ」
「あ!そういう事か!」
急にレイが大声で言うものなので、レン達はレイの方を向いた。
「レグルスとの戦いで決壊するかもしれないっていう事なんだな!」
「うん。だから僕はセトをレグルスの元に行かせた。『今のセト』じゃ敵いっこないけど、セトのエーテルの流れが決壊してしまえば……。その時がレグルスの2度目の最期だ」
「納得がいかないな」
ノエルはレンの考えを聞いた上で答えた。
「仮に、そのセトとかいう奴のエーテルの流れが決壊したとしても、レグルスに敵わないんじゃないか?」
「少なくとも、負けることはないさ」
「フン、どうだろうな。どれだけエーテルの流れが強かろうと、人間風情がレグルスに勝てるわけがない」
「そう言って、ノエルも負けたんじゃないの?」
レンがそう言った時、後ろを向きかけたノエルが再びレンの方を見た。
「……今何と言った?」
「お前はセトがレグルスに勝てるわけがないって思ってるでしょ。でも、そう言ってノエルもレグルスに戦いを挑んで負けたんだろ?」
「……」
「なら、大人しく怪我を治したほうがいいんじゃないの?まあ、その間にレグルスはセトに倒されてるかもしれないけどさ」
レンが言ったそんな些細な一言が、ノエルを苛立たせた。
「貴様、俺を馬鹿にしているのか?」
「そうじゃないよ。ただ、傷だらけのそんな状態でレグルスに挑んでも、返り討ちにあうかもしれないから、じゃあ無理して戦いに行くよりも、セトに倒してもらった方がいいんじゃないかな〜って思っただけだよ」
そう言った次の瞬間、ノエルはレンの頰を思いっきり殴りつけた。
「お、おい!?」
「何やってんだよ!」
レイとハルは、それぞれノエルに聞いた。
「貴様の手を借りようとした俺が馬鹿だった。舐めやがって……!」
ノエルは直ぐ様部屋を出て、扉がバタンと大きな音を立てるほど勢いよく閉めた。
「痛って……。何も殴ることないじゃないか……」
「何か良くないことでも言ったんじゃねぇの?お前そういうとこあるし」
客室を出たノエルは、そのまま城の外へと歩いていった。
(無理に戦いに行くより、他人にレグルスを倒させろだと!?ふざけているのか、あいつは!)
そんなレンに対する怒りを心の内に留めながら、王都の外へと出ようとしたノエルを、後ろから追ってきた兵士が引き止めた。
「ちょっと!そんな怪我でどこに行こうと言うんだい?」
「うるさい!俺に構うな」
「で、でも……。王様が君に会いたいって言ってましたよ」
「トルネシアの王が?くだらん」
そう言ってノエルは王都を出たが、直ぐ様トルネシア王がノエルの後ろに立った。
「君はそう思うかもしれない。だが、私には君に用事があるのでな」
ノエルは、仕方なく城へ戻るトルネシア王について行った。
(くだらん用事だったら、すぐに出ていってやる)
ノエルは、そう思いながらトルネシア城に戻った。
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