戦友との再会
レンは兵士から、レイとハルがどの部屋で待っているのかを聞いた。どうやら客室で待っているらしい。
「客室で待ってるって聞いても……、この城、客室どんだけあると思ってんだよ……」とレンは思わず呟いた。
ちなみに、トルネシア城は一般人や貴族、商人や旅人の出入りが盛んな為、客室が15室もある。客室にはアルファベットも数字も振られていない為、レンは全部の客室を片っ端から探す他なかった。
レンは客室の前に立ち、扉を開けて確認するという作業を繰り返した。
「ここか?いや違う……。あ、この部屋か?いや、ここでもない……」
そうこうしている内に、1階の客室を全部確認し終わり、2階の客室を確認し始めた。
すると、12室目の客室を開けた瞬間、
「レン?おい! レンじゃねぇか!! 久しぶりだな!」
と言う声がした。
「この声、レイか!?」
「そうだよ! こんな声してる奴、俺の他に誰がいるって話だよ!」
レンとレイは再会を喜び、ハンドシェイクを交わした。
すると、そんな2人に割って入るかのように、
「2年って案外長いな……。あの厳しかったレンがここまで丸くなるなんてな……」
とハルは言った。
それを聞いて、レイも不思議そうにレンを見た。
「確かに、ちょっと髪が縮んだか?」
「え?そっちに注目するのか?」
ハルは驚いた。ハルが性格の事を言っているのに対し、レイは外見の事を言ったのだ。
「まあ、僕の2年の間で色々あったんだよ。そういうレイこそ、全然背伸びてないね!」
レイはその発言を聞いて、
「うるせぇな!余計なお世話だわ!」
と言いながらレンを小突いた。
「全く……。そういうデリカシーが欠けた発言も相変わらずだな……」
ハルは苦笑いしながら呟いた。
レイはレンから離れて、ソファに深く座った。
「そういや、お前いつになったらまた旅に出るんだ?」
レンはそんなレイの問いに対し、
「え?明日になったらまた出るけど?」と答えた。
ハルはその発言を聞いて、思わず口に含んだ紅茶を噴き出した。
「はっ!?1日でまた旅に出るのか!?」
「うん。だって幸せと強い奴は待っても来ないって言うじゃん?」
レイは思わず、
「強い奴は待っても来ないって聞いたことねぇぞ……」と言った。
「それに、今日は宿から走ってここまで来たんだから、十分ゆっくり出来ると思うけど……」
レンはバッグから地図を出して、机に広げた。そして、地図のある所を挿した。レンがトルネシア王都に来る前に泊まった宿がある場所だ。
「ほら、ここからトルネシア王都まで走って来たんだよ」
その発言に対し、レイとハルはお互いに顔を見合わせた。
「なぁ、ハル。今レンが挿した場所からここまでってさ、歩いて30分くらいかかるよな?」
「ああ。多分走っても15分か20分はかかるな」
レンはレイとハルを見て不思議そうな顔をしていた。
「何言ってんだよ。こんな距離、10分足らずで走りきれるだろ?」
「「はぁ!?」」
レイとハルは驚くしかなかった。そしてレイはレンに近づき、
「この10分足らずで走りきれるって、どんだけ速えんだよお前!!」と言った。
ハルは呆れながらソファに腰かけた。
「お前の事なら、滅多なことじゃ驚かないって思ったけど……、そこまで来るとコメントに困るぞ……」
すると、何処からか誰かのお腹の音がした。
「あ、いっけね。もうそんな時間か。じゃ、レイ!ハル!また僕がトルネシアに戻った時にまた会おうな!」と言いながら、レンは部屋の扉を開けた。
「え!?ちょっと待て!お前もう行くのかよ!?いくらなんでも早すぎんだろ!」とレイが引き止めたのだが、レンは部屋を出ていった。
レイとハルは、ただ呆然とするしか無かった。
レンはトルネシア王都の宿に行き、部屋の予約を取った後に、食事をする為に酒場へと向かった。
レンが酒場に入ってすぐに店主から
「お!トルネシアの英雄様でねぇか!いや〜、ここを選ぶとはお目が高いね〜!」と声をかけられた。
(トルネシアの英雄ね〜。そんな呼ばれ方もされてたっけ……)と思いながらレンは4人席に1人で座った。
レンは店主に向かって、
「おっちゃん!ドラゴンの尻尾ステーキ10枚とバジリスクのもも肉シチュー10皿、あとキャベツスープ5杯とトルネシアスペシャルサラダ15皿に小麦パン20個頂戴!」と大声で言った瞬間、周りの客は全員レンの方向を向いた。
客の1人がレンに向かって、
「お、おい!あんた酒もなしにそんな量食べ切れるのかよ?」 と聞いた。
「大丈夫!足りなくなったら追加注文すればいいんだから!」
レンがそう言った瞬間、周りの客は黙るしかなかった。
そして、レンの注文通り、ドラゴンの尻尾ステーキ10枚とバジリスクのもも肉シチュー10皿、キャベツスープ5杯とトルネシアスペシャルサラダ15皿に小麦パン20個がレンの座っている机にびっしり並んだ。
「そういや今日何も食べてなかったな……。いただきまーす!」
レンは黙々と食べ進めて、あれだけあった大量の料理が5分足らずで無くなった。
周りの客はそんなレンの姿を見て、
「おい、マジかよ……。もう無くなっちまったよ……」
「酒なんてなくて充分って事かよ……」
「あれだけ食ってなんで平然としてるんだよ……」
「あいつバケモンかよ……」
とざわついた。
それを厨房から見ていた店主も、目を見開く他なかった。
「近くで見たことなかったけど、トルネシアの英雄様ってあんだけ食うのかよ……。城の貯蔵庫を空にする勢いでねぇか……」と呟いた。
そんな事はつゆ知らず、
「まだステーキ10枚は行けそうだけど、ここまでにしとこっと。ごちそうさまでした」とレンは手を合わせた。
その発言を聞いて、周りの客は、
「おい、嘘だろ? まだ食えるのかよ……」
「俺より年下なのに、俺より食うじゃんか……」
「どうなってんだ、あいつの胃袋……」
「ホントにバケモンじゃねぇかあいつ……」
とまたざわついた。
その夜、レンは剣とバッグ、そしてコートと帽子を宿の部屋の机に置いて、ベッドに寝転んでいた。
「久々にトルネシアに帰ったけど、色々と変わってないな……。2年って意外と長いし、王都の外は色々変わってるから王都も変わってると思ったけどな〜。ハア……、そういやトーラスの村にも帰ってないな……。
僕の家2年も放置してるから、村長売ってないといいけど……。まあ明日はトルネシア王国領の北にでも行こうかな。今日はもう寝て明日に備えよ」
レンは布団に潜り、眠りについた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
よければアドバイス(読みやすくなる工夫だったり)とかをくれると嬉しいです。