語られる『ベスティア戦争』(中編)
※途中でクリシスが語る視点になります。
そして、その後にトルネシアとネルケディラである程度の王都の守りや、攻め込んできた時にどうするかを話し合った。
その時のネルケディラは、魔法に関する事なら右に出る者はいなかった。だが、トルネシアと比べるとどうしても両騎士団の間には『実戦経験』の差があったんだ。
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「実戦経験?それって、ネルケディラ側が実戦した事がないという事ですか?」
アレクシアは、思わずクリシスに聞いた。
「その逆だ。実戦経験がないのはトルネシアの方だったんだ」
「実戦経験無かったのか!?トルネシアって!」
思わずレンが口を挟んだ。いくら彼がトルネシアの騎士全体をまとめる将軍だった時があったとしても、彼は昔のトルネシアの事は全く知らなかったのである。
「お前、知らなかったのか!?」
「いや、てかトーラス自体、昔のトルネシアの事を知ってる人少なかったし……。何だったら村長も昔のトルネシアの事は知らなかったぞ」
「トルネシアは騎士の一人ひとりが武芸に長けている者ばかりだったからな。そう思うのも仕方ない。それに、トーラスはトルネシア王国領の辺境に滞在しているから、王都で何があっても伝わりにくいんだろう」
「あっ、それもそっか」
「全く……、話を元に戻そう」
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トルネシア王国は実戦経験がない。すなわちいざ攻め込まれたら、絶対に混乱する事だろう。だから、私はレンに色々と提案した。王都を守る魔障壁の強度だったり、上空から攻め込まれた時の対空手段だったりをな。だがこいつときたら……、
「そうなった時は、その時考えればいいだけだろう」
と言ったんだ。
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「レンさんのその時はその時って考え方、昔からそうだったんですね……」
アレクシアはレンの方を見た。
「え?だって、こっちにはハルがいるし、それに毎回毎回、相手がおんなじ攻め方するかなんて分からないでしょ?」
「それはそうなんだが……」
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戦術はあまりこいつに聞き入れてもらえなかったが、トルネシア国王に話を通してくれたおかげで、トルネシアとネルケディラ、双方のどちらかが魔王の侵攻を受けても良いように、お互いの様子を定期的に伝える事になった。
そして、『その時』は起こった。
再創歴860年の2月の半ば頃、トルネシア王国領に宙に浮かぶ城が現れた。レグルスの住まう魔城だ。その時の私は、まさかネルケディラより先にトルネシアに侵攻するとは思わなかったさ。私はすぐに兵士達を率いて、トルネシアへと向かった。
私がトルネシアに着くと、既にレグルスの部下達はぞろぞろとレグルスの魔城から落ちてきた。空からの奇襲にも注意を呼びかけ、私達はただ目の前の魔物達に集中した。幸いにも、攻め込んできたのは下級の魔物達ばかりだった。だからあまり苦戦せずに退けた……と願いたかった。
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「願いたかった?それって、下級の魔物達に紛れて強い魔物がいたとかですか?」
「それはもっと先の事だな」
「最初は戦い慣れした兵士じゃなくて、まだ入団して間もない兵士とかを送りつけてくるんだよ」
「そういうものなんですか?」
「ああ。というか、これは正直基本の『基』だな」
「そう、最初に送られた魔物達は『質』はどうということはなかった。問題は、『量』だ」
「量……、ですか?」
「ああ。余りにも大量に送りつけるものだから、私とレイは対処にかなり時間を費やした」
「その時の魔物達ってどんな感じだったんだ?」
ハルが、口を挟んだ。
「あの時のお前では絶対に対処しきれなかったかもしれない程だ」
「ひぇ……、俺その時トルネシア城の中にいて良かった……」
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正直言って、レンが遅れてこなければもっと早くに殲滅できた。その後、城からある者が出てきた。その時の私は、はっきり言って今まで対峙した魔物や敵国の強者とは一線を画す威圧感に押されそうになった。
その者は言った。
「ごきげんよう、私はレグルス。魔物達を統率する魔王にして、お前達人間の創り出した世を終わらせる者だ。今回の襲撃は挨拶のようなものだ。こんな程度で潰れてしまう国ではつまらないからな」
これが魔王レグルスとの最初の対峙だ。一見人間のように見えたが、耳を見て私は息を飲んだ。その者が『エルフ』だったからだ。
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「ちょっと待ってください!」
アレクシアは思わず、机を叩きながら立ち上がった。
「魔王がエルフだった、ってどういう事ですか!?エルフは昔、人間と友好的な関係を確実なものにしたと伝わっていますので、そんなエルフが人間に敵意を向けるなんてありえません!」
「それだ」
「え?」
「今のエルフは人間に対して友好的だ。そのエルフが人間に敵意を向けるとは思えない。今でも私は、それが引っかかってる」
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だから私は、思い切って奴に聞いた。
「お前、エルフか?何故この様な真似を?」と。
そうしたら、奴は愚問だと言いたいかのような顔で私に言った。
「何故かだと?フッ、そんな事に答える程、私は暇ではない。強いて言えば、このベスティアを私の世界にする為だ」
そう言って、奴はレイの止める声に見向きもせずに城へと帰っていった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ベスティア戦争はこの章では重要な事のため、3回に分けさせていただきます。




