新皇帝の即位前のゴタゴタ
新皇帝、ヴィルヘルム4世の任命は神聖帝国議会において大きな混乱をもたらした。神聖ローマ帝国憲法では、皇帝は選帝侯評議会と庶民評議会の双方によって任命されると規定されているが、現実的には皇帝は儀礼的な存在であり、選帝侯評議会が指名した皇帝を庶民評議会が追認するという形で皇帝が即位する事が一般的だった。皇帝の承認が庶民評議会において大きな政治問題となることは、現行の民主的憲法が策定されてからは無かった。しかしながら、ヴィルヘルム4世の場合は異なった。彼は民主主義や立憲君主制に対する批判をたびたび繰り返しており、左派からはもちろん、右派の庶民評議会議員の一部からも危険視されていた。憲法では明確に皇帝の政治的発言を禁止していないため、もしかすると儀礼的存在としてではなく、政治的実権を持った皇帝として親政を行うのでは無いかという危機感が議員の中に広まっていたのだ。選帝侯の間でも危機感は広まっていた。本来は先皇帝の嫡男であり圧倒的に有利な立場であったフリードリヒ・ヴィルヘルムが、対抗馬にたった6%差に迫られたことがそれを表している。
庶民評議会においては二大政党がほとんどの議席を占めており、他の政党は政治的に無視されることがほとんど常態化していた。右派で、議会の59%にあたる295議席を占めるキリスト教民主党と、左派で、議会の37%にあたる185議席を占める自由民主党である。(残りは無所属や諸派である)
最終的に、キリスト教民主党が党議拘束で任命賛成に投じることで、庶民評議会においても、ヴィルヘルム4世の即位が承認され、晴れて正式な次期皇帝になったのである。