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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
4章 『本能の洞窟』へ
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4-21 調査終了

「おい無事だったのかよ心配させやがって!」


「えーと、ごめんなさい……勝手に動いてみんなに迷惑かけちゃった……」


空間の中央辺りで止まったバイクに走って近づき、ミエリの全身を確認しながらアフタレアが嬉しそうに叫ぶ。そんな彼女達に、ミエリは申し訳なさそうに頭を下げ、その拍子にうなじにしがみつくレガナが周囲に晒される。


「う……ご、ごめんなさい……これでいいんでしょ!」


皆の視線に逃げ場の無くなったレガナも、素直にではないが一緒に謝る。


「本当にね、かなり迷惑かかったよ。でも無事で良かった、死んでたら死体探すのめんどくさかったし、グロブスタや原生生物に食べられてたらそれこそ『再生の洞窟』で復活するのを待たないといけなかったからね」


「本当ですよ、でもミエリさんとレガナさんが無事で良かったですねー!これであとはビルセティさんを見つけて入り口まで戻れば問題はないかと!」


「良かった、この二人と妖精は君たちの仲間なんだね」


のんびりと互いの無事を喜び合うパーティに加瀬が近づき、その様子を見て安心してホッとしたのか銃を下ろしながらそう言った。


「二人ぃ?いや、この男はアタシらも知らねえぞ?」


「そういえば、ミエリこいつって誰なの?このダサいバイクはあんたの物なの?」


「ダ、ダサッ……!?」


加瀬の言葉に返答するように、今になって黒いバイクのハンドルを握っているアダレムにメンバーが言及する。そして問いかける中で発したシャラムの『ダサいバイク』という発言にアダレムは誰が見ても明らかなほど動揺してしまう。


「そ、そんな直球に言うのやめよ?この人わたしを助けてくれたし……わたしもそれくらいしか知らない関係だけど」


「そうかそうか、つまり君はこの男が誰が分からないんだな」


控えめにシャラムに注意をしながらミエリが間を取り持つ、それを聞いた加瀬はすぐにハンドガンをアダレムに突きつけた。


「ん?」「おいおい、穏やかじゃねえな」「えっ!?加瀬さんどうしたんですか!?」


加瀬の思わぬ行動にシャラム、アフタレア、ユーエインの三人が動揺し、ミエリとレガナは突然の事にリアクションすらできなかった。しかし、当の銃を突きつけている側と、突きつけられた側は顔色変えず二人の間にだけ静の空気が流れる。


「なるほど、話しか聞いてないけどその黒い物質……君が『エニグマ』とかいう専門職を申請してるっていうアダレム・ブラスピンドか」


「ん?コイツってそんなに有名なのか?」


「専門職の申請してるやつって確かにそこそこ話題になるけどさ、いきなり銃向けることなの?」


アフタレアとシャラムも何も知らないようで、加瀬に問いかけると、彼はアダレムを真っ直ぐ見ながら口を開いた。


「俺も詳しくは知らない、だから知ってることだけ話す。元々この男はデゥザリオム事変の後、それでもこの世界の支配を求めた勢力への牽制と新天地の調査に貢献した、とあるパーティに所属していた者だったんだ」


「デゥ、デゥザリオム事変??」(なんかまた珍妙な単語が出てきた……)


謎の単語を飲み込めていないミエリを置いて、加瀬は話を続ける。


「そのパーティは、自ら生み出した剣術で後に『剣聖(ソードダンサー)』と呼ばれる専門職のマスターとなるリーダーに、プロレスラーとカードプレイヤーのマスターの弟子、そして当時魔術師だったこの男の四人で構成されていた」


「へー!それって、『厄斬りの勇者』の話ですよね?」


「なんだ?ゼノル知ってんのか?」


意外にも、この話に既知の反応を示したのはゼノルだった。そんな彼にパーティメンバーの視線が集い、アフタレアが代表して質問する。


「ええ、僕がいたウォッテンベルグコロニーにはこの人たちを模っためちゃくちゃでかい像があったんです。なんでも当時からアマムラ商会の傘下企業のお膝元で発展していったコロニーだったので、それが気に入らない勢力の襲撃受けてしまい、その際にコロニーを守ったことで英雄として祀られているらしいです」


「ミエリ、大丈夫?」


「う〜ん……」


ゼノルが淡々と説明し、そしてまたもや謎の単語が出てきた事でミエリが混乱してしまう。そんな彼女を最初(ハナ)から聞いていないレガナが心配そうに見つめる。


「話を聞く限りじゃあ、そんな銃構えねえといけねえようなヤツには思えねえな、コイツの何が問題なんだ?」


「この男は、ある日を境に過激な行動に出るようになったんだ。と言っても俺も話を聞いただけだがな、過激勢力にちょっかいをかけて無闇に混乱を招いていると……『隠遁するベルバ』、『義警団(ヴェジランテ)』、『マッド・リベリオン』……他にも『ヤマトコロニー』や『ヴァルュータコロニー』などの独立を企てているコロニーにも手を出しているらしい」


「なるほどなぁ、ヴェジランテとマッドリベリオンは聞いたことあるぜ、最近ヤツらのいざこざが活発らしいのもコイツが原因か?」


「ちょ、ちょっと待って!よく分からないけどこの人そんな悪い人なんですか!?というかあなた誰なんですか!?というか後ろのは何!?」


「この人は私達と偶然遭遇して、私達を騙したり助けたりしてくれた人、そして後ろのはこのダンジョンの主らしいワームっていう原生生物だよ」


「たった今ぶった倒したばかりの獲れたてホヤホヤの獲物だ、結構ヤバめなヤツだったからミエリが遭遇してなくてよかったぜ」


話の複雑さに耐えきれなくなったミエリが、一旦話を遮って加瀬と背後にあるワームの亡骸について問いかける。すると、シャラムとアフタレアはいつものように丁寧に答え、アフタレアに至ってはワームの側まで近づいてその体を叩いて見せる。二人ともその表情はどこか誇らしげだ。


「なるほどなぁ、さっきの振動はこいつが戦闘で暴れた際のものだったのかぁ。こんな面白そうなもんいたのに戦えなかったのはつまんねぇな、もっとかっ飛ばせばよかったぜ」


「おい、なに他人事みたいにしてやがる、今はてめえの話をしてるんだぜ」


「そう睨むなよ、それよりも……こっちにすごい速度で向かって来てる奴がいるぜ、構えた方がいいんじゃねえの?」


そういって無数にある穴の一つを見つめるアダレム、彼の言葉で耳を澄ませたシャラムとアフタレアはハッとしたように得物を構える。


「なにが近づいてくる!気をつけて!」


「ったく、お次はなんだよ!」


「いいねえ〜楽しませてくれよ」


今度こそ敵襲だと判断したメンバーは再び陣形を組む。ゼノルは当たり前のように盾を構えるシャラムにしがみつき、アフタレアは震える手で杖を構えるユーエインを庇うように戦斧を構え、ミエリと加瀬はハンドガンをいつでも撃てるように備えて音がする穴を見つめた。すると……


「とおっ、しゅたっ!ミエリ、ここにいたのですね、心配いたしましたよ」


「ッ!?ビルセティ!!大丈夫だった!?」


メンバーの目の前に現れたのは、ミエリに付き従うシルクレンビスの少女ビルセティだった。


彼女は触手を氷柱石に巻きつけその反動で前に進むという、ミエリ捜索の際にも行っていた高速移動でここまで来ていた。そのためその勢いのまま穴から飛び出し宙を華麗に舞うと、回転しながら見事な着地を披露してみせた。


背中に大物と死体を背負ったままにも関わらず、彼女の着地はふわっとしたもので地響き一つなっていなかった。


そんな彼女にミエリ以外は拍手を送り、ミエリとレガナは驚愕と心配をしながら彼女に近づいていく。


「ミエリ、私は大丈夫です。あの者に関しては私の独断で逃してしまいました。後イサオさん達が救援隊を連れてこちらに向かって来てます。私が目印をつけているのでもうすぐ来るかと」


「ん?イサオ……?」


ビルセティの出した“イサオ”という名前にアダレムが反応する。


「あの者って、ニィピーって人のこと?それは別にいいけど、それよりイサオさんたちと合流できたんだね!それなら一緒に来て欲しかったけど……」


「申し訳ありません、ミエリのことが心配で一人で先行してしまいました」


そう言って頭を下げるビルセティ、その時ミエリに何かの影がかかり彼女が思わず振り向く、するとそこには訝しげな表情の加瀬と黒い物質で作られた鎌を持ったアダレムが立っていた。


「え……?な、なんですか!?」


一瞬何事か分からなかったミエリだが、すぐに気を取り直すと少したぎろじつつも、ビルセティを庇うように二人に向き直る。


「この子の手……どうなってるんだい?どう見ても普通の人間ではないよね、というかその姿はまるで人形だな」


「そいつから尋常じゃない気配を感じるなぁ、ただの触手入り人形じゃないでしょ、キミ」


「ミエリ、下がっていてください」


二人が少なからず放つ敵意を察したのか、ビルセティがミエリの前に出て触手を構える。しかしそんな三人の間にミエリが割って入り仲裁を始めた。


「だから!待ってって!アダレムさんもそんなの出さないでください!」


「そんなのとかいうな!こいつは『霧咲(デスハーベスト) デスコノシード』っていう技だよ」


「そういうことを言ってるんじゃないですって!」


ミエリの言葉にムッとしたアダレムがわざわざ鎌の説明を始める。それは両手に持つほど柄の長い鎌だが、刃の部分は30cmほどで一見すると一般的な草刈り用の長柄鎌に見えるものだった。


「落ち着けって、とりあえずそいつはアタシたちの味方だ、警戒しないでくれよ」


「ま、詳しい事は言えないけどね、でも悪い子じゃ無いことは確かだよ」


ミエリの援護に入りビルセティを庇うアフタレアとシャラム。それを聞いて加瀬の方は警戒をといて銃をしまい、アダレムも名残惜しそうに鎌を解く。


「君たちにそう言われたら流石におじさん引き下がっちゃうよ、それならあとはこの厄介者だけだな」


「俺もここでお前たちとやり合うつもりはねえよ、この陶器人形がお前たちの敵だったら存分に暴れてやったけどな」


そう言ってアダレムはワームと積まれた排泄物の山を見比べる。


「しっかし、このダンジョンにはこんなのかいたなんてなー、相手できなくて残念だぜ、そしてこれは犠牲者の変わり果てた姿か」


「そうだな……俺はそれに用事があってここに来たんだ、一応目的は達成できた。まあ、案の定手遅れだったがな」


そう言って加瀬は汚れた名札を見つめる。それを見たミエリはパッと思いついたことをビルセティに伝える。


「犠牲者……ならビルセティ、再構築でこれを人に戻せない?」


「できますが……いいんですか?」


「?いいんじゃないの」


明らかに考えてないミエリの返事を聞いて、ビルセティは「では」と言って触手を排泄物の中に突っ込んだ。そしてそれは、ぶちゅぶちゅぶちゅ!!と気持ちの悪い音を立てて段々と人の身体へと変換されていく。


「うおわ!?」「な、なにこれ……!?」「ひっ……!」「おおっ!」


後ろで見ていたパーティメンバーから短い驚きが響き、前にいた加瀬とアダレムも声を出さずにその光景を唖然と見ていた。


「ふう、これで良いですか?」


「うん、多分良いでしょ、みんなもこれで良い?」


そう言って振り返るミエリに、アフタレアは凄まじい速度で近づいていく。


「おいおいおいおい!!なんだよこれ!?」


「え……いや、ビルセティに再構築してもらったんだけど……」


「なにそれ……そんな事できたの……じゃあ沼地の死体の山もこの子がやったって事……?」


「うん、まあ……まだみんなビルセティのこと信用してないだろうなぁって思ったから、あの時は黙ってたんだよね」


「じゃあなんで今やらせたんだよ!?ここには入ったばかりのゼノルやユーエイン、それに得体の知れないおっさんと愉快犯がいるんだぞ!?少しは考えろ!」


「というか、なんで死体再生できるの?一部の世界だとできるらしいけど、ストレンジフィールドじゃ再現不可能な技術の筈なんだけど」


「ええっ!?この世界ってバラバラ死体でも蘇生できるからこういうのも普通なんじゃないのぉ!?」


「んなわけねえだろ!つうか普通じゃないから黙ってたんじゃねえのかよ!!」


ミエリの早計な行動によって騒然となる場の中、加瀬は大きく手を叩いて静める。


「部外者のおじさんが言うのもアレだけど落ち着くんだ。まああれだな、どうやらとんでもないことをおじさんたちは知ってしまったらしい」


「でも気にすんな、少なくとも俺は話さねえよ、まだ様子見だ」


そう言う二人にすかさずシャラムが剣を向ける。


「残念だけど、そう簡単には信じられないね。あんた達は会って間もない人間なんだから」


「で、でも、このお医者様は私を助けてくれましたし……」


「そうかもしれねえけど、それとこれとは別だ、それにそっちのバイク野郎に至っては信じろってのが無理な話だ」


アフタレアが武器を構えながらそこまで言ったのち、加瀬はビルセティが復活させた死体の山まで歩いていく。


「言いやしないさ……俺とこいつにチャンスをくれたんだからな……」


そう言って、山の中から一人の死体を引き摺り出して抱える。見ればそれはケーシー白衣の上に武装をつけた体格の良い男性だった。


「こうやって蘇生できる可能性を与えてくれたやつに、恩を仇で返すほど俺は落ちぶれちゃいないさ、君たちの事は絶対誰にも話さない。約束する。」


「同じくー、俺もこんなこと言いふらしたら目的の邪魔になるからな、わざわざ言うことはしねえよ」


そう二人がミエリ達に伝えていると、ビルセティから出てきた空洞から、重厚な足音と共に大声でミエリやビルセティを呼ぶ声とガチャガチャと金属の揺れる音が聞こえてくる。


「あっ!イサオさんが来たんだ!!」


「なっ!?こ、この声……やっぱりイサオって、マジであのイサオかよ!?」


声を聞いた途端、アダレムが明らかに動揺する。先ほどもイサオの名を出していたが、声を聞くまでは別人だと思っていたようで今になって慌て始めたようだった。


「おや?あなたもイサオさんと知り合いだったんですかぁー?」


ゼノルが興味津々にアダレムに近づくが、そんな彼を無視してアダレムはオンベケントを出して颯爽と跨った。


「悪りぃ、俺はここまでみたいだ、あいつには俺のこと話さないでくれよ!」


「あ、まっ……」ミエリが声をかける間も無く、アダレムはバイクをフルスロットルでアクセルを開き、爆音を鳴らしながら穴の一つに飛び込んで消えていった……

「おーい!お前たち!!ここにいたのかァ!!返事くらいしろォ!!」


空洞から出てきたイサオはパーティメンバーを見つけると急いで皆の元へと駆け寄る、本当に心配していたようで、鬼のような形相で怒気の篭った声を張り上げている。


「ごめんなさいイサオさん、ちょっと色々あって返事できなかったんです」


ミエリが代表して謝ると、イサオは息を吐きながらやれやれと言ったように目を瞑る。


「全く、それよりさっきのエンジン音みたいなのはなんだ?さっきまで何がいた?」


「え!?ああ、いや、そのぉ……」


「ここはストレンジダンジョンだからねー、きっと流されモノが発した異音だろう」


イサオの問いかけに対して、良い言い訳を思いつかずにしどろもどろになるミエリに、加瀬が助け舟を出す。しかし初対面の加瀬にいきなり馴れ馴れしく話しかけられたことに不信感を募らせ、加瀬を訝しむように睨んだ。


「なんだお前は?こいつらとなぜ一緒にいる?」


「その人は偶然出会ったんだよ、んで、そこにいる死体を見つけたいからってここまで連れてこられたってワケ」


「その結果そこのワームとやり合うことになったんだからたまんねえよ、でもユーエインを助けてくれたし、このおっさんのおかげでみんな合流できたからとりあえずは警戒しなくて大丈夫だぜ」


そう言って、シャラムとアフタレアは間に入ってイサオに説明する。信頼している二人からそう言われて信じないわけにいかず、イサオは「そうか……」と言って警戒を解いた。


「もうすぐ救助隊が来る、エンロニゼもそっちにいるからあいつの術でここまでわかるだろう」


そうイサオが言った直後、エンロニゼが出す『森』と似たような触手が穴から這い出しイサオ達を見つけると穴の方に手招きするような動作をした。


『こっちだ!おーいイサオー!』


『全く!先行するとは何事だ!』


複数の声と一定のリズムで装備の擦れる音か響き、そしてエンロニゼと救助隊の面々が下層に現れる。


「ふぅ〜……めちゃくちゃ疲れたぜ、でもやっと戻れそうだな」


「結局目的は果たせずじまいだけどね、と言っても報告することは沢山あるから忙しくなりそうだけど」


「え、やっぱりあの方のことは伝えるんですか……?」

「良いんじゃないですか?だって僕たちには義理がありませんし」


救助隊が来たことに安堵して口々に喋るメンバー、その中で案の定アダレムの話題が上がり、イサオは予想通りと言ったように頭を抱えた。


「はぁ〜、やはり誰かいたようだな、そしてわざわざ隠すということは何か約束したんだろう?」


「い、いえいえ!別に約束はしてないんですけどぉ〜……わたしが助けてもらったからイサオさんには黙っててくれというのを素直に聞いたというかぁ〜……」


「なに?俺に黙っていろだと?」


申し訳なさそうに話すミエリの言葉に、何かを感じたイサオが考えこむ、しかしそこで近くまで来ていたエンロニゼとカリストがイサオの肩を掴んで二人の前に向き直らせる。


「イサオ!あまり先行しないでくれ!バラバラに行動したら元も子もないだろう!?」


「お前はガードナーなんだろ!?だったら勝手に行動するな!」


「あ、ああ……すまないな、心配で先走ってしまった」


そう言って二人に頭を下げるイサオ、そんな彼の態度に呆れつつ周囲の何気なく周囲を見たカリストは、ワームの亡骸に一瞥するとそちらへと歩いていく。


「大したもんだな、お前たちがこれを倒したのか?」


「ああ、アタシとそこのドラゴンでぶっ倒したんだ」


「大変だったけどね、これ回収とかできるの?」


カリストは驚きつつパーティメンバーを見ると、それに反応してアフタレアとシャラムが前に出る。


「回収か……こいつは標本もあるし生態も分かっている原生生物だから、丸ごとの標本で回収しなければならないほどじゃない、皆で解体して持っていけるだけ持っていくぞ」


カリストが救助隊の面々に指示を飛ばしワームの解体を始める。その間にミエリのパーティは傷の様子を診てもらい、各々必要な処置を施されている。そんな中でもビルセティだけは体を触らせまいとさらっと拒絶していた。


「全く参るな、ここまで苦労して調査目標に関しては収穫なしとはな……」


「まあ金になるものはいくつかあったから良しでしょ、結局あの黒い影については分からなかったけど」


イサオとシャラムの会話を側から聞いていたミエリがドキリとする。あの時色々ニィピーから聞いてはいたが、それを話しても中途半端な情報で状況をややこしくするだけだと判断し、この場で話すことはしなかった。


「でもまあ、この区域で何か起こってるのが分かっただけでも儲け物でしょう!」


「いやそんなことはもう分かってたんだよ、それを確かめるためにここに来たんだろうが」


「今回お役に立てず申し訳ありません……」


「気にするな、ほとんどの者の初陣はこういうものだ」


メンバーの会話を聞きながら、リーダーでありながら何故か距離を感じたミエリがビルセティに近づいていく。


「ビルセティ!そういえばその背中のやつさ、わたしを探してる最中に見つけたの?」


「そう……ですね、この怪物はミエリを探している間に遭遇してその……倒したやつです」


(あ、嘘ついてるな……)


ミエリの質問に、いつもはハキハキと答えるビルセティがなぜか言葉につまり、そういう時は何か言いずらい事がある時だと分かっていたミエリは、この怪物に関して自分たちのいないところでトラブルがあったことを察した。


「その、ついでに死んだ方を回収しました。ミエリの消えた道を行っていたら途中に壁から肉の花のようなものが垂れ下がっていたので、その消化液から抽出したものです。


(あ、それわたしが丸呑みにされたやつだ……)


「そういえばさ、ミエリよくあの花の化け物に飲み込まれたのに無事だったね」


今度は自分が襲われたミミックから抽出した死体を見せられ、なんともいえない気持ちになりコメントに困るミエリ。そんな彼女にその話を聞いたレガナが思い出したかのように問いかける。


「えっ、あの消化液は強力なものでした。ミエリ大丈夫だったのですか?」


「うん、(貴婦人が)頑張ったからなんとかなったよ」


ミエリが感情の起伏がない言葉で返す。そんなやりとりをしているとパーティメンバーが戦利品の確認と、回収物の役割分担を決めようとしているらしく、シャラムが「ミエリー!」と呼ぶ声がかかる。


「あっ、呼んでるからみんなの所にいこう!」


これ幸いと話題を切り替えてビルセティの手を引くミエリ、そんな彼女の行動に今度はビルセティのあらゆる感情が吹き飛ぶ。そうして二人がパーティメンバーの所に行くと、死体袋とグロブスタの死骸が置かれていた。


「こいつはアタシたちが三人でいた時に見つけた死体だ、そのグロブスタはそいつを飲み込んでいたやつ、思ったより軽いかったからゼノルに背負わせたんだ」


そう言ってアフタレアが自分たちの戦利品である原生生物と死体を見せる。原生生物の方は分厚い肉で構成された二枚貝のような見た目で、ドロ水を思わせる濁った濃ゆい緑色の体色は暗い洞窟でのカモフラージュとなっており、体に生える太い毛は一つ一つが足の役割をしているようだった。


死体の方は長身の女性であり、白金(プラチナ)カラーの髪を腰まで伸ばし、命が消えても金色に輝く不思議な目を持っていた。

服装も白を基調として青いを装飾したドレスで、スカートも長いが生地が薄く、太ももを覗かせる大きなスリットが入っていた。


「この人、皮肉めかしてスタイリッシュな世界って言われてる文化系統の世界の住民っぽいんだよね、なんでここに来てたのか謎だけど」


「ったく、この手の世界の連中は気取った言動かステレオみてえな愛嬌しかねえからアタシは嫌いだ」


「あんたの事なんて誰も聞いてないよクソトカゲ」


シャラムとアフタレアがいつものようなやり取りをしていると、ゼノルが悲しそうな顔でイサオにしがみつく。


「うう、酷いと思いませんか!イサオさん!こんな重いもの一人に持たせて……」


「いやお前はポーターだろう、それなら少数での行動だとそうなるのは当然だ」


「ひどい!イサオさんのこと信じてたのに!」


「訳の分からないことを言うな、そしてビルセティもグロブスタと死体か」


「はい、そこに置きましょうか?」


そう言って前に出るビルセティをイサオが手で制する。


「いや、今の状態なら触手型の悪趣味な固定具だと言い張れるが、お前がいつものように体を割って触手を出したらパニックになる。お前はそれだけ持って帰り道の露払いを頼む」


「了解しました」


「それならワームやこの戦利品は各々で持つか、ユーエインは非力だろうし何よりヒーラーだから物は持たなくていいよ、加瀬さんもね」


「んははっ、すまないね」


「その、申し訳ありません……」


「別に謝ることじゃねえだろ、つーわけで残りの6人で運搬だな、救助隊も少し手伝ってもらうか」


「じゃあわたしは死体袋を……というか一気に死体の数増えちゃったね、これだけ持っていけるかな……」


その時、ワームの解体をしていた救助隊が叫んだ。

「カリスト部隊長!ワームの内部からこのようなものが……」


一同がそちらに視線を向ける。そしてカリストと救助隊員が一緒に引きずり出したのは、狼のような耳を持つ、薄いモスグリーンの髪をした少女の死体だった。


「ブーソフィアか、この区域は別に制限されていないが、珍しいな……お前らー!こいつの世話も頼むぞー!」



「……やれやれ、帰ってからも忙しくなりそうで参るな……」


カリストの声掛けにイサオが疲れたように首を振り、それに呼応するようにパーティメンバーも立ち上がった。


「この仕事断れば良かったぜ」「どーかん」


「とにかく帰る準備だな、私の『森』で限界まで運ぼう」


「あの、本当に私はなにも持たなくていいんですか?」


「いや、君やおじさんは治療班だから身軽にしとくべきだ、帰るまではダンジョンの中だからね」


「いやー、大変でしたねー!」


「誰の提案でこうなったと思っているんだお前は……」


「では行きましょう、ミエリ」


「そうだね……」


「ふわぁ〜……あーし疲れたからちょっと寝るね……」


パーティメンバーはこれからの大変さを思いながら、各々帰還に必要な準備を始めた。

今回で4章は終わりです。なのでこの章のグダグダ具合についてちょっと言い訳させてください。

今回の話は「ミエリが丸呑みなどで何度も死ぬ」

「丸呑みされた死体を三つ見つけ、一つはミエリが、一つはアフタレアが、一つはワームから飲み込まれた際それぞれに見つける」

「ダンジョンで出会った男がトラブルを起こし、それによってシャラムとアフタレアがワームと戦い挟み撃ちで首を切り落とす」という展開だけを考えて書いてしまったんです。

本当は男のトラブルというのは具体的に思いついていてそれをメインに話を作るつもりだったのですが……メモをとり忘れて完全に足を引っ張る要素になってしまいました。これのせいでもっと後で出すつもりだった加瀬とアダレムをこのタイミングで出すことに……しかもゼノルも無能な感じになってしまうという、本当は彼も兵站に詳しいキャラとして書こうと思ったんですがちゃんと書かなかったのは反省点です。

3章がグダグダになってしまったのもあってこの章は酷いものになってしまいました……これからはプロットちゃんとしようと思います。

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