4-14 凶暴なサプライズ
"しかし……一緒にいるのがよりにもよって狭間の神の手先とは……厄介な"
「貴方、喋る事ができるのですか!?」
ずっと正体が不明だった敵が、人とコミュニケーションを取れると分かり、ビルセティが動揺しながらも怪物に叫ぶ。
"我は主と呼べる人物からの命令でここに来た、ハスハマ ミエリを連れて来いと……目的を果たすのに我は不要な会話はしない"
「え、じゃあなんでさっきは……」
"先ほど貴女は一人だった、ならば警戒を解いて貰うためにも対話は必要だろう?"
「防備がしっかりしている時は強行手段に出て、無防備になった途端口八丁で取り入ろうとは、姑息な誘拐犯らしい行動ですね、ミエリを拐って何をするつもりなんです!」
"我が主は危害を与えるつもりはない、それに……醜悪な邪神の下僕などを近くに置くよりは安全だ"
「勝手な事を……出会い頭に爪を振るい、洞窟を崩落させてまでミエリ誘拐を強行した怪物の言葉など、信用に値しません!」
ミエリには穏やかな口調で、ビルセティには露悪的な口調で、それぞれと会話をする怪物。そして、そんな二人だけのやりとりに割って入るようにミエリが二人の間に立つ。
「ちょ、ちょっと!まだ話は終わってないって!なんで私を狙うの!?あなたの主ってのはどんな人なの!?」
"ここで濁してもあなたに信用して貰えないだろう、だから正直に伝える。我の名はニィピーと言う、そして我の主とは……ハスハマ ミエリ、あなた自身だ"
「ええっ!?」
全く予想できない答えにミエリは驚愕し、ビルセティは眉間に皺を寄せてニィピーを睨む。
"もっと具体的に言えば、もう一人のあなただ。別の存在のあなたが我をここに差し向けてきたのだ"
「この世界は何が起きても不思議ではないですが、それならばなぜその方はミエリを連れてきて欲しいのか、理由を教えていただきたいものですね」
"言われずとも説明するつもりだ、彼女は……っ!?下がって!"
すぐに詰め寄るビルセティに対し、冷静な態度でニィピーが答えようとした時、凄まじい殺気が暗闇から発せられ、ニィピーが警告するより先にビルセティがミエリを弾き飛ばす。
ズドンッ!という豪快な音と共に地面を丸太のように太い腕が穿つ、それは先ほどもミエリを不意打ちで襲った巨大な夢魔で、ニィピーとの戦闘の最中に姿をくらまし、再びミエリ達を狩ろうと狡猾に狙っていたのだ。
"先ほどの怪物!?くっ、追い払ったと思ってたが違ったようだな"
「この手の怪物は知能が高く、逃げたふりをして反撃の機会を伺っているだけです。実際貴方もそうしたでしょう?」
ニィピーを煽るようなことを言いつつ、二人は夢魔と向かい合う、流石にこの巨体を一人で相手取った場合、無駄な時間を使うとビルセティもニィピーも考えたのだろう。
「ミエリ!早く私の後ろへ!」
"それはやめるべきだ、ヤツの周囲を見てみろ"
ニィピーの言葉にビルセティがハッとなる、見れば周囲は小型のグロブスタが取り囲んでおり、そんな状況ではミエリを近くに呼ぶのはリスクが高い、そうニィピーは判断して止めたのだった。
「ミエリ、近くに隠れていてください!すぐに倒してしまいますので!」
「うん!分かった!ビルセティも気をつけて!」
遠くから声を張り上げそう伝えるビルセティに、ミエリは頷くと武器を構えてすぐにその場を離れる、見える範囲で行動した方がビルセティが守りやすいのはミエリにも分かっていたが、それだとビルセティの負担になってしまい、ミエリはそれを嫌がって自衛の選択をしたのだった。
(わたしを守りながらじゃむしろみんなが危険な目に遭う……それならなるべく注意しながら身を潜めた方がいいはず……それにさっきの叫び声が仲間のものなら早く見つけないと)
ビルセティに自分を気にせず戦って欲しいというのもあったが、それ以上に先ほどの叫び声の人物を探す必要性を感じてミエリはその場を離れたのだった。
そして……それはさほど悪い判断ではなかった。が、良い判断とも言えなかった。
………………
ビルセティとニィピーが夢魔と向かい合ったまま、緊迫感を互いに向かって放つ。成り行きで協力関係となっているが、その内心は全く信用などしておらず、いつでも互いを攻撃できる状況を作っていた。
"何を考えているのか知らないが、貴様らのような悪意ある存在の手先など彼女に近づかせる訳にはいかない"
「そちらこそ、これ以上ミエリや仲間の方達を危険に晒すつもりならば、ここで排除させていただきます」
そして、互いに歩み寄る気がないという言葉を交わすと、背中合わせになって襲いかかる小型を迎撃し始めた。
………………
「はぁ……はぁ……確かここら辺から聞こえたはず……あ!レガナ!」
そして一方、相変わらず洞窟を無鉄砲に進んでいたミエリは、ついに洞窟の岩壁の影となっている隙間に隠れるレガナを見つけることに成功していた。
「レガナ!ここにいたんだね!」
(シー!大きな声出さないで!)
再会を喜ぶミエリに対し、極限まで声を小さくしながらレガナがミエリに怒る。明らかに普通じゃない様子にミエリが首を傾げながら近づいて行く。
「どうしたの?一体何があったの?」
(バカ!アレを見て!)
ミエリが不思議に思いながらレガナが座っている角から奥の通路を覗き込む、そこにはあの最初に出会ったグロブスタ『ガルザール』が辺りを窺っていた。




