1-6 夢の中
場面転換のために区切りました。
短いです。
(ねぇ……ねぇってば)
何者かの呼びかける声が聞こえる。その声に反応して深慧莉は意識をはっきりとさせた。
「な、なに?誰?」
(いつまで寝ているの?ねぼすけさん……)
声は深慧莉の頭の中から響いているようだった。
「あなたは誰?どこにいるの?」
(私はあなたの意識の中……ねぇ、あなたにお願いがあるの)
「いや、意味がわからないんだけど、というか名前くらい名乗りなさいよ!何が目的なの!」
(私は……今は『グリザイユの貴婦人』とでも名乗っておくわね、目的はさっきも言ったけど、あなたにお願いを聞いてほしいの)
「お、お願いぃ?どんな?」
深慧莉が間抜けな声を出しながら返事をする。すると、『グリザイユの貴婦人』はそれを了承と受け取ったのか話を進めた。
(お願いというのは私を見つけて欲しいの……あなたにはこの世界を巡って各地にある謎を秘めた場所に行って、その謎を解明し、その果てに私を見つけ出して貰うわ)
「何よそれ、なんでわたしなの?他の人じゃダメなの?」
(あなたのことが気に入ったの、だからあなたじゃなきゃダメ……)
「わたしが断ったら?」
(この世界は永遠に残り続ける……あなたも死ぬことはないわ、私が何度でも蘇らせてあげるから)
残り続ける……?言葉の意味は分からないが、少なくとも相手の態度を見るに、こちらに拒否権はないと深慧莉の直感がそう告げる。
「分かったわ、あなたのお願いを聞いてあげる」
(……!嬉しい、ありがとう……!)
「だから、まず何をすればいいの?」
(最初はお友達を作るべきじゃないかしら?死んでも蘇らせてあげるけど、旅をするのは一人では難しいわ……)
「まあそうだよね……」
この世界は厳しい、戦いの術を知らない深慧莉に一人旅など、とてもじゃないが不可能だ。
(それと、この近くで謎を解いてほしい場所を伝えておくわ……これだけしておけば、導きとして十分でしょう?)
『グリザイユの貴婦人』がそういうと同時に深慧莉の頭の中にある場所が浮かび上がった。
「……これは、「病院」?」
その光景は、深慧莉がいた地球の病院を思わせる場所だった。
だが、その様相はどこか禍々しく歪んでおり、普通の場所ではないことが深慧莉にもわかった。
(そうそこ、その場所の謎を解いてほしいの……それじゃあお願いね)
その言葉を最後に何か弾き出される感覚を覚えながら深慧莉が目を覚ます。
「…………夢?」
やたらと鮮明な夢に違和感を感じ、頭を押さえながら深慧莉は起き上がった。