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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
4章 『本能の洞窟』へ
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4-13 救出と接触

場面は変わり、ビルセティは再びミエリ達の捜索の為に洞窟内の氷柱石を使って飛び回っていた。


(ミエリの移動能力を考えるとあまり遠くには行けないはず、おそらくそろそろ接触できる筈です)


そう思いながら移動していると、急に道が広くなり、何かが暴れたような破壊痕が目立つようになる。


「これは、まだ新しいですね。これ程の破壊活動ができる生物が近くにいるということは、早くミエリ達を探す必要がありますね」


冷静に周囲を観察し、淡々と状況を理解したビルセティはすぐに先へと駆け出す、口調や表情は無感情だが、その行動には焦りが感じられる。


そうして、しばらく進んでいると何やら人影が現れた、暗い洞窟内で後ろ姿という分かりづらいシチュエーションだが、フリルのエプロンドレスのシルエットからビルセティはその人物が誰か確信する。


「あ、いました。ミエリ大丈夫ですか?ん、ミエリ?」


安心して近づいていくが、肝心の彼女からは返事がない。不思議に思いビルセティが更に接近していく……そして陶器人形は気づいた、ミエリの頭部が、何か奇妙な生物に包まれていることに。


「これは良くないですね。とりあえずこの生物を剥がさないといけません」


そう言うと、触手を出してその生物、ブレインテイカーに巻き付け、別の触手をミエリの体に絡める。そしてある程度締め付けた瞬間、


「ふぇっ!!?」


ビクッとしながらミエリが覚醒する、その様子から今の今まで死亡していたことが分かるが、『声』とミエリの関係がいまいち分かっていないビルセティは気づかなかった。


「あ、ミエリ、大丈夫ですか?」


「ビ、ビ、ビ、ビルセティ!?なんでいるの!?」


目が覚めたばかりのミエリは、いきなり体を縛られていることに動揺し、目だけで後ろを見ながら仲間の存在を確認しようとする。


「じっとしていてください。今からこの生物を取り除きます」


「え、な、にぃ!?えが!ごっ!?はばばばばっ!!」


ミエリに心の準備をする間を与えることなく、ビルセティは強引に引っ張って取ろうとするが、脳に刺さったままの口吻が無理やり引き抜かれそうになっているせいか、ミエリが痛みとも不快感ともわからない感覚に襲われ目を見開いて絶叫する。


「しぶといですね……はぁ!」


剛を煮やしたビルセティが唐突に新しい触手を出して横薙ぎに振り、ブレインテイカーを強引に弾き飛ばす。ビチィ!という音と共にミエリの頭から離れたブレインテイカーはそのままビルセティの触手に掴まれ、あっさりと握りつぶされてしまった。


「ミエリ、無事ですか?」


触手をしまい、姿勢を正して心配するビルセティ。そんな彼女の方を向いたミエリは頭から流れ出る血で顔を赤に染めており、そんな状況で半笑いになりながら焦点のあってない目でビルセティを見た。


「あはは……多分、無事じゃないと思う」


「その様ですね、では再構築をさせていただきます」


そう言って、ビルセティが触手を出してミエリの顔面を撫でると、血が綺麗に吸い取られそのまま傷のあると思われる頭頂部付近に触手を乗せた。


「ん?あっ!痛くない!」


すぐに変化を感じたミエリが頭を触るが、そこに傷はなくなっており、傷があった痕跡すら消えて頭髪も生えそろっていた。


「これで大丈夫です。それより何があったんですか?レガナはどこに?」


ミエリの無事を確認したビルセティはすぐに状況把握の為に一緒だった筈のレガナがいなくなっていることについて質問する。


「え?あ、えっと……実は私さっきレガナとはぐれちゃったんだよね」


バツの悪そうに頬をかくミエリ、そんな彼女の言葉にすぐに対応しようとビルセティが行動を開始する。すると、丁度ミエリから背中が見え、ビルセティの背負ってある死体が目に入った。


「え……ええ!?ビルセティ、それなに!?」


「あ、これですか、ミエリの道程をたどっていたら中身が消化液で満たされた肉の花弁のようなものを見つけまして、それから養分を吸収した際に、消化吸収されていたこれを抽出したのです。もしかしたらミエリかと思いまして」


そう言ってミエリにわざわざ死体を見せるビルセティ、白く細い髪と青い眼の組み合わせと幼さの残る顔立ちは儚くも美しい雰囲気を持っていたが、異様に白い肌と生気の無い瞳を見てゾッとしたミエリはすぐに目を伏せた。


「それよりも、早くレガナを見つけなければいけません。ミエリはなにか分かることはありますか?」


「あ、その、えーとぉ……実は私もよく分かりません……いつの間にかいなくなっていたので」


自分がミミックに飲み込まれていた際にはぐれたことは分かっていたが、『グリザイユの貴婦人』の事を説明していないビルセティに自然と蘇生する事まで説明しなくてはいけないリスクを考えたミエリは、とりあえず自分が何も知らない事だけをそれとなく伝える。


「ふむ、それならばすぐにレガナを見つけてパーティと合流しましょう、強大なグロブスタに見つかれば捜索が……ッ!?」


冷静にミエリに今後の行動を提案していたビルセティが、突然後ろに飛んで黒い怪物の攻撃を回避する。


「ミエリ!離れていてください!」


「うわわっ!」


すぐにミエリを突き放すと、ビルセティはなるべく彼女に被害が及ばないように黒い怪物の気を引きながら、一定距離を保って触手の攻撃を繰り出す。


それに対し、黒い怪物も一定の距離を保ち、牽制するような攻撃ばかりを繰り出す。埒が開かなくなったビルセティが、隙を見てミエリと共に逃げようとしても、それを遮るように立ち回りビルセティに攻撃を加える。


(この敵……先ほどから私ばかり執拗に狙っていますね。ファーストコンタクトでは孤立したミエリを狙っていたのに、何故今は私ばかりを……?いえ、そういえば……)


違和感を感じたビルセティは、自らの記憶保持細胞を活性化させてあの時の光景を鮮明に思い出す。そして違和感の正体を理解した。


(やはり……あの時これの視線はレガナを狙っていました。つまりこの敵の狙いはミエリを孤立させること……ですが、何故?)


「あ、あなたってさっきわたしに話しかけてきたよね!?なんで攻撃するの!?」


膠着状態の中、ミエリは思い出したように叫ぶ。意味がわからず困惑するビルセティをよそに、黒い怪物はその言葉に反応するように立ち止まった。


"安心して、先程は立ち回りを急いてしまったが、我はあなたには手を出すことはしない"


そう、黒い怪物は静かに答えた。

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