4-5 貴婦人の警告
あれ……ここはどこだろ……?
(いい加減この場所を覚えなさい……ここは私と話す空間よ……)
あ……そうか、ここはあの『グリザイユの貴婦人』さんと話す場所か……
(貴女……随分と余裕ね、あんな愉快な死に方したのに……)
え?あんなって……あっ!そうか、わたしってば水を飲もうとしたら、なぜか水場に呑まれたんだっけ……
(あんなに警告されていたのに……お友達がミミックと呼んでる迷い子に貴女は呆気なくやられたのよ……)
あっ、そうなんだ……あんなタイプもいるんだなぁ、それならもう消化されてるし助からないのかな?
(それは私が困るわ……だから今回は特別に蘇生以外にも手助けしてあげる……)
え、本当に?そんなことできるの?
(当然、私はこの世界の創成主なのよ……?でも今回だけよ、次からは対価を貰うから……)
対価を貰うってどういうことなの?お金でも取るの?
(そうね……蘇生したあと手足の一本でも折ろうかしら……)
ひっ……!わ、分かったよ……次からは迂闊なことしないって
(ふふ、じゃあそろそろ戻すわね……ここでも私を楽しませてね……)
『グリザイユの貴婦人』のその言葉を最後に、ミエリは吹っ飛ばされるような感覚に襲われる。
「わっ……!だはっ!?」
その感覚のまま、何かを脱したのを空気感で感じたミエリが驚きの声をあげ、その直後何か固いものにぶつかって悲鳴をあげた。
「いたた……あれ?これって地面?」
状況を理解しようとミエリがもがくと、地面に寝ており、洞窟内に戻ってきたことを彼女は察した。
振り返ると、先ほど水の染み出す壁と思っていたミミックは壁のような口から牙と、消化器官への入り口を出したまま、だらんと力無く垂れ下がっていた。
「あ、手助けってミミックのお腹から出してくれたってことか……って、そうだ!レガナは!?」
レガナの声が聞こえないミエリは、慌てて端末を取り出して付属のライトで周りを照らすが、レガナの姿はどこを探しても見当たらない。
「嘘、あの子どっか行っちゃったんだ……早く探さないと!」
先ほど『グリザイユの貴婦人』と交わした会話を忘れたようにミエリは暗闇の中を駆け出して行った。