3-21 突然の名推理
今回はBL要素がちょっとあります、なのでBL苦手な人は前半は読まない方が良いかもしれません。
思えば百合要素ほぼ皆無で進んでますね……男女のシーンも書く予定なので注意書きをするべきでした。
イサオ達が地上に戻るとすぐにコロニーガードは達は地上で待機している仲間に状況の方向やこれからの作戦のための準備を始めた。
「俺は今から現場にいる一番偉い奴に報告をしてくる、お前たちはミエリに会いに行ってやってくれ」
「言わずとも分かってるさ、世話になったな」
エンロニゼが礼を言い、イサオと共にミエリ達の元へと向かう。
「と、いう事があって僕はイサオさんからアプローチを掛けられたんですよ!」
「へー、そんな馴れ初めなのね」
「話だけ聞いてるとあんたが一方的にやりたい放題やってる気がするんだけど……あのおじさんはそれ受け入れてるの?」
「はい!今日も朝から僕を迎えに来てましたからね!」
治療班の待機場に到着し、ミエリとレガナがゼノルと仲良く喋っている姿を見てイサオが顔を顰める。
「随分と勝手な事を言っているな、俺はまだお前と組むとは言ってないぞ」
「あ、イサオさん……その、中はどうだった?」
「内部の制圧は済ませた、だが奥で更なる地下への入り口が見つかったんだ」
「今からコロニーガードが調査隊を結成して内部調査を行うらしい、私達の役目はここまでだ」
それを聞いたヴォラルフの青年が「えっ……」と不安げな声を出す。
「そうなんだ、その……心配かけてごめんなさい」
話を聞いていたミエリがイサオに謝る。
「俺に言ってるのか?別に気になどしていない、だからそう気に病むな」
「そうですよ!僕の作ったスープを飲んで元気になったと言ってくれたじゃないですか!」
二人の会話にゼノルが新しいスープを持って割り込んできた。
「ゼノル、お前は黙っていろ」
「ふう……お、お前ら随分と和気藹々としているじゃないか」
と、そこへ報告を終えたベリエットが合流してくる。
「あ、ベリエット……今から地下の調査をするって本当?」
「そんな顔をするなカイリ、俺は周辺警備に回されるだろうと言われた、隊長曰く地下なら体格の大きいお前は不得手だろうからだとさ」
「そうなんだ、……よかった」
カイリと呼ばれたヴォラルフの青年はベリエットの言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろす。
(あれ?なんか妙な会話だな、もしかして……)
二人の態度に違和感を感じたミエリは何かを察する。
「んー?竜のおじさんはこの人と知り合いなの?」
「俺はおじさんじゃない!全く口のなってないフェアリーだな、そのあれだ……俺たちは恋人同士なんだ」
「ふぇ!?でも、男同士じゃん!」
「やっぱり……」
ベリエットが発した突然の告白にミエリとボロの少女以外の全員が目を丸くして驚愕の声を上げ、カイリが少し頬を赤らめた。
「やっぱりだと?ミエリは気づいてたのか?」
「うーん、Ωの男性だって聞いたときカイリさんが語ってた大切っぽい人が男性の可能性は結構高いと思ったんだよね、Ωの人って男性とカップルになるらしいから」
「お前、だいぶ偏見が酷いな、というかお前もヴォラルフについて詳しいのか?」
「あ、偏見とかじゃないんです、わたしがいた世界にも似た様な設定が使われた娯楽作品が一定の層に需要があったらしく、それの話を稀に聞いていたんですよ」
「そうか、ヒューマンだけの世界では空想の種族としてこの世界にいるような連中を創作物に出すらしいがヴォラルフもそうなんだな」
ミエリの説明にベリエットが納得の様子を見せるがその横ではイサオが首を傾げている。
「そうなのか?俺は聞いたことがないが……」
「まあイサオさんは聞いたことないだろうね」
「も、もう!そんなことどうでもいいじゃないですか!」
和やかな雰囲気で行われる会話をカイリが遮る、その様子を見て分かるほど恥ずかしそうだった。
「お、おうそうだな……ではお前達帰るぞ、俺達がここにいても仕方がないからな」
「そうだね、えっとその……」
「もういい、色々ありすぎて疲れて怒る気力もない、だが他の連中には伝えるからな」
「それなら私だけにしてくれ、ミエリは責められる様な事はしていない」
「それはあいつらが判断する事だ、俺はあったことをそのまま伝える」
イサオの毅然とした態度にエンロニゼも流石にしょんぼりとした顔をしてしまった。
「そんな落ち込むな、実際お前の情報があったからこそ今回の制圧を安全に行えたんだ、他にも構成員の拘束、誘拐者の保護、グロブスタの討伐など活躍も多かったから報酬に関しては期待していいぞ」
「そんなことを言われてもどんな顔をすればいいんだ……それにミエリとの共同作業だったんだ、報酬は山分けで……」
「わたしはいいよ、エンロニゼが全部やったんだし、それに今回の報酬は受け取りたくないかな……」
「そうか……ならばお言葉に甘えさせてもらう」
ミエリの気持ちを汲んだエンロニゼが全てを被る気でミエリの要求を受け入れる。
「ミエリ、俺はもう何も言う気は無かったがこの程度でショックを受けて報酬を受け取らないなんてやってても仕方がないからな、それだけは言わせてもらうぞ」
「うん、分かってるよ、でも今回はいいかな……」
「おやおや〜?もしかしてまた僕のスープの出番ですか〜?」
影のある表情をするミエリにゼノルがスープ皿を持って近づく。
「おいゼノル、ミエリ達に馴れ馴れしく近づくな、それになんだそのスープは」
「イサオさんが身を案じて待機を言ってきたじゃないですか、だからその間に皆に振る舞う料理を作っていたんですよ、イサオさんもお腹を空かせて帰ってくると思っていたので」
「ふん、待っている奴が男じゃ嬉しくもなんともないな」
「ん?俺達に文句でもあるのか?」
「いや、お前達に言ったわけじゃないんだが」
ベリエットの若干圧のある言葉に対してイサオがめんどくさそうに返事をする。
「もー!なんでもいいから戻ろう!?だんだん人が増えてて落ち着かないよ……」
野次馬が増えてもはや人の壁が出来ている周囲の様子にレガナが狼狽え始める。
「そうだな、こんな群衆の前でいつまでものんびりしている訳にもいかない」
「この女の子は治療院で世話をします、皆さんも休んでください」
「本当はミエリやこの奴隷の少女にも状況確認のために話を聞きたいが……まあ今日は帰って休め」
「そうですね……ありがとうございました」
ベリエットの言葉を聞いてミエリが立ち上がって、二人に礼をするとそのまま境界のテープを括って群衆の中を掻き分けて出て行く。
「さ、僕たちも出ましょうかイサオさん」
「そうだなゼノル、気をつけて帰れよ」
「えー、一緒に帰りましょうよー」
「お前とはこれ以上絡みたくない、さっさと自分の住処に帰れ」
「ひどいなー、まあ調理器具の片付けがまだなのでどっちしろ僕はまだ帰れないんですけどね」
「ほんとなんなんだお前は……」
ゼノルのよくわからない発言にイサオが呆れとドン引きの感情を表す。
「そういえば、イサオさんはなんで僕の元にやって来たんですか?」
「ん?確かに色々とゴタゴタがあってすっかり忘れてたな……」
「ふっ、お前も結構適当だな」
ゼノルの指摘に本来の用事を思い出してハッとするイサオを見て、ベリエットが嘲笑気味に茶々を入れる。
「おい外野うるさいぞ、はぁ……お前に会いに来たのはゼノル・アーチランドについて色々調べたら碌でもない情報しか出てこなかったからな、その真偽を確かめるためだ」
「で、虚偽の情報が出回っていることが分かったと、僕に出会って分かったわけですね」
「残念ながら本当だったな、お前が今の調子なら俺はパーティを組まない」
「ええ!?なんでですか!?」
「なんでと言われたらその自覚のない態度が原因だ、俺がフリーになった時に組めるかどうかは、これからのお前次第だ」
「話は終わったか?他の連中はさっさと帰って行ったぞ」
ゼノルのふざけた態度にイサオが釘を刺している間にレガナとエンロニゼも去っていた様でベリエットがそれを伝える。
「なに!?お前さっさと教えろ!全く、それじゃ俺は帰るぞ!」
そう言って急いで帰っていくイサオを三人が手を振って見送る。
「やっと騒がしいのか帰ったな、それじゃ俺はそろそろブリーフィングが始まるから戻る」
「気をつけてねベリエット、僕はこの子を治療院に送ってくるよ」
「ああ、お前も気をつけてな……ん?おい、ゼノルとかいうの、お前何をしているんだ?」
少女を連れて仲間の元へ向かうカイリをベリエットが見送っているとそばでゼノルが何やら地図を広げて首を傾げている。
「んーと、やっぱりこれって……『本能の洞窟』と繋がっているんじゃ……」
「本能の洞窟?このコロニーに一番近いダンジョンでこの区域で一番危険なストレンジダンジョンか?そんなのとどこが繋がっているんだ?」
「さっき地下への入り口を見つけたと言ってましたよね?実は皆さんが戻ってきた時、感じた事のある気配を纏っていたんですよ」
「なに……?」
「で、それが本能の洞窟から帰ってきたっていう解明者さん達が纏っていたのと似ていたんですよ、それにこのストレンジダンジョンって一緒に発生した地下空洞から入っていくんでしょう?それなら何か関係があるんじゃないかって」
「…………」
「どうしたんですか?」
「お前、見かけによらず勘が鋭いな」
「へ?」
ゼノルの謎の推理力に呆気にとられるベリエットと、そのベリエットの絶妙な賞賛を聞いたゼノルはしばしの間に互いを見つめあったまま硬直していた。
あと1、2話で3章は終わります、多分。
この章は行き当たりばったりな部分も多く長くてぐだぐだになってますね……反省します。