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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
3章 ストレンジャー・サークルとコロニーの悪意
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3-20 迫る危機、脱出とその後

「ってまずいよ!あの扉から何か出て来たってことはその化け物が動き出したんじゃないの!?」


「かもしれないな……『森よ、流れろ。』」


エンロニゼが呪文を唱えると植物が石の床に道のように生えて拘束している男を運ぶ、運ばれる様子を見るにその乗り心地はお世辞にも良いものではなさそうだ。


「よし、ミエリと牢屋の子を連れてさっさと出るぞ」


そう言うと素早くミエリと檻の少女を掴んで脇に抱えて走り出す。


と同時に後ろから何かが大挙して押し寄せる音が響き渡った。


「や、やばい!多分さっきのが追いかけて来てるよ!」


「そのようだな!くっ、蘇生費用くらいは稼げるかと思っていたが、ここで死んだら赤字だ!」


暗いロビーを抜けて階段を駆け上がる、すると地上の光が徐々に広がってエンロニゼ達を出口へと導く。


「あと少し……!」


あと十段ほどで出口というタイミングで急に何か引っ張られる感覚がエンロニゼを襲う。


「な、なんだ?……!?貴様!」


振り返ると先ほどと同じ様な粘土質を巻きつけたゴロツキがミエリの足を掴んでいた、流石に二人抱えて走っていたエンロニゼの足では追いつかれてしまったようだ。


「くっ!離せ!」


必死に抵抗するが離す様子は無く、他のゴロツキ達ももう目の前まで来ていた。


(このままでは捕まってしまう……!ミエリ済まない……!)


エンロニゼが諦めかけた瞬間、今度は地上の方から引っ張られる感覚がしてエンロニゼが引き寄せられる。


「下がっていろ!」


「貴方は!」


そこにいたのはイサオだった、彼はエンロニゼ達を自身の後ろに回すと、しつこくミエリの足を掴む腕を握り潰し、もう片方の腕でゴロツキを殴り飛ばした。


「上にコロニーガードどもがいる!そいつらに保護してもらえ!ここは俺が抑えておく!」


そう言ってイサオが盾を構え、勢いよく突進する。


あの巨体の質量に吹っ飛ばされたゴロツキ達がそのまま後方の個体を巻き込んで階段を転がり落ちる。


「くそっ!なんだコイツらは!」


「分からない!さっき確保した生存者は謎の襲撃者が他の犯罪者達をこんな姿にしたと言っていた!」


「なんだと!?」


「まだその襲撃者が奥にいる可能性がある!先に進むのは危険だ!」


「だがこいつらを地上に出す訳にはいかないぞ!?」


イサオとエンロニゼが押し問答をしていると階段入り口から大人数の騒がしい音が聞こえ、そこから単独で走ってくる気配があった。


「お前ら下がれ!コロニーガードだ!」


「あ……あんたは」


連絡を受けてやって来たコロニーガードを見たレガナが思わず指を指す。


顔を出したのはレガナを辱めていたゴロツキをボコボコにして確保したドラゴンマンの男、ベリエットだった。


「な!?コイツらはなんだ!?」


「分からない!とにかくいきなり襲って来たんだ!地上に出る前に制圧するしかない!」


異形と化したゴロツキ達を見て動揺するベリエットにイサオが説明する。


「くっ!ブレスで一掃する、近づくなよ!」


ベリエットが灼熱の火焔を口から吐き出す、炎は奥までは行かずベリエット達とゴロツキの間で壁のようになる。


しかしゴロツキどもに恐怖心は無いようで、炎壁すらも突破しようと躊躇なく飛び込んできては炎に焼かれて黒焦げとなり、下に落ちていく。


「こいつら……恐怖や迷いはないのか!?」


動揺するイサオの言葉を背で聞きながらもベリエットは炎を吐きゴロツキを焼き続ける、それによって殆どを駆逐出来たのか上がってくる者はいなくなっていた。


「終わったか……?よし、一旦上に戻るぞ」


口元を拭いながら下を確認したベリエットが、イサオに喋りかけながらそちらへと振り返る、しかしそれに反応せず彼は未だに後ろにいたエンロニゼ達を見て険しい表情をしていた。


「おい、なんで避難しない?ここに大人数いても仕方ないだろ、邪魔だ」


「そうだったな、済まない……」


「お前が連絡にあった身の程知らずか?何故そんな少人数で突っ走った?敵の懐に突っ込むには何もかも不十分だ」


「済まない……」


ただ謝り続けるエンロニゼに、やりづらさを感じたベリエットは渋い表情で頭を掻いた。


「…………はぁ〜……まあいい、とりあえず地上に上がるぞ」


この状況下で説教などしても仕方がないと判断したベリエットがその場の全員に帰還を促す。


………………


「がはあっ!?」


「おい!急に何している!?」


地上に帰還すると、終始無言だったイサオがいきなりエンロニゼの顔面に拳を叩きつけた。


突然の出来事にベリエットが声を荒げ、その声に反応して周囲のコロニーガード達も集まってくる。


「おい、俺は地上で待機していろとミエリに言っていた筈だぞ?」


「ちょ、ちょっとイサオ、いきなりそれはよくないよ……」


突然の暴力にレガナが普段とは正反対の弱々しい態度でイサオを止めようとする。


「お前も危険だと分かっていたのだろう?何故止めなかった?」


「うっ……そう言われても仕方ないじゃない、二人ともさっさと行っちゃうんだから」


低い声で静かに怒るイサオにレガナが震えながら反論し、張り詰めた空気が場を支配する。


「おい大男、お前少しは落ち着け」


ベリエットが二人の間に割り込んでイサオを嗜める。


「お前には関係のない話だ、ドラゴンマンのコロニーガード」


「悪いな、目の前で人が殴られたのを見てしまった以上無関係とは言えない立場なんだ」


「……イサオは何も間違っていない、全部私のせいだ」


殴られた際に口の中を切ったのか、口元の血を拭いながらエンロニゼが呟く。


「私が欲に目が眩まなければこんな危険な事態にもならなかった、それにミエリも……」


そう言いながら壁に寄りかかり項垂れるミエリの方を見る、ショックで放心状態になっているのか先程からピクリとも動かない。


「ミエリ……」


いつもは煩いレガナも今のミエリを見てしょんぼりと名前を呟くだけだった。


「アイツは昨日の解明者だな、あの時はうるさいくらいだったのに何があった?」


「実はな、どうやら人を殺した事が無かったらしく地下でさっきの化け物を殺ってしまってからあの有様だ」


そんな状況を見たベリエットが別人の様になったミエリを見て疑問を呈すると、それに対してエンロニゼが静かに答えた。


「そうか……沼地であのグロブスタを討伐してもこういった区別はつけてしまう奴なんだな」


イサオの声から勢いが消えて穏やかな口調に変わる、そしてミエリの方へと歩き彼女の前で跪いて目線を合わせる。


「ミエリ、大丈夫か?」


「…………」


「大変だったな、だが人の殺生でこんな風になっていては解明者としてやっていけない、切り替えるんだ」


「…………」


「それにお前が殺した相手は既に人間では無かった、そんなに思い詰めるな」


「…………イサオさん、私は強くなれたってずっと勘違いしてたの……」


項垂れたままミエリがぽつりぽつりと語り出す。


「でもそれは完全な思い上がりだったんだ……ナイフを喉に突き刺した時の皮膚を突き破る感覚、刃越しでも分かる肉の柔らかい抵抗感……フェイクラムの時は必死で分からなかった生々しい感触にわたしはパニックになったんだよ……」


「……そうか、だがこれからはその体験を何度も味わう事になるんだ、解明者である限りな」


「うん、分かってる……」


「分かってるならいい、これからは友好的じゃない人間とも殺りあうこともある、そんな世界に入るとお前が誓った以上優しい言葉をかけるつもりは俺には無い、恐らく他の連中もな……一刻も早く慣れた方がいい、仲間の為……いや、お前自身の為にな」


「ふふ、優しくしないとか言いながら結局慰めてくれるんじゃん」


「うるさい、さぁ軽口叩けるくらいには立ち直ったならさっさと切り替えろ、今はお前に構ってる暇は無いからな」


そう言ってイサオはミエリの腕を引っ張って立ち上がらせると、スカートと足のホコリを払ってミエリを皆の前に押し出す。


「女の扱いがなってないな、そんなんじゃモテないぞ」


「お前にダメ出しされる筋合いはない、竜のコロニーガード」


「俺の名前はベリエットだ、そういえばお前たちの名をまだ聞いてなかったな、俺も名乗ったのだから言って貰おうか」


「神崎 庸だ」


「ハスハマ ミエリって言います……」


「あーしはレガナって言うの、その……あの時はありがと……」


「エンロニゼだ、救援には感謝している」


「イサオにミエリか、名付けの特徴がヤマト区域やカイコウ区域の連中に似ているな……もしかしてお前ら日本人か?」


「だったらなんだ?別に珍しくもないだろう」


「それはそうなんだが……だからこそ不思議なんだ、この間、俺は日本人の流されモノを保護したんだ、この世界は日本人を多く取り込むとはいえ、こんな区域じゃ立て続けに遭遇することは中々無いからな、元いた文明に近いコロニーにさっさと移り住むから、こんなに見たのは久しぶりだ」


「ベリエットいつまで無駄話してるんだ、突入準備が出来たからそろそろ行くぞ」


気さくに与太話をするベリエットに同僚の呼び掛けが掛かる、そんな様子を見て最初の印象とは全然違う彼の姿に人の内面は第一印象じゃ分からないとミエリは思った。


「おっそうか、よしとりあえずミエリとレガナは一応治療班の治療を受けろ、エンロニゼも本来なら治療を優先すべきだろうが内部の情報を持っている様だから突入に参加してくれ、それとイサオもエンロニゼのガードとして参加しろ、お前は同じパーティでガードナーならお前に任せた方が安心だ」


「そんなのお安い御用だが……人員を外部の人間に簡単に頼むとは、コロニーガードも思っていた様な頼もしい連中じゃないようだな」


「お前の多大な期待に添える様な俺たちじゃ無くて悪かったな、まあいい早くついて来てくれ」


そう言って突入班の中に向かうベリエットに二人もついていく、とその途中でエンロニゼが振り返った。


「ミエリ、今のお前に頼むのも申し訳ないが、保護した少女は今治療班の所にいるからついでに見てくれないか?」


「あ、うん……分かったよ」


エンロニゼ達の後ろ姿を見送ってからミエリはぽつぽつと下を向いて治療班の集まっている場所へ歩き出す、大事になっていることにコロニーの住民達も流石に気づいたのか、コロニーガードの張った境界の周囲は野次馬で溢れかえっている。


「ミエリ大丈夫?」


「大丈夫だよ、心配してくれてありがと」


「流石に今回ばかりは心配するわよ!その、なんて言えばいいのか分からないけど……仕方なかったと思うよ」


「ごめんね、レガナ」


「な、なんでミエリが謝るのよ!ああもう!さっさと行くよ!」


ミエリ言葉に調子が外れたレガナは、そのまま治療班のところまでさっさと飛んで行った。


保護した少女は手当てを受けて四肢や頭部に包帯が巻かれ、尚且つ目を覆う様に分厚く巻かれた包帯によって視界を遮られていた。


「あっいたいた、怖かったね大丈夫?」


ミエリの声にボロをまとった少女は怯えた様な仕草をする。


「あ……驚かせちゃってごめんね」


「その声はさっきの人……?」


「そ、あーしたちがあのやばい場所からあんたを助けたの、感謝しなさいよ!」


「助けた……?一体何が起こってるんですか?」


「えーと、あんたどこまで覚えてんの?」


「ご主人様に変な場所に連れてこられて、そこで待っていろって言われて待っていたら急に辺りが騒がしくなって来たんです、そこからは何も……」


「そうなんだ……でももう心配しなくていいんだよ」


「なんでですか?私は仕事のミスで目を痛めてしまってご主人様からも用済みだって言われたんです、私はこれからどうしたら……」


その言葉を聞いてミエリが何かを察して居た堪れない表情をする。


「ふん、そんな外道なら他のクズと一緒に化け物になってもなんとも思わないね!むしろ今頃下でぐちゃぐちゃにされていると思うと胸がすくわ!」


「レガナ、言葉が良くないよ」


「え?ご主人様がぐちゃぐちゃになったって……」


「すみませんお待たせしました、ん?何か会話の途中でしたか?」


ボロの少女が言葉の意味を聞こうとしたところで黒髪を少し長めのショートカットにした青年が医療品とバッグ型の機械を抱えてやって来た。


「あ、ごめんなさいなんでもないです……」


ボロの少女は青年の声に反応して名残惜しそうに引き下がる。


「そうですか、じゃあそこのお二人の治療を今からしますね」


「あーしは大丈夫、ミエリ……横のこいつが守ってくれたから怪我はないし、そもそもあーしたちフェアリーは元々傷の治りは早いし」


「フェアリー!やっぱり妖精さんなんですね!という事はそこの方もヒューマンですか!?」


「え、そうですけど……」


「……!やっぱり!男女の姓しかいない人もβ扱いされない、正真正銘二つの性しか存在しない種族!本当にヴォラルフって珍しいんですね!」


青年のテンションの上がり方にその場にいた三人は困惑する。


「あのー……わたしもここに来たばかりなんで分からないんですけどヴォラルフって?」


「そうなんですか?僕も最近ここに来たばかりなので説明できるか分かりませんがヴォラルフというのは男女とは別にα、β、Ωという三つのセカンドセクシャルがある種族なんです!その特殊な性質上ヒューマンとは別の種族として扱われているらしいですよ!」


その説明を聞いてミエリは頭の片隅にネットで見たとある共有設定を思い出していた、なんでも同性愛や性差による葛藤を描くために作られたという物がこの様な代物だったのだ。


「ふーん……そりゃいろんな世界から流れて来るんだからそういうのもあるよね……」


「それで僕はそんな中でも希少な性であるΩ男性なんです!ミエリさん?はヴォラルフは初めて見るみたいですが、僕の世界ではこれが当たり前だったんですよ!」


妙に得意げに自分の性について喋る青年にミエリは多少の違和感を覚える、彼女の聞いた話ではΩという性は扱いの良くない性だと言われていたからだ。だがそれはあくまで創作の設定であり、実際に存在する世界とは違うのは当然と思いつつも、どうしても不思議な感覚に拭えず質問をする。


「ミエリでいいよ、というかその……随分明るく話してるけど自分の性について悩んだりしないの?」


その言葉を聞いて青年が少し寂しげな表情になるが、すぐに先程の笑顔に戻る。


「確かに元の世界では悩む事や落ち込む事がありました、元の世界ではΩの扱いは良くなかったですから」


「あ、やっぱりそうなんだ……」


「でもここではそんな事を気にする人はいないから胸を張れって言ってくれた人がいるんです、ヴォラルフという種族として扱われるのもヒューマンとは別の種族的支援を行うための"区別"だとその人は教えてくれました」


そう言って青年は首に下げたチェーンに輪を通して下げている指輪を握りしめる。


「だから、今の僕はこの性であることに苦しんではいません」


「そうなんだ……余計な事聞いちゃったね」


「大丈夫です、ありがとうございますミエリさん」


「ああもう!さっきから辛気臭い話ばかりしないで!もっと明るく行こうよ!」


「そうですか!それならこの絶品スープをおすすめします!誰でも明るくなる事間違いなしですよ!」


レガナの声に連動する様に突如皿に盛られたスープを両手に持った男が乱入して来た。


「うぇ!?なにもんよあんた!?」


「申し遅れました!僕はゼノル・アーチランドと申します!イサオさんの手伝いをしようとついて来たんですが、『お前は邪魔だからここにいろ』と言われたので皆さんに振る舞う料理を作って暇を潰してたんです」


「イサオさんを知ってるってことは……あなたがイサオさんが調べていたポーター?」


「お!あの人は今のパーティに僕を入れたくないと言ってましたが話題にはしてくれてたんですね!それはそれとして先ずは腹ごしらえですよ!というわけで皆さんどうぞ!」


そう言ってゼノルは両手に持ったスープ皿を四人に差し出す。


「ミエリ受け取りなよ、あーしは少しもらえばいいから」


「僕より先にこの女の子にあげてください、何日も食べていない様なので……」


レガナとヴァラルフの青年は受け取らず、レガナはミエリの肩に座り、ヴァラルフの青年は奴隷の少女を診察しながら彼女にスープを差し出すようゼノルを促した。


「分かりました!ん?この子は目が見えないみたいですねー、僕が直接食べさせてあげますよ!」


ゼノルは片方のスープをミエリに渡してもう片方のスープをスプーンで掬って冷まし、ボロの少女の口に持っていく。


「はい、口を開けて」


少女の恐る恐る開けた口にスープが入っていく、少女はそれを少し噛みながら味わって飲み込むと自然と顔が綻んでいった。


「……美味しい」


「当たり前ですよ、僕が作ったんですから」


そんな様子を見てミエリも自分のスープを一口啜った。


「ッ!?うっ……うう……!」


一瞬、目が大きく見開かれその次に目から大粒の涙が溢れ出す、ずっと堪えていた感情が目から流れ出しスープと地面に落ちていった。


「…………ミエリさん、少し傷の様子を見ますね、気にせずスープを飲んでいて大丈夫です」


そう言って青年はカバンを開くと、中には医療器具の様な物が入っており、その中のライトの様な物をミエリに向ける。


すると緑のレーザーがミエリの全身をスキャンし、カバン内部の画面に診察結果が出てくる。


そうして、必要な道具類を準備する青年や周囲は、皿を震わせ嗚咽を出しながら泣くミエリの様子を、黙って見守っていた。


………………


一方、地下ではベリエットの部隊が残党を処理しながら内部の制圧を着々と進めており、遂に最奥と思しき倉庫部屋の前まで来ていた。


「ここが最奥のようだな」


「私の聞いた話だとこの場所にはまだ元凶の化け物がいるらしい、気をつけてくれ」


「言われるまでもない、お前らも細心の注意をしろ」


エンロニゼの言葉にベリエットが返事をしながら、部隊員に注意喚起を呼びかける。扉は半開きになっているが、暗い内部の状況は部屋の外からでは窺い知るのことができない。


「部隊のウィザードによる翼眼での確認はできなかった……が、おそらくここに大物がいるはずだ」


「そうだな、よし開けてくれたら俺が盾を構えながら突入する、だからお前達は援護してくれ」


そう言って盾を全面に備えてイサオが突入の体勢に入る。


「よし、行くぞ……3、2、1」


カウントがゼロになったと同時にイサオが突進する。


しかし倉庫の中に生物の気配はなくそこにあったのは……


「なっ……!このコロニーの地下にこんなものがあるとは……」


「はぁ……これは残業確定だな」


「そうみたいだな、頑張れよ」


そこは何も置かれておらず、唯一存在するのは巨大な穴だけだった。マンホールの様な蓋がついているようだがそれが開いている状態になっており、何かが意図的に開けたのは一目瞭然だった。


中を覗き込むと備え付けの梯子を使って降りていける様になっており、誰かがここから出入りした事は明白だった。


「どうやら相当古いものの様だな、このコロニーは想像以上に闇が深そうだ」


ベリエットと部隊員達がそんなことを溜息混じりに吐きながら帰還の準備を始める。


「全く、ミエリの世話をし始めてからとんでもないことにしか首を突っ込んでないな」


そんな中、イサオは一人誰にいうわけでもなく呟いた。

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