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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
1章 おぞましき世界
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1-2 外の世界は……

不思議な通路だけで構成された未知の場所。


どれだけ角を曲がろうとその先には同じ風景が続く、そんな中をシャラムとイサオは全く動じることなく進んでいた。深慧莉はそんなイサオにお姫様抱っこの要領で抱えられている。


「で、まだこの世界に入りたての卵な新人ちゃんは何が聞きたいのかな?」


シャラムが優しい瞳でこちらを見る。


「……何が聞きたいとかじゃなくて全部説明して欲しいです……わたしはビルから飛び降りて、死んじゃったとか思ってたらここにいたんです。それでここってどこなんです?あなたたちは誰なんですか?」


「まぁ落ち着け、そうだな……順を追って説明すると、まずこの世界の話をするか。ここはストレンジフィールド、お前みたいな流されモノが集まる世界だ」


深慧莉が首を傾げる。


「流されモノが何かって聞きたいのか?簡単に言うと何かしらのキッカケでこの世界にやってくる生き物や物体を俺たちはそう呼んでる。といっても俺たちもそうなんだがな、名前からするにお前も日本から来たんだろ?実は俺もそうなんだ」


深慧莉の目が輝く、共通点を持つ者が近くにいる幸福感が彼女の気持ちを多少和らげる。


「まあ、同じ日本から来たかは分からんけどな……」


イサオの言葉にまたもや深慧莉が首を傾げる。


「いや、気にしなくていい……それより説明の続きだったな、この世界には何かのキッカケが必要だといったが大抵のやつは死ぬ事がキッカケみたいでな、一度死んだ事ある奴ばっかりだ」


それを聞いて、深慧莉が思い返すように俯く。


「わたしも……さっき言いましたがビルから飛び降りたんです、だから多分その時に死んでしまったんだと思います……毎日無意味に生きてたから自分なんて生きてても無駄なんじゃないかと思って……それで……」


「へぇ〜……聞けば聞くほど私が見聞きした中で一番価値のない死に様だなぁ!」


深慧莉の語りに対し、ずっと黙っていたシャラムが唐突に大声で煽る、その声色には少なからず怒気が混じっていた。


「おいシャラム、余計なこと言うな」


すかさずイサオが嗜める。


「大丈夫です、それよりこの世界って他にも人がいるんですか?」


「ああ勿論いるぞ、シャラムみたいな奴以外にもいろんな奴がな」


そう言われて深慧莉がハッとなる。


「そ、そういえばその翼って……」


「ああこれ?本物だよ、私たちの世界じゃこれが普通だったから呼称なんてなかったけど他の種族の連中は男をドラゴンマン、女をドラゴンメイドって呼んでるよ」


「ちなみに俺たちはヒューマンだ、こんなの序の口だから外についたら色々見ることになるぞ」


「種族……」


シャラムとイサオの言葉で深慧莉の中で少し好奇心が生まれ始めていた、不安と恐怖に埋め尽くされていた心が少し軽くなり、表情も徐々に明るさを取り戻していた。


「それにしてもガードナー二人で調査は安全だけど効率悪いね、イサオがウィザードかスカウトにでもなってくれたら良いんだけどなー」


「無茶言うな、俺には頑丈な体以外取り柄がないんだ、お前が専門職(スペシャリティ)を変えればいいだろ」


「頭使うより体動かす方が向いてる種族性だから無理、そもそも私が座って読める本は漫画かエロ本だけだから諦めて」


二人が和気藹々と会話を始める。


「お二人は仲がいいんですね」


「え?」「ん?」


二人は同時に深慧莉の方を向いた。


「あ、すみません!あまりにも親しく会話をしていたので……」


二人が顔を見合わせ、しばしの沈黙の後笑い出した。二人の感情についていけない深慧莉がオロオロと戸惑う。


「ああ、ミエリにはそう見えたんだな」


「ごめんごめん、私たちはこのダンジョンに入る前……えーと、多分8時間くらい前に初めて会話したくらいの関係だからほぼ初対面だよ」


「ええ!?」


「ダンジョン調査は命懸けだからな、ある程度腹を割って話せる関係になる必要があるんだ」


「こ、コミュ力おばけだ……」


深慧莉が小さく呟く。


「…………ん?今ダンジョンって言いました?」


「え?そうだけど、説明してなかった?」


「えーと、わたしが聞いたのはここがストレンジフィールドって呼ばれてて、死んだ人が来る場所で、私たち以外にもいろんな種族がいるということしか……」


「あー……そうだったな、あいだで別の話をしてたから全然説明してなかったな、すまん」


「ごめんねー、私も気にしてなかったから気づかなかったよ」


(適当な人たちだな……)と深慧莉は思った。


「もうすぐ出口だから気がユルユルになってしまってたね、気をつけなきゃ」


シャラムが頬を叩く。


「でだ、ダンジョンというのはこのストレンジフィールドの各地にある洞窟や廃城、森に沼地など人の生活圏から離れた未開の場所のことだ、それの内部調査をする連中を解明者(リサーチャー)というんだ」


「で、その解明者(リサーチャー)というのが私たちってわけ、まあ殆どの解明者はダンジョン潜って金になりそうな物集めたり、ダンジョン構成物を調査してギルドで写真や調査資料を金に換えてるってだけで大層なもんじゃないよ」


「へ、へえ……私たちの世界じゃリサーチャーって商品開発の為に市場調査する人の事とかを言いますけど」


「一応、探索者って意味もあるらしい、最も世界の殆どを衛生写真で見れていた俺たちの世界じゃ探索者なんて意味合いの言葉は滅多に使わないけどな」


「にしてもミエリは運が良かったね、ここはさっき言ってたような『普通』のダンジョンじゃないから」

「え?それってどういう……」


「ここはストレンジダンジョンと言ってな、通常とは違う特殊なダンジョンなんだ、次元の穴から入る、歪な異世界」


「でもってこのストレンジフィールド自体が謎だらけの異世界だからね、つまり異世界にある異世界ってワケ」


深慧莉が困惑する、ただでさえ理解できない状況の中でさらに不可解な話をされてのだから当然だ。


「まあ少しずつ知っていけばいいよ、それにミエリは戦えなさそうだから、そうなんだ〜くらいの理解度で十分だよ」


「そうだな、そろそろ出口だ、ギラッツに気をつけろよ」


「分かってるって」


通路の先から冷たい空気が流れてくるのを感じる、そして、光に満ちたダンジョンの出口が顔を出す。


「うわぁ……」


深慧莉が思わず声を上げる。次元の裂け目のような歪んだ出口をくぐると周囲は荒れ果てており、濁った灰色の空には雨雲のように暗い雲が浮いている。周囲に転々と埋まった岩は謎の紋様が全体に刻まれており不気味さを際立たせていた。


「ようこそ、ここがストレンジフィールドだよ」


シャラムが深慧莉の方を向き、ニッコリと笑って言った。

裏話になりますが、解明者を翻訳するとエルシデーターになるみたいです。

言いにくかったのでリサーチャーを無理矢理当てました。


追加

後から知ったんですが、リサーチャーって研究者って意味だったんですね……知らなかった……。

まあリサーチャーズギルドは研究機関って設定だからいっか。

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