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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
1章 おぞましき世界
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閑話1 種族の優位性

時系列としては、1-4でシャラムとミエリがキニャル屋に向かった際の話です。

「すみませーん!キニャル二つくださーい!」


「そんなに大声で叫ばないでおくれ、二つで16SFcだよ」


屋台の前に立ち大声で注文するシャラムに対し屋台のおばちゃんが耳を抑えながら注文を受ける。


「はいはーい、先に支払いをお願いしまーす」


既に板の様な端末を取り出して準備万端のシャラムにおばちゃんが機器の様な物を差し出す、それにシャラムが端末を当てると支払いが完了した音が鳴り、それを確認するとどこか満足そうにシャラムは端末をしまった。


「やっと追いつきました〜……シャラムさん速いですよぉ……」


「あーごめんごめん、お腹空いてたからどうしてもね」


へろへろになりながら屋台まで辿り着き、膝に手を置いて肩で息をしながらミエリが文句を言う。


「はいよ、キニャル二つお待ち」


「ありがと、はいこれで許してね」


「あ、すみません……ってこの人肌の色がすごい!?それに角まで生えてる!?」


差し出されるままにキニャルを受け取ったミエリだったが、ふと露店の店主を見て驚愕する。


その店主は肌が漆黒の色をしていた、元の世界にいた黒色人種のような明るさのある肌の黒さではなくもっと炭の様な()()()()色合いだ。


おまけに同じ色をした大きな角も持ち、彼女が人間とは違う別の種族だということは一目瞭然だった。


「ああ、あんた新しく来た流されモノなんだね、あたしはディアゴニアっていう種族に分類されてるんだよ、まあそんな反応をされるのには慣れてるから気にしなさんな」


そう言ってその店主は豪快に笑った。


「へ、へぇ……それにしてもここにはいろんな人がいますね、こうして実物を見ると憧れますね」


初めて見る空想の種族のような人々に対して純粋な憧れをミエリが溢す、すると豪快に笑っていた店主が急に笑うのをやめた。


「え……ど、どうしたんですか?」


「はぁ〜……新しく来たのヒューマンは大体そんなことを言うんだよ、でもすぐに殆どのやつがヒューマンであることに感謝し始めるんだ」


「ええ……それはまたなんで……?」


「簡単な話さ、この世界はあらゆる世界から流されモノが来る、それには道具や施設なんかも含まれてるけどその殆どがヒューマンやそれに近い種族に合わせて作られているんだ」


「あっ、そういうことか……」


「察しが良くて助かるよ、他の種族じゃ使いにくかったり扱えないものもあるから結局ヒューマンが一番勝手が聞くんだよ」


「ほんとにねー、私達ドラゴンマンとドラゴンメイドも翼や尻尾を待つ人が多いから着るものとか手に入れるの結構大変なんだよ?大体は専門店か注文になっちゃうし」


「そうなんですね……ごめんなさい軽率なことを言ってしまって」


「いいんだよ、まだ新人なんだからさ、うちのキニャルを食べてこの世界で生きていく力をつけてくれよ」


そう言って店主はもう一つキニャルをミエリに渡してきた。


「え!!いいんですか!?」


「もちろん、気に入ったらまた来ておくれよ」


「分かりました!また来ます!」


そう言って両手にキニャルを持ってホクホク顔のミエリに、手を振る店主の姿が十分小さくなったところでシャラムが話しかける。


「ミエリ、あの店にはヒューマンだけでは行かないでね、一人でなんて絶対ダメだよ」


「え?なんで……?」


突然真顔のまま淡々とした口調で突飛なことを言い出すシャラムにミエリが困惑を顔に出す。


「あのディアゴニアの中でも眼が黄色のやつは悪魔の血が濃ゆいから悪いこと考えるのが多いんだよ」


「え……!?」


「だからおまけで良い人を演じてまた来た時に良くてぼったくるか、最悪あんたを捕まえて良からぬことをしようとしているよ」


「…………」


あまりの衝撃にミエリが絶句する。


「反抗しようにもディアゴニアとヒューマンじゃ戦闘力に差がある、それに魔法も器用に扱うやつもいるからそういう面でも気をつけないといけない、魔法はギルドの許可がないと使えないけどそんなの犯罪者ならお構いなしだし」


そこまで言ってシャラムがミエリの方を見る、その目はずっとふざけていた人物とは思えないほど真面目だった。


「ヒューマンだけの世界やヒューマン主体の世界じゃ『人間は怖い』、『人間は愚か』なんて言うみたいだけど、そう言ってた人達もここを知るとだんだんと言わなくなる、あんな悪事考える種族なんてこの世界じゃまだかわいいもんだよ……このストレンジフィールドには善悪も、形すら無い真の恐怖が山ほどある」


ミエリの顔から滝のような汗が出る。


「ヒューマンの種族の優位性なんて数の多さと文化的な面だけ、だから個になった時は気をつけなよ?」


「うっ!うぅ……分かった……」


「さっ!というわけでキニャル食べよ?さっさとしないと冷めちゃう」


そこまで言い終わると、シャラムはいつもの調子に戻ってキニャルを頬張り始めた。


それに続いて渋々キニャルを齧るが、ミエリにとって初めてのキニャルは砂を噛んでいるような気分だった。


結局、おまけしてもらったキニャルはシャラムが食べることになってしまい、彼女のお腹を満たしてイサオに怒られる原因となってしまったのだった。

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