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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
1章 おぞましき世界
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1-10 フェアリーと新たな仲間

「なになに!?何が起こったんだよ!?」


ルナルドネスの女は自分が囲まれていることに気づき動揺を隠せない様子だった。


「あんたは蘇生されたんだ、ここは蘇生院だよ」


「本能の洞窟から私たちが回収したんだよ、最期の瞬間くらい覚えてないのー?」


金髪の男が適当に説明する。そのあと後ろから帽子の女が補足を入れた。


「ああ、そうだった。アタシ、リビドースライムと夢魔どもに襲われて……気持ちよかったなぁ〜……終盤はそういうのも分からなかったけど」


ルナルドネスの女は満足そうな笑みを浮かべた。


「やっぱり下等生物だね、下半身に付いてる脳みそを私が頭に付け直してあげようか?」


シャラムが喧嘩腰にまたもや悪態をつく。


「お、不器用な尻尾を持つ同士じゃないか、ごちゃごちゃ言いながらアタシの蘇生を見守ってくれてたのか?」


いがみ合っているというのは本当のようで、すぐにルナルドネスの女も皮肉を返す。


「私はこれを蘇生しに来ただけよ、お前のせいで待たされてるだけ」


そういうと彼女は薬箱を取り出す。


「……なにそれ?」


目の前に出された箱を見て、女が素っ頓狂な声を出す。


「これは私が愛用してる薬箱、これに回収したフェアリーを入れてるの」


深慧莉の言葉に周囲がどよめきだす。


「お前……どんな神経してんだ?」


「死体入れた箱の薬飲めるとか、ある意味尊敬するよ」


「うえ……」


「…………何も言うまいと思っていたが、流石にこれはどうかと思うぞ」


金髪の男と帽子の女が真っ当にツッコミを入れ、ずっと後ろで黙っていた二人、目元を前髪で隠し、全身を白いローブで隠している少女と、胴着に鉢巻をしたいかにも格闘家といった風体の男もそれぞれ感情を表した。


「流石、飛べることしか自慢できない竜どもだ、下等生物らしさが出ているな」


「お前ら、あんまり言ってやるな」


「でも、お前も引いただろ?」


「余計なこと言うなジェインズ、まあ確かに引きはしたが」


(あ、やっぱり普通じゃないんだ……)


周りの反応でやっぱりシャラムがおかしいことを深慧莉が理解する。


「いいえ!彼女の行いは必ず死者にもう一度生を与えようと考え、行動した覚悟のあらわれです!素晴らしい奉仕精神ではありませんか!」


トユナエィンが一人涙を流し、手を叩いて称賛している。


「もー!なんでも良いからさっさと蘇生してよ!」


そういうとシャラムが台座の上に薬箱の中身を、まるでオートミールを皿に流し込むかのような乱雑さでぶち撒ける。


箱の中身は話の通り手足の肉片だけの小人の遺体だった、その中にカゲロウのような薄く、なおかつ輝く羽が数枚混じっている。


「ひっ……!」


ある程度覚悟が出来ていたはずの深慧莉が小さい悲鳴を上げる。やはり実際の死体が出す不気味さにはまだ慣れていない。


「随分ボロボロだけど、成功すんのか?」


台座から降りようと腰掛けていた女が、そばに撒き散らされた肉片を指差しながら言う。


「そういえばさっきから成功って言ってますが、どういうことですか?」


深慧莉がふと素朴な疑問を口にする。


「蘇生とは選ばれて初めて行われるもの、失敗すれば塵となって消えてしまうのです……」


深慧莉の質問にユーエインが答える、その顔は先程より暗い。


「ええ!そ、そんな……」


「ミエリ静かにしろ、これは仕方ない事なんだ」


イサオの言葉にユーエインが人知れず唇を噛む。


「ご安心を、回収者の覚悟を汲み、必ずや成功させましょう」


そう言うとトユナエィンが先程と同じように蘇生を行う。


青く輝くなかで深慧莉は台座に散らばった遺体が、少しずつ集まりもう一度一つになろうとしている様子が微かに見えた。


光が収まり、もう一度台座の上を見るとそこには可愛らしい妖精の姿が人の形で横たわっていた。


「成功したんだ……」


深慧莉が小さく呟く。


「ん……?はっ!ヒ、ヒィ!?こ、来ないで!」


蘇生したフェアリーは酷く錯乱しており、自分が囲まれている状況だと理解すると激しく動揺し、高く飛び上がると逃げ回るようにぐるぐると旋回した。


「落ち着いて!私たちは何も危害を加えないからさ!」


「嫌ぁ!!来ないでぇー!」


シャラムの言葉も聞かず妖精はそのまま出口から外に飛び出してしまった。


「一体どうしちゃったんだろうねー、ジェインズはどう思う?」


帽子の女がジェインズと呼ぶ金髪の男に問いかけた。


「多分、ここに来たばっかなのにグロブスタにでも襲われて喰われたんだろ、よくある話だ」


ジェインズは適当に答える。


「たしかにそんな奴は珍しくないけど、フェアリーとなると捕まえるのが面倒だなぁ、どうするよドラゴンちゃん?」


「私の名前はシャラム・ドヌガ・ヴィーダよ、トカゲ女」


「アタシもトカゲ女じゃなくてアフタレア・ケビレンスって名前があるんだ、覚えときなよ?」


「皆さんお静かに、コロニー内の捜索は解明者の仕事ではありません、私がコロニーガード達に連絡しておきましょう」


トユナエィンがそう言いながら姿勢を正す。


「それでは皆さん、己の生に感謝の念を忘れず健やかにお過ごしください、では失礼します」


そう言葉を残して、厳粛な姿勢を乱すことなく彼は去っていった。

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